第十六話 王と姫


朝、目が覚めて
真っ先に思い浮かぶ

『ふふふ…。大丈夫だ。いずれ苦しいのも気持ちよくなるらしいぞ?』

あの悪魔の顔…

「あうぅ…腹筋が……」

私はお腹からくるチクチクとした痛みに耐えかね、ゴロンとうつ伏せになり起き上がった

「シェルクめぇ〜〜〜!」

湧き上がる怒り

『ふふ。また悪いことしたら、いつでもやってあげるからね♪おねぇちゃん♪』

と恐怖

――ガクガクブルブル

「ま、まぁ、今回はこれぐらいで許してあげるわ」

誰にともなく言う

「何をじゃ?」

と、隣でバフォメットがむくりと起き上がった       …ブッ!

「ぎゃぁははははははは〜〜〜いててあ〜〜〜はは痛い痛いあははあぁぁぁ!!」
「……なんじゃ?笑うのか痛がるのかどちらかにするのじゃ」
「だ、だってぶふっ!痛〜い!うぅ…」

私は笑いながら腹筋の痛みに苦しみ、それでも笑った
だって、だってこんなの…ブフッ!

「なんなのじゃ!?いったいどうしたというのじゃ!?」
「ぎゃはははは!あっぁぁぁ!いたたたっ!ひ、ひぃ〜〜〜。わ、笑いながら怒るバフォメット。ひ、ひぃぃ〜〜」
「ん?」
「か、鏡。鏡を見てきて。ブフッ!だめぇ〜。こっち向かないでぇ〜〜。あはははは〜」
「ん〜?いったい何がどうしたと……なんじゃこりゃぁぁぁぁああ!?」

鏡の前で叫ぶバフォメット
叫びながらもバフォメットの顔は満面の笑みを浮かべていた



「まったくもう。まったくもう。まったくもうだよまったくもう!なのじゃ!シェルクのせいなのじゃ!」
「ギャハハハ!だから笑いながら怒らないでよ!ひ、ひぃぃ〜〜」
「お主も笑いながら苦しむでないのじゃ」

私の腹筋、そして、バフォメットの顔に起きた異変の原因は昨夜の「お仕置き」だった
世にも恐ろしいそのお仕置き…
その名も

“くすぐり地獄”

あの恐ろしい行為はバフォメットが過呼吸で倒れるまでの間続いた…
笑顔のまま気絶したバフォメット
腹筋が崩壊した私
2人の犠牲者を残し、シェルクは満足そうに去って行った
人間って、なんて恐ろしい生き物なの!?
ガクガクブルブル

「あやつのせいなのじゃ!顔の筋肉が笑ったまま固まっておるのじゃ!」
「ブハハハハ!だから笑いながらおこ…いたたたた!!」
「儂は怒っておるのじゃ!」
「笑ってるじゃん!あはははは!いたたたた!!」
「むきぃぃぃぃぃぃ!!!絶対に許さんのじゃ!!!」
「ぎゃはははは!あ゛ぁ〜〜〜っ!」








「はぁ〜。いたたた〜。朝からえらい目にあったわ…」

私はぐったりと項垂れ、おなかを摩りながら歩いていた
朝からとんだ不意打ちだわ
まさか笑いながら怒るバf…

「ぶふっ!あぎゃあ!いたたたたっ!」

私は思い出し笑いで悶える

「あれ?どうされました!?お加減がよろしくないのですか?」

と、駆け寄ってきたのは一人の魔女だった
ニーソ、ミニスカ、大きなとんがり帽子
その下から覗くプラチナブロンドの髪とマリンブルーの瞳

「か、かわいぃ…」
「え?」
「はぁはぁ…」

私の息が荒くなる
発作だ
そう。あの日、シェルクを魔物へと生まれ変わらせたあの日
あの日以来芽生えてしまった感情
それがまるで発作のように私の身に襲いかかる
ろり〜んろり〜ん はぁはぁ
なに?このかわいい生き物!?
なに!?この全ての人から愛されるために生まれてきましたみたいな小さくてかわいい身体?
なに!?この可愛がってもらうことが当たり前みたいなかわいい顔?

「もう辛抱たまらぁ〜ん!」
「え?わぎゃぁぁっ!?」

私は身体の命じるまま、幼女を押し倒していた

「はぁはぁ…。お、お嬢ちゃん…お、おパンツ…じゃなかった。お名前、なんていうの?ハァハァ」
「あ、ちょ!やめてください!クリステア様!?」
「ハァハァ…」
「ぎゃぁぁぁ!目、目が怖い!!なんか肉食獣の目になってますよ!?ハンターの目になってる!!」
「そうよ。私は恋のハンター。貴女という幼女を狩りとって食い尽くす愛の肉食獣…」
「なんか言ってることおかしい、この人!!!?」

私の身体の下で暴れる幼女
ふふふふふふふ

「かわいいわ〜。食べちゃいたい……。そうだ、ロリ犯そう」
「そんな『そうだ、京都行こう』みたいな感じで言わないでぇぇ!!?」
「ふふふ。無駄よ。貴女はもはや、まな板な上にロリ!」
「あ、ちょ、だめぇぇ!スカートめくらないでぇぇぇ!!!」

あぁ
恥じらいに涙を浮かべる幼女
ハァハァ

あれ?
私っていつからこんな変態に…?
で、でも……

「あぅぅ…。や、やめてください…」

羞恥で顔を真っ赤にして涙を浮かべる幼女
うん
そうだよね
可愛いって正義よね
つまり私の行動に何の矛盾もないわ
そうときまれば…

「いっただっきま〜す♪」

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