※朝廷がジパングとは思えない行動をとります。
※ジパングの魔物が数種類登場します。
※筆者は京都周辺の地理に疎いです。明らかな誤りがあったらツッコミお願いします。
※テンタクルちゃんの過去がいろいろひどい。
「織子様を乗せた牛車が、小倉山中で妖怪に襲われた!?」
「ええ、この国では記録の無い、蔦葛の姿をした女がいきなり…」
「置いて逃げたのか!!」
「申し訳御座いまsごふっ!!」
無意識のうちに、その牛車を置いて逃げてきた腰抜け下男の頬を殴り飛ばしていた。
織子様が都からいなくなって初めての参内で、
こんな最悪な報せを聞く羽目になるなんて。
歯が飛び散り、げほげほと血混じりの咳をしながら彼は自己弁護を始めた。
「とにかく、この国の定義にはない妖怪だったんです。
牛鬼や大百足ならまだ何者かわかるから反撃も出来たでしょう。
しかし、何物かすらわからない、とにかく、うねうねしたものが…」
「蛇の群れでも出たというのか?」
「い、いいや、女の顔が見えたのは確かなんです。
しかし、蔦葛の妖怪など聞いた事も無い…」
「『わからぬもの』か。まだそう遠くに言っていないだろう。
そして、女を襲う妖怪に襲われたということは
―――是非もない、順基殿に援軍を頼もう」
僕は、それがどういう決断かは、直ぐに想像ついた。
妖怪が女を襲う時、それは、女が人で無くなるとき。
順基殿は、最近力を付けてきた武門の頭領だ。
この国は、妖怪とはそれ程悪い関係を築いてきたわけでもないが。
下々の女一人が妖怪に変わろうがどうって事ないが、
高貴な血筋の女性が妖怪に変えられてしまったとあれば話は別であって―――
「宮様に刃を向けるのは本意ではないが、魔道に堕とすよりはましだ。
皆、馬の準備を―――貞嘉??」
***
織子様は絶対に殺させなどしない。
都を追った上に、この世からも放逐しようとでもいうのか。
僕は織子様がどんな姿に変わろうと、共に生きる事を望む。
もう、迷わない―――筈だったのだが。
「まずい…日も暮れてきたというのに…人家が見つからない…」
既に僕は洛外に身を置き、
馬に乗って弓矢を携えているという以外は全くの無防備な状態である。
若しこれで織子様の元にたどり着く前に妖怪に見初められでもしたら。
「おっ落ち武者か?何処のモンだ」
声の方に顔を上げれば。
赤ら顔に、角。
「―――悪いが、僕は貴女と酒を飲んでいる時間はない」
「想い人がいるのか?」
「ああ。誰よりも貴い女性だ」
「そんな女より、俺らと酒飲んでいる方がお似合いだと思うがな」
襟首を掴まれそうになった刹那、赤鬼の背後から更に声。
「やめとけ、曼珠。そいつはどう見ても落ち武者じゃなくて貴族様だろ?
まだ侍どもの方が酒強そうだ」
「とかいって歌問に応えられなかったらお前がこいつを手籠めにする気だろ、藍!!」
その名の通り藍色の肌を持つ、角の女。
「どうだ、旅の男。貴族様だったら歌の一つぐらい詠めるだろ?」
***
「…見事、見事。参った!」
僕だって、歌人の家に生まれて英才教育を受けてきた男だ。
鬼の恋歌など簡単にあしらえる。
「ホントーにこんな事をしている暇はないんだけどなー、僕」
「どうか、私の恋歌の師にはなって頂けぬか!」
「その話だけどね、僕の質問に答えてくれたら考えてあげるよ」
僕は歌の素養がある鬼に、織子様を襲った蔦葛の妖怪に関する質問をした。
「そう言えば…最近妙な名前の妙な蔦のような女がこの辺りを彷徨っていたなあ…」
「その名は?」
「確か…『てんたくる』とか名乗っていた気がするが…
この国の妖怪ではないとも言っていた…」
「どこから来たと?」
「さあ…海の向こうから船で運ばれて来たが、水夫に棄てられてしまったと…」
「海の向こうというと、宋か、元か、もしくは高麗か」
「その船は宋からのようだが、そいつの故郷はもっと遠い国だそうだ」
―――貿易船か。
ついこの間までこの国を牛耳っていたある武家一族の頭領は、
宋との貿易に力を入れ、幾つかの港を整備した。
宋からの主な輸入品は、陶磁器、絹織物、巻物、文具、香、薬、絵といったところ。
怪しいのは、香か薬だろう。
『そう』偽って、そいつを船に乗せて求めた好き者がいるのか。
全く、とんでもないものをこの国に持ち込んでくれたものだ。
「私が知っているのはこれだけだ。さあ、恋の歌を私に教えてはくれぬか―――」
「僕はそいつを追わなくてはならぬのだっ!さらば!!」
これ以上留まれば、僕はきっと鬼の窟から一生出られなくなるだろう。
再び馬を飛ばし、山の方へ向かうことにした。
***
「…貴女は、何という妖怪ですか?」
私は、蔦葛の少女の名を問うた。
「私ねー、テンタクル…って言ってもこの国では通じないみたいなんだけ
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