第八章 天を仰ぐは誰がために:ドラゴニア

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 結局、気絶するまで交わりを繰り返し、おれと呈は気が付くと自分の部屋のベッドで寝ていた。二人して目が覚まして、お互い抑えきれずすぐにセックスした。
 猿のように、という言葉が似合うのだろうけれど、呈は蛇でありおれはその番いだ。ならばおれも蛇というのが正しいだろう。蛇人間とかいう冒涜的な怪物ではないけど。
 そして一度終わってもう一度、となりかけたところで母さんたちに行為の声が丸聞こえだと直接伝えられた。ついでに昨日おれたちを家まで運んでくれたのが母さんたちと呈の両親だということも。
 冷や水を浴びせられたというのはこのことだろう。しかし顔面は山火事に遭っている。誰かに見せながらセックスすることに耐性のないおれたちは、当然のことながら一度パニックになってから冷静さを取り戻した。
 町中では至る所で見せつけるようにヤっている人たちが多いが、おれたちはああはなれそうにない。
 おれたちだけ気まずい空気の中、昼食に出されたのはお赤飯とちらし寿司。大量発生したときにでもしか捕れないはずの魔界甲殻虫のフライや、定番のドラゴンステーキなど、ドラゴニアの料理もテーブルいっぱいに並んでいた。
 そして、当然のように割烹着姿の呈の母とその夫さんも同席している。
「これなに? ワインご飯?」
「ジパングのおめでたいときに食べる豆ごはんだって。精通迎えたでしょ?」
「ええっと、お母さん? どうして、ちらし寿司なのかな?」
「だって、大事に大事に取っておいたもの、散らしたでしょう?」
 おれたち揃ってうな垂れる。うふふと笑う母と義母は残酷なまでの微笑みをたたえていた。
「それに呈もようやく脱皮して一人前になったもの。お祝いはしないといけないわ」
 脱皮。聞き慣れない単語におれと呈は顔を見合わせる。
 どうやら、おれたちが運ばれるときに呈の下半身の蛇体が脱皮を始めていたらしい。
 大人になったこと、激しい交わり、温泉に浸かっていたことが主な理由だとか。
「そ、その皮はどこあるの、お母さん?」
「うふふ、もう処分しましたよ」
 絶対嘘だとわかる意味深な笑みを浮かべる呈の母さん。容姿は呈をそのまま大きくしたような感じだが、意外と呈みたいに子供っぽいところもあるみたいだった。
「そこはかなとなく、小馬鹿にするようなことを思われた気がする」
 そんなことはない。
 しかし、脱皮していたのか。通りで朝身体を重ねたとき、妙に蛇体が柔らかく感じたわけだ。それに呈の反応も激しかった。ちょっと触れただけで感じて。
「ひゃんっ!?」
 裏の筋をなぞるとこんな風に可愛い声をあげ、ぐええええ……。
 当然ながら蛇体に締め付けられた。
「ス・ワ・ロー!?」
 怒らせてしまった。ふふ、とは言えそれは愚策。弱点を自ら晒すとは。反撃は容易。締め付けている蛇体に軽く手を這わせればぐふぅうううう!?
「ハッ!? あわわ、ご、ごめん、スワロー! つい鳩尾を殴っちゃった!」
 ご飯を食べたあとでなくて心底良かったと思うおれであった。

 天の柱の大規模修繕まで残り一週間。登頂の時間も含めると数日しか準備の時間はなかった。
 もう呈と結ばれた以上、焦る必要はないのだけれど、二人で話し合って今回のチャンスに臨むことに決めた。
 あえて困難な道を選ぶ。天の柱を駆けのぼる竜車が示す困難な道のりと同じだ。
 今日いっぱいは準備に徹する。呈の装備の確保や天の柱の現状に関する情報収集だ。
 天の柱に登る際の装備は、おれの場合はまず防寒着各種。シューズは軽量と頑丈さを兼ね備えた特注品のブーツで壁などに引っ掛けやすい構造となっている。それからサイドポケットが幾つもあり、見た目以上に物が入るリュックの上部には毛布と寝袋を巻きつけている。
 腰回りは鉤爪つきのアラクネ印のロープが収まる円筒状の巻き取り機。魔界銀製のナイフピッケルとドラゴンオーブの軽量ランタンは、それぞれ紐がついていて腰ベルトのカラビナと繋がっている。
 携帯食料は当然ながら飲料も欠かせない。飲料は体力回復も兼ねた「竜の生き血」で確定。もちろん本物の生き血ではなく、ドラゴニアで幅広く売られている魔界葡萄の果実水だ。その効果は折り紙付き。
 重要なのがマジックアイテム。母さんの魔力を入れた重力軽減の風魔石。ワイバーンのブレスを数度レジストできる外套。ドラゴニウムと魔界銀を用いて精製した、魔力を拡散させる粉塵。一時的に物や姿を透明化するルーンが描かれた使いきりの護符、インビジブルシール。着火と消炎の魔宝石。アラクネの糸を設置するワイヤーキューブ。
 あとは傷薬やポーションの類、手ぬぐいなどの小物入れに入るもの。煙玉やら緊急回避用のアイテム数種。
 以上がおれの大方の装備。これだけでも結構な重量だが、不思議と以前よりは軽く感じられた。
 ただこれ
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