―6―
「う、あ、ぁあー……」
「うふふ」
あれからどれくらいの時間が経ったのだろう。時計もない。外の様子すら見えないこの場所で時間という概念は希薄なものになっていた。
お腹も空かないし、喉も乾かない。尿意も便意もなく眠くもならない。
唯一残ったのは、いま与えられているものを貪りたいという欲求のみだった。
俺はいま、紫百合に囚われている。
彼女のムカデの身体にぐるぐる巻きにされ、甘い疼きを与える牙と歩肢が食い込み、身じろぎすら許されない。
その状態で押し倒されている俺には、常に思考と身体の感覚を狂わせる猛毒が注入され、抵抗する意欲すら沸かない。いや、さっき言ったように、そうされることを俺は望んでいるのだ。
毒で狂わされた結果そうなったのか。もし狂わされていなくともなっていたのか、いまの俺にはそれを思考する術すら残されていない。
「ぁ、しゆ、り……もっと」
「ふふ、いっぱい飲んでください。んあ……」
紫百合の口からいっぱいの粘性のある毒液を垂らされる。俺は口を空けてそれを喉の奥へとそのまま流し込んでいく。
「お、おっぱいミルクもどうですか? ほら、びゅーびゅー、ふふ、顔が私のミルク塗れ、気持ちいいですよね?」
「気持ちいい……」
「これはどうですか?」
「っうあああっ!」
太ももに甘い痺れが走る。ムカデの尾先にある大顎に噛まれ、毒液を注入されたのだ。注入された箇所はじんじんと甘い痺れが広がって、形容しがたい快楽に変貌する。毒汁を直接飲むのとはまた違った悦楽を味わえて、これも俺は楽しみにしていた。
「ふふ、これでもう全身噛み痕だらけになっちゃいましたね。私の噛み痕だらけ……ふふ、ふ、ふふふっ……」
満たされている。紫百合にこうして毒を注がれると心が安らぐ。幸せとはきっとこのことを言うのだろう。紫百合とこうして肌を重ね合うと堪らなく心が満たされた。
「でもここは満足できてない、みたいですね」
「ぅぁ」
まるで心を見透かしたように、紫百合は腰をぐっと俺の股間に押し付ける。ペニスが押しつぶされ俺は声にならない呻き声を漏らした。
「シテ、欲しいですか?」
「う……」
シテ、欲しい。紫百合の全力で俺のソコを嫐って欲しい。唯一毒の触れていない、噛まれてもいないそこを淫毒で犯して欲しい。
なのに口が動かない。喋れないわけじゃないのに、心も身体もそう望んでいるはずなのに何かが塞いでいる。一線を越えさせないようにしている。
理性も本能もわかっている。もしペニスを毒で犯され、快楽の餌付けをされれば正真正銘俺は人ではなくなると。紫百合だけを望んで、紫百合がもたらす快楽と毒に依存し、貪るだけの存在になるということを。
そうなった場合、俺の人としての人生は終わってしまうということを、知っている。
だから言えない。おねだりができない。したいのに。いますぐにでも紫百合に徹底的な調教を施され、快楽と毒に尻尾を振る雄犬に成り下がりたいのに。
「はぁはぁ、しゆ、り……」
おねだりを目で伝えるけど、紫百合は嗜虐的な笑みを浮かべるだけだ。決して俺のペニスに毒を注ごうとはしない。
「ふふ、ふ、三日。三日です」
三日? 何が?
「ホワイトデーまであと三日、あるんです。それまでに答えを聞かせてくださいね。瑞樹くんの全てを捧げるおねだりを」
「はぁはぁ、はぁ紫百合、俺、俺……!」
「焦らなくていいですよ。瑞樹くんが素直になれるように、ふふ、ふふふっ、この三日間、たぁっぷり毒をその身体に染み込ませてあげますからね。身体の噛み痕もすぐに消えますよ。消したくないからその都度付けますけどね……ふふっ。だから、お、思う存分狂ってください。瑞樹くんのその情欲をたっぷり溜め込んでください。ほら思い出して、私に腰を押し付けられただけでイッちゃったときのこと」
「あ、あああ」
「すごく気持ちよかったですよね? あれが、あれよりも、ずっとずっと気持ちいいのが、これから先一生? いいえ、常に、未来永劫味わえるようになります」
「っ、ああっ!」
欲しい。その快楽が欲しい! なのに口が動いてくれない!
「ふ、ふふっ。三日です。三日間、イケない身体にいっぱいいっぱい、本当ならイッちゃうくらいの毒を注いであげますから。苦しいかもしれないけれど、私も頑張ります。だって、私だって本当は我慢しているんですよ? オマンコが疼いて疼いて、瑞樹くんのオチンポ食べたくて仕方なくて飢えているんですから」
「はぁ……紫百合のオマンコ」
「でも我慢。堕ちましょう? 堕ちきってもう昇れなくなって、毒沼の底で永遠に愛し合いましょう? だから――」
紫百合が毒を滴らせる牙を剥き出しにする。
「私に狂ってください、瑞樹くん。私だけのことを考えて」
つぷっ、という音ともに俺の首元に紫百合の顔が
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