8月9日、晴れ、朝―――――
「起きるッスよ〜
#10084;起きるッスよ〜私の大好きな人〜〜
#10084;愛しい眠りの王子様〜〜
#10084;起きなきゃ目覚めのキスがねちっこさを増すだけッスよ〜〜
#10084;」
「んんぅっ・・・ジョアンヌ・・・どうしたの・・・今日は土曜日のはず・・・」
僕が滞在しているブレイブハート・アカデミーの授業日は月〜金曜日と学校と一緒であり、土日祝日は基本お休み・・・剣の稽古やらは自主練程度と定められているのだ。だから今日はせっかくのお休みな訳で、寝ぼけ眼にもっと眠らせてくれというささやかな抗議を込めて、ジョアンヌへと向き直る・・・寝具に巻き込まれて寝ころんだまま。
「土曜日なのは間違ってないッスけど、実は良いお知らせがあるッス♪」
「良いお知らせ・・・んんぅっ・・・ぷはぁぁっ!!!・・・よし・・・聞かせてもらおうかジョアンヌさん?」
ジョアンヌの楽しげな声に気合一閃、寝具ごと眠気を吹き飛ばすようにムクりと起き上がる。壁掛けの時計は午前7時前・・・早朝も早朝だが、それでもジョアンヌが僕を起こそうとしたその訳とは・・・?
「一日外泊申請が降りたッス♪時間たっぷりとデートするっきゃないッスよ♪」
デート・・・ジョアンヌとデートする・・・・・頭の中でリフレインする嬉しいお誘い。満面の笑みで微笑みかけてくる美少女の顔に見惚れたまま、僕は首を縦に振った。嬉しそうにジョアンヌがガッツポーズするのがまた心を撃ち抜かれてしまう。
「ちなみに帰りは明日のお昼までッス!今日はいっぱい・・・遊び回るッスよ♪」
8月9日、晴れ、午前中―――――
プシュッという空気の抜ける音と共に秩序正しく降車する列ができて、ゆさゆさとバスが左右に揺れ動く。思った以上に乗客が込み合っていたのは、今日が夏休み期間の中でも土曜日の日だったからなのだろう。ちょっぴりと冷房の足りていなかった車内から、サンサンと照り付ける太陽の下へと出てみれば一気に熱波が襲い来る。顔を想わずしかめながら恋しく思うブレイブハート・アカデミー・・・あそこはどこも空調が効いていて快適な環境だったのだと外に出て初めて気が付かされた。
そう、今僕は・・・ブレイブハート・アカデミーの外にいる。別にあの塾に監禁されていた訳ではないし、居心地だって最高だったのだが・・・変な気持ちになるのは、ジョアンヌと四六時中一緒にいたあの生活とのギャップに、頭がまだ追いついていないからなのかもしれない。
そう、僕らはデートらしく、待ち合わせをすることにしたのだ。だから今僕は一人きり・・・僕の隣にジョアンヌは居ない。正直言って酷く寂しい・・・その事実が、僕がどれだけジョアンヌに対してメロメロに駄々惚れしていたのかを物語っていた。
現在地にして新幹線の止まる様な大きな駅の、ロータリー前。コンクリートジャングルのど真ん中・・・夏の日差しの照り返しがなおの事キツイ。直ちにどこか涼しい場所へと退避すべき暑さではあるのだが・・・それよりも優先すべきことがあるのだと周囲を見渡す、なんてったってここがデートの待ち合わせ場所なのだから。
実を言えば夏の暑さから逃げることよりも、今なお心を苛む寂しさのほうが余程に苦しい。だからこそ、早く探し出そうと目を閉じて、修行を重ねた心眼までもを使って愛しい探し人を求めてしまう。
瞼を閉じた闇の中、街行く人々の色とりどりのオーラの中に・・・いた、愛しき彼女が。街行く人々の中でも見間違えるはずがない、ひときわに光り輝く魅力を放つ、僕の大好きな彼女が。それはもちろん、僕の愛しいヴァルキリー、ジョアンヌ・クレジオだ。ちょうど彼女も僕を見つけたのだろう、ぶわっとジョアンヌのオーラが歓喜に大きく瞬き、こちらに向かって走り寄ってくるのが見えて・・・ようやく瞼を開いた。
心眼ではなく己が眼で見つめる彼女はいつも見慣れたヴァルキリーの制服ではなく、この日のために選んだという私服姿で僕を待っていた。
「マコト
#12316;!遅いッスよ!もう私、待ちくたびれちゃったッス
#12316;!」
待ちくたびれたって言われても、今は待ち合わせ時間の30分以上は前である。なんて言い訳なんてどうでもよくなる・・・満面の笑みでぶんぶんと手を振るジョアンヌの姿に、僕は瞬きすら忘れて立ち尽くす。
まず、目に入ったのは上半身だ。
真っ白で薄手のサマーニットのノースリーブ。その繊細な生地は光を浴びてわずかに肌の滑らかさを透かし、ジョアンヌのしなやかながらもヴァルキリーらしい、鍛えられた肩のラインを惜しげもなく露出している。そして何よりも、ニットはKカップの圧倒的なボリュームに内側からぐぐっと押し上げられ、胸元には何重ものシワがくっきりと刻まれていた。制服の時とは
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