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「はぁ…はぁ…もう目の前だ!」
勇者ラインは魔王城の廊下を駆けている。
彼の右手には、青い蛍光が纏わっている一丁の長剣があった。しかしそれは単なる術式の効果ではない――刃の先は花のように咲き、一つの砲口が出された。真っ黒で冴えなく、でも何か複雑で網みたいな紋章が付けてる。ラインが歩を進めるたびに、蛍光の粒子が長剣から落ちている。
言わば、古典魔法と魔導科学のミックスである。さっきラインが魔人形を一ダース殴り倒したのは、こいつのおかげだった。
「絶対…絶対魔王を倒し、世界に平和を戻して見せる!空の彼方で私を見守ってください、ヘルシン先輩!」
ラインは更に右手に力を注ぐ。
現世代の魔王は女性なのに、その強さは底知らぬ。位に就いてからたった一年間、その四天王は人間の国を幾つも征服し、光の女神様もさぞ悲しいのだろう。それに、ラインが小さい頃からずっと憧れており、魔王を討伐に行った先代勇者ヘルシンも、その女の魔の手に罹って帰りに来なかった…
魔王がいるホールの重いドーアは、もう眼前だ。
これで全ての終わり。幾千の時間を越えた因果は今日で斬ってやる!魔王を倒したら、また平和と正義がこの大陸の上で輝く!
ポンンンンンンンンンンンン
「覚悟しろ、魔王!」
ラインは恰好よく一つの斬撃でドーアを切り裂いて、中に飛び込んだ。
「……」
「んぁ〜」
「……」
「……え?」
ラインは目の前の光景にびっくりした。
そこに魔王がいた。ドラゴンの骨で作られる玉座に、思ったより弱々しく、角と尻尾の生えている少女がいた。たぶん最初は筋肉系の男性魔王のため設計されたものなので、その王座は彼女にとってソファーのようで、繊細な足から地上まであと少し距離がある。
その魔王の膝に、ある男が頭を預けていた。魔王が爪の先で耳かきしてくれるのを楽しんでいるみたい。
「うんん〜」
「……」
「あ、そこちょっとくすぐったいから軽く掻いて。」
「要求の多い男ですわ…」
「そうそう〜そこだ。ありがとうリリス。」
「って、お客が来ましたよ。」
「うん?」
その男は崩れたドーアと呆れたラインへ視線を向けてくる。
ヘルシンだ。
先代勇者、最強人間と名乗る、軍隊にも匹敵と言われる存在。
魔王リリスの白い太ももを味わっている。
「えっと……すまん、どなた?」
「ヘ、ヘルシン先輩!?どうしてここに――」
魔王に殺されたはずだが。
「知り合い?」
「いゃ見たことない、たぶん。共通語で15秒の自己紹介をしてくれ。」
「わ、わたしはラインですよ!小さい時から最強勇者のヘルシン先輩に憧れて、あなたの姿に追うと誓って今まで頑張ってきたそのライン――」
「あぁ〜なんか複雑な設定なので止めとけ。タレントショーもパス。そう言われても思い出せないからとにかく出て行け。それにドーアをちゃんと閉めること。」
「ま、待ってくださいヘルシン先輩!せめてどうして魔王と一緒に――」
「はいはい〜『極電爆弾』〜」
「え!?」
ヘルシンは魔王リリスの膝に寝ていながら前へ手を出す、何かを掴んだように。
そして、まるで手品みたいに何もない虚空から電光の鎖が付いてる長剣を抜き出し、ラインに刃を向け、無詠唱で一つの巨大なライトニングボールを作り始めた。
ラインは慌てた。どうして自分の憧れる人はその女のそばに?どうして会ってから間もなく必殺技で彼を追い払うの?それに「勇者異聞録」によれば、ヘルシンが山さえ吹き飛ばせる『極電爆弾』を使う場合はスリーバーの詠唱が必要なのに――
相当な大きさを得たライトニングボールは、悄然と前へ発射された。
フンンンンン
一瞬にして、ラインはオレンジ色の混ざる狂乱な嵐に連れて行かれた。瞬く間に自分はもう魔王城でなく、幾千メートルの高空にいた。
くそ!一体なぜヘルシン先輩に嫌われたのか?それに彼は強すぎるじゃない!噂よりもずっと強いほど。まさか、以前は実力を隠していたなんて…
ところで、魔王ってこんなに可愛い女の子なんだ…ってなに考えてるんだ私!それは人間殲滅を企てる極惡な魔王だよ!
っと、あれこれを思いめぐらしながら、勇者ラインは天から落ちた。
2
ビビビビビビ〜
暖かい朝、時計術式の魔法音は魔王城のある寝室に響いた、豪華な羽毛製のマットレスを巻く音と共に。
「ふにゃん〜」
猫みたいな声を発して、ベッドから起きて欠伸をしたのは勇者ヘルシン。
現在二十二歳、魔王城に住んでいる。
「別人の家なのにこれまで思うままにして、九時になってこそベッドに立ち上がってドーアから入った私にパンツ姿を見せるなんて、私のほうが使用人になっている感じがするわ。」
「おはようリリス。」
「おはよ。」
十七歳の魔王少
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