四つん這いダークマターちゃんっ!

夜の闇の中、街道を進む一つの影
音もなく走るその様は、間違いなく訓練された者の動きだった

影は教団工作員の男だった

男は明確な意思を正義をもって 一歩一歩 足を進める

悪魔に乗っ取られた街

“四つん這いの街”へと






俺の名前はジェイス 教団の工作員だ

俺は教団のある重大任務を遂行中だ
その任務と言うのは 城塞都市ドーマの奪還

ドーマは大地から大量の魔力が湧く 聖なる土地 その魔力によって結界を張り 旧時代から何百年と魔物の侵攻を食い止めてきた街
しかし、魔族達の卑劣な罠によって一晩で陥落してしまった

司祭様は行方不明、街の者達は全員 奴隷として扱われ 人間としての尊重を奪われ まるで畜生の様に 四つん這いにさせられていると聞く…

おのれ…魔物共めっ!なんたる非道なっ…!

そして俺の任務は土地の浄化だ
ドーマの魔力の溜まり場(ジパングなどでは龍脈と呼ぶらしい) そこにこの聖石を放り込む そうすれば聖なる魔力が何十倍となって溢れ出し 不浄なる者どもを消し去り街に平和が取り戻される と言う寸法だ

待っていてくれ街の人々!必ずみんなを助けてみせる!


そうこうしているうちに ドーマに到着した

だが…

「………?」

ようやく着いた ドーマだったが、城門が開いている その上見張りの兵の姿も見当たらない…
ただただ篝火の炎が揺らめいているだけであった

なんだ?どういう事だ?


この地は魔王軍側にとっても重要な拠点であるはず だから何百年と争い続けてきた なのにまるで攻めこんで下さいと言ってる様な この無防備さは一体…?

罠か…?それとも人間を舐めきっているのか…?

いや、考えている時間はない こうしてる間にも街の人々は苦しんでいるんだ!

俺は疑問を振り払い行動に移す 防御はガラガラだが 罠かもしれない 門は避け
当初の計画の通り秘密の抜け穴へ向かった

ドーマ南西に少し離れた場所にある岩の祠 ここは秘密の抜け穴 万が一の時の脱出経路として用意されていて 外側からは開かない
この聖印をはめ込まない限りは

俺は、じめついた祠の祭壇の裏にある窪みに聖印をはめ込んだ

ゴゴゴゴゴゴ

十字架が回転し巨大な岩が開き 抜け道が現れた

暗い闇へと通じる道 その先にあるのは…

俺は小さな火魔法を灯し闇を進む

この先にあるのは人間達が蹂躙された世界 どんな非道が行いが どんな外道な輩がいるかわからない
だけど俺は正義の工作員!どんな事があっても心が動かされぬ様 何を見ても何を聞いても目的の為ならば情も捨てよう!
覚悟は決めた!

いざっ!

ガパッ

俺は抜け道の出口を開いた









ピシッ ピシッ
「あっ
#9829; あぁうん
#9829; 」

ギリギリ ギリギリ
「あっくぅ
#9829; ひぃん
#9829;」

ブィーーーーーン
「ああぁーーーーーっ
#9829;」


街で俺が見たものは非情にも人間達に いい様に嬲られている魔物達…
ある者は鞭で叩かれ ある者は縄で縛られ ある者は得体のしれない道具を当てられ悶えている…なんて残酷な…
くそっ人間共め


「…」

「……」

「………」




「逆っ!!!」

「いやっ逆だからっ! いや何これ 聞いてた話と違うんだけど! 四つん這いって えっ?えっ? しかも魔物側も何? なんなのその表情? めっちゃ気持ち良さそうな顔っ! どういうこと? そういう趣味なの? 」

あまりにも予想外の出来事に眩暈が起こり フラつきながら後ずさりをする

「あっ フリーのご主人様にゃ! ねぇご主人様 私のご主人様になってニャン♪にゃんこにゃん♪」

足元に一匹の猫の魔物がすり寄って来た
しまった! 見つかった!

「うっ うわぁぁあぁああっ!」

「待ってニャーん
#9829;ご主人様にゃーん
#9829;」


……
………






「はぁはぁはぁ」
よっ ようやく巻けたか…
裏路地の隅でへたり込み 息を整え 落ち着かせた
一体どういう事なんだ? この街は?
逃げ回っている最中にも色々みたが 教団の言っていた事とまるで違うじゃないか
カニの化け物と往来で交わっていた若い男
黒い馬の魔物をはじめ多数の魔物を引き連れていた子供
凄まじい魔力を持った魔物を首輪をつけて散歩していた男
ただどいつも みんな 虐待されている方も満ち足りた様な 幸せそうな顔をしている

なんなんだよこの街は…

「そうだ任務…」
パニックになって忘れていた任務を思い出す

一息つき冷静になって地図を取り出し辺りを見回す

「そういえばこの場所は…」

めちゃくちゃに走りまくって気づかなかったが 偶然にもこの場所は 目的の龍脈のある教会の近くだった

だけど…
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