マイコニドちゃんは走れない。
その子と出会ったのは山間の森の中。隣町に薬やら生活雑貨などの小物を買いに行った帰りのことだった。
俺の住む村は小さく、百にも満たない村民で農作などをして日々慎ましやかに暮らしている。薬師や医者など駐在しているわけもなく、もしも病気になればこうして隣町まで行って医者を呼ぶか薬を手に入れる他ない。
今回は村長の娘がある病気にかかってしまったので、村で一番足が速い俺が医者を呼びに行くこととなった。が、肝心の医者は忙しくすぐには行けないと言われてしまった。何の病気かはわかるそうだが、薬をどの程度処方すべきかは直接見ないといけないらしい。仕方ないので解熱剤といった症状を緩和だけさせる薬を頂き、俺は先んじて村に戻ることとなった。
そんな矢先のことだった。
「なんだあれは」
我が目を疑った。
一際大きな樹の幹に背を預けている幼子。その娘がキノコに喰われていた。
喰われている最中だった。比喩表現抜きに、うねうねと蠢く毒々しい赤紫のシイタケのようなものが、紫がかった長い銀髪の幼女の頭を丸呑みにしようとしていたのだ。
「くそっ!」
咄嗟の行動だった。
「きみ大丈夫か!? くっ、これは外せる、のか……?」
化けキノコに喰われそうになっている幼女を助けようと駆け寄る。しかし、その姿をつぶさに見ていき俺は驚愕した。
幼女はキノコに喰われているわけではなかった。キノコが幼女だった。
自分でも何を言っているのかわからないが、確かにそうだ。ほとんど全裸のような恰好をした幼女。その赤みがかった健康的な白い肌からは、直接キノコが生えていた。たとえば首や胸下にはまるでキクラゲのような波打ったキノコが生えている。腕はフリフリのドレスの袖のようなキノコが幼女の肌から直接生えていた。脚もくるぶし辺りからフリルのようなキノコがあり、その中心から小さな足指を覗かせている。
そして全身至るところに頭のキノコと同じ形状で、それを小さくしたものが生えていた。
キノコの部分を除けば人間の幼女と変わりない。しかし確実にこの娘は人間じゃなかった。
まず第一にこんな森の中に幼女一人でいること自体がおかしいと気づくべきだった。
この娘はおそらく魔物だろう。キノコの魔物に違いない。
「んんっ……はれぇ、もう朝ぁ」
幼女が目を擦りながら、妖艶な赤紫の瞳を開く。そこには俺の姿が明確に映ってしまっていた。
「や、やぁ」
魔物に喰われる……ことはないとは知っている。昔は喰われることがあったそうだが、現在魔物は俺たち人間に対してある程度友好的な存在になったと、旅の人から幾度も聞かされたし、その魔物本人からも聞いたことがある。
ただ如何せん好色であると。男を見ればすぐさま性交して子供を作りたいと考えるとも聞いた。
ぼんやりとしたキノコの幼女はカクンと首を傾げたあと、
「お兄ちゃんはお兄ちゃんは、私のお兄ちゃん?」
「え?」
キノコの幼女は突然俺を突き飛ばし、そして腰の上に跨った。
「っ、な、なにを」
「やったぁ、ようやく見つけたよぉ私だけのお兄ちゃん」
ふわりとしたドレスの袖で頬を撫でながら、幼女は目を瞑って唇を近づけてくる。まさか。
「ななっ、待て君っ!」
「ふぇぇ? なんでぇ押しのけるの? お兄ちゃんは私のお兄ちゃんになってくれるため私を見つけてくれたんでしょ?」
「ち、違う! ていうか俺は君の兄じゃない!」
「お兄ちゃんだよぉ。私にいっぱいいっぱい胞子を蒔いてくれる優しいお兄ちゃん」
「胞子って」
「決まってるじゃない」
幼女はぼんやりした目つきのまま、しかし妖艶に舌なめずりをした。そして、腰を幼女とは思えない淫靡な動きで、俺のペニスをズボン越しに刺激する。
「お兄ちゃんの立派なキノコからいーっぱい出る真っ白な胞子のこと」
やっぱりそうか!
噂に違わぬ淫乱っぷり。こんな小さな女の子でも、頭の中はエッチなことでいっぱいらしい。
「だが待ってくれ、俺は名も知らぬ子とはまぐわえない」
「私の名前はコニィだよ。マイコニドのコニィ。お兄さんは?」
あれ、意外と話通じるのか。
「カ、カナリだ」
「カナリお兄ちゃん!」
「わっ、ちょっ」
キノコの幼女改め、コニィが抱き付いてきて頬擦りしてくる。ふわふわなドレスのようなキノコの袖、控えめながらしかしむっちりとした裸体、こんな幼子だというのに、男を誘惑するには十分すぎるほど魅力的だった。
幼女趣味のない俺ですら、このコニィという娘はいままで会ったどんな女性よりも魅力的に見える。キノコドレスの袖が肌に震える度、頬擦りされる度、性欲が膨れ滾っていくのがわかった。
「あはっ、お兄ちゃんのここ準備万端だよ」
「あぐっ、そんなぐりぐり押し付けたら」
「隙あり」
「なっんむっ」
コニィ
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