そして伝説になった日

Tips・・・黒い角飾りの細剣

ミシェーラが友人のドワーフに頼んで打って貰った魔界銀で打たれた両刃の作りの細剣であり、刃渡り約70センチ幅が3センチ足らず。

洗練されたシンプルで一切の無駄を削ぎ落としたデザインの細剣に、ただ一つの装飾が柄頭に艶やかな黒い角、魔王の娘たるリリムのミシェーラの角がはめ込まれている。最愛の人に贈られる1振りとして、魔界勇者ハロルドの新たな戦い方を実現させるための剣である。

羽のように軽い細剣なれど、その見かけからは想像もつかない程に刀身は頑強。例え龍が踏もうが決して曲がらず、大理石へと叩きつけようとも折れず、一万の敵と打ち合おうとも刃こぼれ1つ起こさない剛剣である。


Tips・・・グラン・フォグリア陥落事件

反魔物国家グラン・フォグリアが、自国から過去に輩出した元勇者ハロルド・カーライルと傍に寄り添う謎の1人の女性の手によって陥落せしめられた事件。

本件に関する情報は様々な諸説があるが、彼我の戦力差が1:1000とも記録されている文献が現状で最も信ぴょう性が高いとされている。

結末としては元勇者ハロルド・カーライルの手によってグラン・フォグリア側の兵士がすべて無力化され、対魔結界発生塔がすべて制圧された。結果、国外から魔物娘の軍勢がお婿さん探しへと大量に侵入してきたことがきっかけとなり、グラン・フォグリアは魔物娘の手に急速に掌握されていった。

グラン・フォグリアの陥落後、国の周辺に幻惑の霧と呼ばれる薄桃色の霧が立ち込めるようになり、グラン・フォグリアを奪還せんと戦力を送る周辺の主神教団の軍勢たちは霧に阻まれ続ける。

無意味に軍費を消耗し続けるだけの無意味な出征を、目的地にすらたどり着けない行軍を幾度となく繰り返すことになる。



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「いよいよ満月の日だな・・・作戦開始は魔王討滅祝賀会前に行われる国王からの褒賞授与会だったな」
「ええ、その場で洗いざらいの真実を突き付けて、私たちの平穏を要求するのです」
「国王は・・・というよりも教団幹部連中はそんな要求受けられるか、と突っぱねて、俺たちを武力を以て制圧にかかる・・・これで俺たちがこの国を攻め落とす大義名分になる・・・とはいえ後は激しい戦闘を繰り広げながら全部の対魔結界発生塔を巡り、残らず制圧してゆく訳だな」
「私の部下のクノイチに偵察してもらいましたが、やはり彼我の戦力差は1対1000なのだそうですね・・・ふふふ・・・ハロルド様にとっては楽勝ですね」

現在地はグラン・フォグリア王城内、特別教練塔の一室、広々としたベッドの上。ハロルドはメイド服姿のミシェーラに膝枕をされながら耳
#25620;きをされていた。カリカリホリホリと耳の穴を掻かれる心地よさを堪能しながら軽く作戦・・・というのもためらうような、行き当たりばったりの力推しの作戦会議が行われている。

色々と調査をしてくれたミシェーラから手渡されたグラン・フォグリア場内の手書き地図も、大変申し訳ないのだがミシェーラからの耳掃除が心地良すぎてキチンと見られていない。まぁどうせ戦いになったらミシェーラを担ぎながらあちこち走り回る訳だから、その時にミシェーラに道案内してもらえばいいかとハロルドは遂に目を閉じ、耳掻きの心地良さを堪能しにかかってしまった。

「ふふふ・・・大変心地良いようですね・・・はいこちら側はおしまい、反対側を向けてくださいませ」
「んおっ・・・心地良すぎて寝てしまいそうだ・・・ふう・・・よし、反対も頼む」

反対側を向いた衝撃でメモ書きの地図は完全に見えない位置へと動いてしまった。それでもミシェーラは文句ひとつ言わずに・・・むしろ喜ばしそうな笑顔のまま、ハロルドの耳掻き奉仕に励んでくれている。ハロルドは身も心も全てを委ねるがまま、ミシェーラの膝枕と耳掻き奉仕に酔いしれ続けている。

ハッキリ言って2人して少々たるみ過ぎである。なにせこれからハロルドは前代未聞の戦いを・・・1対1000という圧倒的な戦力差の戦いを挑みにかかろうとしているのだ。だというのに2人の間に漂う雰囲気は甘ったるい夫婦の蜜月の日常である・・・それも敵国の城の中で。本来であればハロルドは既に敵の手中に堕ちていて、さらに言えば敵方の送り込んだミシェーラという名のハニートラップに思いっきり引っかかっている状況である。

「はい、おしまいですよハロルド様・・・ちょうど迎えの者もやってきたようです」

カリカリ、ホリホリ、極楽の耳掻きの時間はあっという間に過ぎ去ってしまう。代わりに扉がコンコンとノックされ、仕方なしにミシェーラの膝枕から起き上がる。どうぞと答える前に扉は勝手に開け広げられた・・・問答無用で入ってくるのは街道のど真ん中でハロルドを待ち構え、強
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