「う〜……さむい」
最近、家の中が冷える。壁はしっかりとした作りだけど、北に位置するこの地では、薄い窓やドアから貫通して入ってくる冷気で冷たくなってしまうのだ。
「もっとマキをくべないと……」
小さくなりつつある暖炉の火、消えたら死んじゃうよ!
椅子で丸まっていた私は仕方がなく立ち上がり傍に積まれた薪を……
「こらっ」
「あっ!」
掴んだそれを取り上げられてしまった。目で追うと、当然のように、嫌いなアイツ!
「薪割りはいったい誰がやってるのかな〜?結構手間なんだから、それをぽんぽこ使わないの」
「火がないと寒いじゃないの!」
「もう夜なんだから部屋で寝なさい、ベッドの中なら暖かいでしょ」
「寒いわよ!氷みたいに冷たいのよ!10秒入ってられないわ!」
もう!ああ言えばこう言うんだから!薪と夜更かしくらい多めに見てよね!ナマイキな人間め!
「なら一緒に寝るかい?」
「ふゃえ?」
「バカー!エッチー!」
こいつは!こいつは!本当にでりかしーがないんだから!
「なんでさ」
「い、一緒にお布団に入って、私にいやらしいことをするのね!?」
「どこで覚えるのさそんなこと」
「本で読んだのよ!」
そうだ!冒険小説で読んだのだ!捕まったヒロインの美女が敵のボスにベッドに連れ込まれていやらしいことをされそうになって嫌がっていた!
こいつは私に同じことをしようとするんだ!
「いやらしいことってなにさ」
「え?えと……て、手をギュッて握ってすりすりしたり、ほっぺ撫でたり……ち、ちゅーしたり……」
「チュー以外はだいたいやってるでしょ。ほら、寒いんでしょ?」
暖かそうなふわふわな服を着たそいつを見て、考える。
確かに二人で寝れば暖かそうだ、でも、本は読みたいし、こいつと同じベッドは……でも、もう眠いし、それに薪を使いすぎたらまたこいつが薪割りをするし……て!それはどうでもよくて!
「あー、もう!寝るわよ!寝ればいいんでしょ!」
「うん、いいこいいこ。さ、おいで」
「いやなことしたら叩くんだから!」
「はいはい、さ、いこーねー」
「うーーーー……」
いいわよ!こんな奴のこと気にしなきゃいいんだわ!
ただのあったかい人形と寝るだけなんだから!
添い寝なんかに絶対に負けない!
はぁと−−−はぁと−−−はぁと
「くぅ……すぅ……」
「ぅ……ゃ……」
わたしはすっかり、みを包むあったかさとこいつの匂いによっぱらっていた
「ん……」
「ひゃっ……」
私をうでの中にだくこいつが身じろぎして、もっとからだがギューってくっつく。
すごくちかくて、そいつのむねに顔を埋めることになる。
「う、ぅ……」
せなかに回されたうでがわたしを深く抱いてはなしてくれない、そしてなにより……
ここから出たくないという自分の考えがいやで、なのに……
「……ぅ」
ドキドキは止まらないのに、なんでかわたしはすっごく安心して、ねむりについた……
「ほらあんた!夜更かしは駄目でしょ!早く寝るわよ!」
「ええ、まだ早いよ、まだこの本読みたいんだけど」
「薪の無駄でしょ!早く寝るわよ!布団に連れて来なさい!」
「また一緒に寝るのかい?やれやれ」
何を不満そうにしてるんだもー!こいつは本当に生意気なんだから!
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