回想終了。原因判明。
そうだ、そうだった。俺は、あの後気を失ったんだ。そして気がついたら、今みたいに鎖に繋がれて監禁されていたのだ。
俺が記憶の呼び起こしに成功し、煩悶としている中、ちょうどドアが開く。
そこにはあの魔物娘が。蛇のなりをした魔物娘となった石神瞳がいた。
やっぱり、そうだ。あの魔物娘は瞳だった。瞳が俺をここに連れてきて監禁したんだ。どうやって気を失わせたかは知らないけれど、それは間違いない。
魔物娘になった瞳は、起きた俺の姿を見ると一瞬だけ頬を緩ませるが、すぐまたいつもの無表情というか無愛想な表情に戻る。
ツインテールの蛇はそれぞれが生きているらしく、世話しなく動いたり、蛇同士で絡み合ったりしていた。
「瞳、どういうつもりだ、俺をこんなにして」
目の前までやってきた瞳に俺は言う。
「早くこの首輪取ってくれよ。俺を家に帰せ、……?」
まただ。俺の声が出ない。瞳の眼を見た瞬間、俺の身体が動かなくなった。
どうしてだ。でも今回は意識が失うようなことはないらしい。
「龍郎」
瞳は不機嫌な表情と反して、甘えるような柔らかい声音で俺の名前を呼ぶ。
瞳は、ベッドにその蛇の身体を乗せると、俺の隣に来た。しかもただ来ただけじゃない。
俺の身体にぴったりと寄せるようにしてだ。
…………うわぁ、柔らけぇ。しかも、なんかいい匂いするし。
身体は石のようになっても感覚は残るようだ。それどころか、むしろ敏感になっているような気がする。瞳の身体が触れているところが、ほんのりと熱くなって心地いい。体温がじっくりと伝わってくる。
鼻もだ。瞳から香る甘い匂いが鼻腔くすぐって、なんとも言えない心地よさを与えてくれる。
……って、ちょ!蛇、蛇!顔に蛇が来てる!噛まれるって!
「大丈夫」
俺の焦る気持ちが伝わったのか、瞳はそんなことを言う。
確かに瞳が言ったように大丈夫だった。
瞳の蛇は、俺に噛みつくような素振りは見せない。それどころか、俺の顔に頬擦り?したり、その長い先の別れた舌でチロチロと優しく舐めたりしてくる。表情は心なしか蕩けているようで、瞳の無愛想な表情とは真逆に思えた。
蛇に好かれたのか、俺は。
そんな時間がしばらく続く。
瞳は俺にぴったりと身体を寄せてなにも言わず、俺は身体が動かないのでそれを甘んじて受ける。動いているのは瞳の髪の蛇だけで、俺の顔を這ったりや、耳に絡み付いたり、唇をチロチロ舐めたりしてくる。蛇に対する気味の悪さはなかった。最初は怖かったが、噛んだりしてこないのならかわいいものだ。不快感はない。
……しかし、にしてもこの状況。あまり好ましいとは言えない。不満があるかと言えばそんなことはないのだけれど、何故俺がこんなことをされるのかわからないから素直に喜べない。それに、瞳の触れる身体は柔らかくて、いい匂いがして、温かい。しかし、安心するという感じではなくて、こう、情欲をそそるような、エッチな気分にさせてくるのだ。そして、俺は身体を動かせない。この気分から逃げることもましてや爆発させることもできず、ただ生殺しにされるのだ。
まさしく、蛇に丸呑みにされた蛙のごとく。
ごとく、ではなく本当に蛙と同じなのかもしれない。瞳が触れる箇所はどこもまるで、瞳のお腹の酸を浴びているようにピリピリと溶けるような刺激がするのだ。俺は、緩慢に緩慢に瞳に溶かされている。そんな気がしてならなかった。
どれだけ時間が経っただろうか。窓からの光はまったくない。つまりは夜なのだろう。問題はこの夜が、俺が監禁された日の夜なのか、それとも翌日の夜なのかということだ。もし翌日なら、俺は家に帰ってないことになる。親が心配するじゃないか。誘拐されたと思われるじゃないか。いや、実際誘拐だけども。最悪、警察沙汰になるかもしれない。そんな面倒なことはごめんだぞ。
身体は動かない。しかし、目は動くみたいだ。俺の身体は石みたいに動かないが、石になったわけではないらしい。唾液も出るし、涙も出る。まばたきはできるみたいだ。よくよく考えれば石になっているなら、瞳の感覚が伝わるとは思えない。つまりはただ単に俺の身体が、金縛りにあっているみたいなものか。とは言え、それがわかったからとはいえ、金縛りを解除する手段が見つかったわけではないが。
しかし、目だけでも動かせるなら。
俺は蛇の顔を見つめる。訴えるような感じで。
「…………?」
伝わった、か?
「…………なに?」
どうやら俺が言いたいことがある、ということは伝わったらしい。ぶっきらぼうに瞳は返事する。
「口、解いた、よ」
「えっ?…………おお、喋れる」
声が、声が出るぞ。なんか妙にうれしい。解放感がある。
「あ、身体は動かないのか……」
「龍郎、なに?」
目の前に瞳の顔が。っ
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