私の名は、ウェルリィベル=V=クランベリエットと生前はそう名乗っていたが、今はウェリィという名で落ち着いている。
と言うのも、一度は自害し、落ちぶれた貴族なのだ。
もう昔の事で詳しくは覚えていない。
だが、何者かに何かしらの不祥事の濡れ衣を着せられ、それらの罪から逃れようと亡命したもの、生きる希望を失い、自決を計ったのは覚えている。
そう、その朧気な中でも、特にはっきり覚えている記憶とは―――道ばたに生えていた、ハイイロアンデットナゲキダケを食べ―――人としての人生を終え、ヴァンパイアと言う魔生が始まったことだ。
それから半人前のヴァンパイアとなって我が身を整える当初までは苦労していた記憶は少しだけあるはずだった。
だが、何とかして、館を持ち、数人の使用人をもつ主になれた時には忘れてしまった。
まぁ、今の私にはそんな記憶など必要はない。
日々幸せであれば、そんなつらい記憶をわざわざ覚えておく必要など存在しないからだ。
さて、先ほど紹介したように今の私には数十人の使用人を持っている。
その中で私の一番のお気に入りの使用人は・・・この館の中で唯一の男であり、最古参のクライブだ。
ヴァインパイアになったばかりの私をずっと支えてくれた古参であり、私のよき理解者であり・・・こ、恋人のような存在である///
ただ、どういうきっかけで彼と出会ったのかは・・・恥ずかしながら覚えていない。
だが、彼は私と同じぐらい長生きしていながらも、まだ人である。
彼が寿命で死なないように、魔力を吸血を通し流し込んでいるため、数百年たった今でも彼は昔の彼のままだ。
そんな中で彼と身体を交えたのは・・・数度しかない。
いや、これは思い出せる限りのことであり、彼が言うのはそれまでに何度も・・・抱いていると言うのだが、記憶にない。
おおよそ私が酒か何かで酔って襲ったからであろう。
それでも、一番最近ので数年前という回数の少なさだ。
確かに身体を交わったときは至福の一時を得た気分になれた。
しかし、ヴァンパイアになった頃から妙に意地を張ってしまって、良くて抱きつく位にしか彼とのスキンシップがとれない。
それでも、いずれ欲求不満は訪れる。意地っ張りで恥ずかしがり屋な私は吸血という行為で何とか凌いでいた。
しかし、その夜の私は明らかに変だった。
夜起きの朝食ならぬ、夜食で別の使用人によって作られた食事を食べ終え、部屋に戻って散歩にでも出かけようとしていたときだった。
身体が熱い。
欲求不満が溜まっているのだろうか?
いや、それなら、発情したときの急激な疼きがなく、ただただ意識がぼんやりするのはどうしてだ?
この私が熱でもなったのだろうか、いや、あり得ない。
仮に熱だとしても、全くしんどくない。
しかし、ぼんやりと・・・。
「・・・ク、クライブ…早く、来なさい…あふぅ
#10084;」
・・・あれ?いつから私はこんな甘える声を出すようになったのだろう?
その声にいつもの威厳のある私の声では無く、夢見る乙女の様な、甘い声で彼を呼んでいた。
「お、御嬢様……一体何をお食べになったのですか……? 主ともあろうお方がそんな情けない声を出して……」
そんなみっともない私の声に応じたのか、彼がすぐに私の部屋に現れた。
・・・あっ、いつもの凛々しい顔立ちだけど、珍しく困り顔になってる・・・♪
けど、すぐに対応できたのか、胸ポケットにあった手拭きで私の体の汗を拭いてくれた。
ちなみに、今の私の格好は・・・アラクネの糸で作られた特注の・・・桃色の、身体が透けて隠そうともしないネグリジェと、レースをふんだんに用いられている、面積の少ないTバックの下着姿である。
これからお出かけ用の闇色のドレスを着る予定だったのだ。
・・・恥ずかしい///
普段の私なら容赦なく殴りつけ、お仕置きの吸血で吸いつくしているはずだ。
しかし、不思議と怒って殴る気がしない。
恐らく身体を拭く彼の手が心地いいからだろう・・・。
「ひぅ…わ、わからないわよぉ・・・何でクライブはそんなにしっかりしてるのぉ…?///」
けれども、妙にこそばゆく、思わず小さく声を上げ、戸惑った。
あぁ、私はこんなにもほわほわしているのに、どうしてクライブは顔を赤らめながらも、こんなに凛々しいままなの?
「しっかりしている……私がですか……? そういえば知らない食材が入っていたような……まさかそれが原因……」
彼が何かしら考えているところ、私の鼻に、ふわりとあの甘い匂いが漂った。
「・・・すんすん・・・ふぁ…何か・・・いい匂い…
#10084;」
その匂いにつられて、私はは彼の下腹部に鼻を当てにおいを嗅ぎ始めた。
・・・あぁ、いい匂い・・・っ
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