―――――8月1日、晴れ、10時15分
「確かに入塾料を頂きました。しかしそのお年で・・・この額を払うのは随分大変だったでしょう?・・・とはいえ、これからが本当に大変なのでしょうが」
「ええ、でもこの塾に入る事が夢だったんです・・・ようやく夢が叶いました」
空調の効いた事務所の中、僕は男磨き塾の入塾料をキチンと払い終え、事務のお姉さんに褒められながら・・・これからの事を思い心を弾ませていた。
とうとう夢に見た男磨き塾への入塾が果たされるのだ・・・果たしてこれからどのようなカリキュラムが待ち受けているのか・・・例えどんなに辛く険しい試練が待ち受けていようとも、僕は絶対に諦めない。必ずこの男磨き塾を卒業して、誰もが認める男らしい男に成るのだと心の内の炎を燃え上がらせていた。
「ではこの建物を出て真正面、講堂の中でお待ちください、塾長から新規入塾生達への激励の挨拶があります」
「分かりました、ありがとうございます」
事務のお姉さんに促されるがまま、着替え1式その他色々と荷物の入った重たい鞄を肩にかけて、講堂と札の掛けられた建物の中へと入る。
大講堂の入口たる靴脱ぎ場には十数名程度の男性達が立ち塞がるように・・・と言うよりかは講堂の中に入るのを躊躇っているかのように、人集りを作っていた。
―――――うわっ・・・やべぇよ
―――――ちょ・・・直視出来ねぇ・・・可愛すぎる
―――――生きてて・・・良かった・・・ここまで頑張ってきて・・・良かった・・・!
口々に何やら感動と感嘆の声が漏れ聞こえてくる・・・っていうか可愛いってどういう事なのか、みんな一体何を見て入口で足を止めているのだろう。
「すいません通してください、通してくださいね・・・」
大きな荷物を抱えながら人の壁を掻き分けて、ようやく講堂の中へと入ることが出来たのだが・・・そこで僕は思いっきり面食らってしまった。
何故ならば、その講堂の中は・・・・・・
―――――いよいよ私達も勇者候補とバディが組める時が来たね!
―――――うん!ワクワクする
#12316;ドキドキする
#12316;どんな素敵な出会いが待ってるんだろ
#12316;!
―――――ふんす!ふんす!可愛い男の子・・・たっぷり甘やかしてあげるッス!!!!!
―――――うん・・・授乳手コキで甘やかす、真っ直ぐ行って甘やかす、授乳手コキで甘やかす・・・
右を見ても左を見ても、どこを見ても想像を絶するほどの美少女達の集まりだったのだ。講堂中に充満する華やかな香りすらも鼻腔を突き抜ける・・・一体何なのだこの空間は・・・!?!?
「よう新入生・・・まぁ俺もなんだが、どうだいこの絶景は!右も左も可愛子ちゃんばっかりでびっくりしただろう?」
背後から人懐っこそうな低い声、目の前の女の子達に見とれていた意識がハッと覚めて、声の主へと振り返る。
「え、ええ・・・何なんですかこの空間は・・・僕は男らしい男になるために・・・」
「ハハハ!!何だよそれ!何にも知らずに入ってきたのか!すげーヤツだな!ってそんなヤツ居るわけ無いだろーってなハッハッハッ!」
面を食らっていた僕に、声をかけてきたのは大柄も大柄の大男、人懐っこい笑顔が彼のエネルギッシュさと人の良さを演出している。
「初めましてだよな、俺は伊織コーイチ、コーイチって呼んでくれ」
「僕は園崎マコト、よろしくねコーイチ」
「おうとも!これから同じ塾生同士仲良くやっていこうぜ!」
肩口をバンバン叩かれて少し痛い。されど彼の人懐っこく、力強くも頼もしいその仕草が・・・男らしくて羨ましいなと、僕の心に僅かな闇を差した。コーイチに悪意は微塵もない事は分かっている、それでも会って早々情けないことに、彼のことを羨んでしまったのだ。
「でさ、話戻すんだけど、コーイチはどの子がタイプ?赤いマントの子?それとも青?紫?緑?オレンジ?ピンク?黒?白?タータンチェックに青と白のシマシマ模様まであるけど、ホント色とりどりで迷っちまうよなぁ!」
「ええ・・・?好みのタイプって・・・僕は遊びに来たつもりはないんだけど・・・」
「おいおい今更照れ隠しするなって!これからの塾生活のバディ選び、テキトーに選んで後悔したくないだろ?」
「バティ選びって・・・君とバディ組む訳じゃなくて?」
「アッハッハッハッ!さては全然予習してないなマコト!ココでバディと言ったら男女で2人1組が基本だろ!」
ここまで話が噛み合わなければ誰でも気がつく。コーイチの屈託のない笑顔がこれまた嫌な予感をもたらしてくる、多分この予感は勘違いでは無いだろう。何だか僕は・・・何か重大な思い違いを・・・致命的な勘違いを・・・してしまったのではないだろうか。背筋に冷や汗がつぅと垂れる感覚を堪えながら、覚悟を決めてコー
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4]
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録