「はぁっ、はぁっ……!」
剣を握る手が重い。全身から冷や汗が出て止まらない。そんな私を嘲笑うかの様に、敵の剣閃が煌めき斬撃が私に迫る……!
「……っ!」
かろうじてその斬撃を手にした剣で捌く。
が、完全に受け流す事は出来ず、頬や腿を剣先が掠める……!
「あっ、ううっ……!」
「あら……まだ頑張るのね? 頑張り屋な子、好きよ
#10084;
#65039; うふふっ……」
「戯言を……! 貴様の様な悪魔に好かれても、嬉しくも何ともない!」
悪態を吐きながら、私は目前の相手を睨みつける。
青い肌に尖った角、腰から生えた翼と尻尾、そして黒い眼に赤い瞳……
デーモン
#8212;
#8212;そう呼ばれる上級悪魔。
ソレが私の、敵だ。
彼女は妖艶な笑みを浮かべ、私にサーベルの切っ先を向けている。
(落ち着け……冷静に戦況を見極めろ……!
私はこんな所で負ける訳にはいかない……!
帰らなければならない理由があるのだ!)
自分にそう言い聞かせて、状況の把握に努める。
盾は初撃で失った。
敵のサーベルの横薙ぎの一撃をスウェーで躱し、その隙を突こうとした際に尻尾で盾を跳ね飛ばされたのだ。
今考えれば見え見えのフェイントだった。
大振りで、雑な攻撃……まるで躱してくださいと言わんばかりの初撃だった。
真の狙いはその勢いで身体を回転させての尻尾による一撃だったのだ……!
咄嗟に盾で止めようとしたが……柔軟な尻尾は腕に巻きつき、そのまま盾を外し森の奥に弾き飛ばしたのだ。
防御の要を失った私は、そのまま劣勢に追いやられ今に至る……
敵の技量は凄まじいの一言だ。
速く、正確で、重い。
そんな突きや払いを間断なく放って来る。
更に、翼による飛行や尻尾による打撃、それに加えて魔法まで使いこなす……
力量差は圧倒的だった。
事実、私の刃は一度も敵に届いていない。
対して、私は満身創痍だ。
甲冑をサーベルや尻尾で弾き飛ばされ、身体の各所に切り傷をつけられている。
切られた部分が熱く疼く……!
血こそ出ないが、何かおぞましいモノに侵食されている様で、全身から冷や汗が吹き出る……!
急がなきゃ……! こんな所で私は、終われないのだ!
この敵を打ち倒して、「彼」の所に戻らなければならないのだ!
私は今一度剣を強く握りしめて、敵を見据える……!
「へぇ……まだそんな風に抗えるんだ……
ホント、可愛いわ貴女
#10084;
#65039;
『先』が楽しみになって来ちゃう♪」
闘志をあらわにする私に向かって、自らの身体を抱きしめる様な仕草と共に舌舐めずりする悪魔。
その所作はあまりにも淫らで、官能的で、そして
#8212;
#8212;美しかった。
整った目鼻立ちに豊満な身体、人外の証である翼や尻尾、そして青い肌……それら全てが奇跡的なバランスで調和したその姿は「女」としてあまりにも洗練されていた。
羨ましい
#8212;
#8212;1人の女性としてそんな感情を抱いてしまう程に。
ああ、もしも私がこれほどに美しければ。
「彼」を虜にして、その全てを独り占めできたかもしれないと言うのに……
(……っ! 何だ
#8265;
#65038; この思考は!
相手は悪魔……我々『勇者』にとって宿敵だぞ!
どうして戦いの最中にこんな考えを……
#8265;
#65038;)
私は頭を振り、先程の思考を遮断して戦いに集中する。
そんな私に向かって、悪魔は挑発的な言葉を投げかけて来る。
「あら、どうしたの? ひょっとして羨ましかった?
このカラダが……
#10084;
#65039;
愛しの『彼』を夢中にして、独占出来ちゃう魔性のカラダ……
#10084;
#65039;
興味津々なんでしょう? 欲しくて堪らないんでしょう?
優しくて、カッコ良くて、ムッツリさんな『彼』との愛欲に満ちた蜜月の日々が……
そして、それを可能にするえっちなカラダが……
#10084;
#65039;
お堅く見えて案外スケベなのね
#10084;
#65039; 勇者サマ♪」
「黙れぇぇぇぇっ!
この……悪魔め! 貴様に、貴様に何が分かる!」
#8212;
#8212;許せなかった。
目の前の悪魔の口から『彼』の存在が語られる事が。
コイツに『彼』の何が分かると言うのか?
軽々しく『彼』を語るな……!
#8212;
#8212;逆上した。
図星を突かれて。
神に全てを捧げた勇者でありながら、例え一瞬とはいえその様な欲望を抱いてしまった自分。
それら全てを認めたくなくて。
私は突進する。腰だめに剣を構えて。
防御も何もかなぐり捨てて……!
そんな私に対して悪魔はサーベルを振りかぶり
#8212;
#8212;躊躇なく投擲した!
「なっ
#8265;
#65038; くうっ
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