#1 特A級

−−−−−−夏。
まぶしい太陽、白い雲、快晴の空。灼熱の空気の中、俺は魔界国家「レスカティエ」の近郊、の離れの森に来ていた。国家直属の騎士団に下された任務でここに来ていた。内容はこうだ。

『現在の魔界国家レスカティエの近郊の地形を把握せよ。なお、この依頼は機密とする。』

だそうだ。今になってなぜ魔界国家の周辺を散策せねばならなくなったのか、謎過ぎる。おまけに森の中でもうだるほどの暑さ。着ている鎧が灼熱のバーン○トライク。くっそ・・・下に鎖帷子じゃなくてもう少し涼しい格好をして来ればよかったな・・・。

「おいモブ。本当にこっちであってるのか?」

俺−−−【モーゼス・ブライアン】に話しかけてきたのが親友の【カーネル・スタイナー】だ。俺たちは互いに【モブ】【カス】と呼び合うくらいの仲だ。え?いいように聞こえない?ほっとけ。師団学校時代からの周りからのあだ名なんだよ。

「あ〜・・・なんだよカス。多分こっちであってるっての・・・山小屋ならぬ森小屋でもあるだろ・・・。」
「本当にお前はいい加減だな・・・。こっちはもう歩きつかれてるんだ。さっさと魔物避けになりそうな小屋を探して休憩しようぜ・・・。鎧が暑くてかなわん。」
「あぁ、同感だ。兜の中に氷でも直接ぶち込みたい気分だぜ。」
「・・・それには賛同しかねる。」

そんなくだらない雑談をしていると、開けた場所に出た。そこには結構立派なログハウスがあるじゃないか。ヒャッホイ!これで休めるぜ!
だが忘れないで欲しい。ここはあのレスカティエ近郊の外れの森だ。いくらレスカティエから遠いとは言ってもどんな魔物が潜んでいるかわかったもんじゃない。俺たちは逸る気持ちを抑えて家に近づく。・・・どうやら人間が一人で住んでいるだけのようだ。事情を話せばすこし休ませてもらえるかもしれない。

−−−この時は暑さに頭がやられて冷静な判断が出来なかったのかもしれない。敵は確かに魔物だが、人間の形をしていても人間ではないかもしれないというのに・・・。

「すみませーん。」

ドアをすると中の人が気が付いたのかドアを開けてくれる。
少しくすんだ蒼色の髪にエメラルドの瞳。細身の身体に白いコートを前を開けて着ている。暑くないのか?この人は・・・。歳は大体20代前半だろうか?とりあえず若い。

「んん?王国の騎士団様かい?こんな辺鄙なところに何か用かな?」
「えぇ、ここら一帯の調査を任されましてね。休憩を挟みたかったのですが、野ざらしで休んでいると魔物と出くわす可能性があったのでこちらで休ませてもらえないでしょうか?」

王国の騎士だとわかってもらえたのならば話は早い。人間ならばほぼ必ずといっていいほど主神信仰の人間だからだ。王国はその総本山といったところか。なので王国の騎士はある意味憧れの的なのだ。こらソコ、どうせ下っ端だろwwwとか笑うな。下っ端だよちくしょぉぉぉぉぉぉ!

「ははぁ。こんな暑い日にご苦労様ですな。ま、こんな掘っ立て小屋でよければ休んでいってくださいな。」
「ありがとうございます。」

俺たちは中に入る。この人は何かを研究しているのだろうか?本やら何やらがそこかしこに散らばっている。
あたりを見渡しているとカスが眉間にしわを寄せて先ほどの男性をじっと見ている。

「カス、どうしたんだ?」
「ん・・・いや・・・。あいつ、どっかで見たような気がするんだよなぁ・・・。」
「なんだ、知り合いなのか?」
「いや・・・知り合いとかじゃなくて・・・でもなんか大事な事だったような気がするんだよな・・・。たしかこの任務にも関係あったような・・・無かったような・・・。」
「ハァ?現地案内人とかか?でもそんなこと一言もかかれてなかったぞ。」
「んん〜・・・。なんだったかなぁ・・・。」

俺たちが小さな声でそんな話をしていると奥からその男性が出てきた。

「ま、こんくらいしか出せないけど、ゆっくりしていくといいさ。」

氷が入った冷水を用意してくれたようだ。この人気が効くな。カスとは大違いだ。

「ありがたく頂戴します。」

兜を脱いでその水を一口飲む。う・・・ウマイっ・・・!キンキンに冷えてやがるっ・・・・・・・!

「うまいだろ?ここら一帯でしか取れない蒸留水だからな。」

なるほど。それならこのうまさにもうなずける。ここで俺の天才的な知恵が発動。もしかして、この人ここら辺の地域に詳しい?地図とか持ってたら貸してもらって、王国で写して後で返せば完璧じゃね?うはwwwww俺天才杉wwwww

「すみませんが、この地域一帯の現在の地図とかありますか?出来れば魔界国家レスカティエが出来た後の地図が欲しいのですが、もしよろしければ貸していただけないでしょうか?」
「ん?あぁ、そういえばあんたらここら一帯の調査って言ってたな。
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