夏の暑さもようやく過ぎ去って涼しくなってきたとある土曜日のこと。
夕方の日が暮れる前、我が家に宅急便が届いた。その荷物は僕ら二人が待ち望んだものであり、今日の日の主役たり得るものである。
「愛しき私の素敵な旦那様、待っていた食材たちが届きましたよ」
「わぁ、見た事ないものが多いけどこれが魔界産の食材達なんだね」
近所のスーパーにはほとんど並ぶことの無い魔界の食べ物達が大きなダンボール箱にして2つほどいっぱいに詰められている。
これは通販で買った魔界産秋の味覚詰め合わせセット。中でも僕らが待ち望んでいたのは・・・
「これがネバリタケなんだ・・・うわぁホントにネバネバしてる!」
「ええ、たとえ水で洗い流そうとネバリは取れません・・・だからこそスープなどにするととてもとろみの付いた美味しいスープになるのですよ」
「へぇ・・・そりゃおいしそうだねえ・・・ふふふ・・・」
「ネバリタケを食べたあとの交わりは癖になるほどのものだと聞きます・・・たったの1日ですが禁欲までしましたから・・・ふふ、楽しみですね?愛しき私の素敵な旦那様」
「あはは、ワガママ言ってごめんね?」
たったの1日であろうとも、キャンドルガイストたるコーデリアに不可抗力によるものでは無い禁欲を強いることが出来たのは本来は絶対に有り得ないほどの事である。
本来のキャンドルガイストとしての種族特性であれば・・・Hなお誘いを断った瞬間、半狂乱に陥った彼女らに押し倒され・・・自らの魅力的な肉体を刻み込むかのように淫らで強引な御奉仕をされる未来が確定するからだ。
禁欲を挟み、お互いに溜まりに溜まった状態で、最高潮に昂りあった状態でするセックスは・・・その想像もしきれない程の気持ち良さを味わってみたかったからという僕のワガママをコーデリアが汲み取ってくれたのは・・・それは日々の努力・・・というか精をねだる彼女を溢れさせるほどに精を注ぎ込んでいたから。
「ふふふ・・・愛しき私の素敵な旦那様・・・リビングでお待ちくださいませ・・・うふふふふ・・・」
それでもだいぶ無理を通したようで、既に半分目のハイライトが失せつつあるコーデリアが思わず背筋がゾクッとする程の色気たっぷりな声色で僕の耳元をくすぐってきた。
多分・・・いや、僕もそうだけどもうお互いが傍に近付いてしまうだけでも我慢の限界を超えかねない状態だった。手伝おうなんてことしたらきっとキッチンの床で僕らは朝を迎えることになるだろう。
ただ、リビングにて座して待つ。それだけの行為なのに妙に時間が経つのが長く感じる。
まだ何もしていないのに胸の高鳴りがうるさく響く。間違いなく今日のセックスは・・・過去一で熱烈で・・・激しくて・・・情熱的なものになるとお互いが確信している。
程なく・・・体感にして何十時間も経った後にコーデリアが夕飯をテーブルの上に並べ始めた。しつこいようだが並べるのを手伝おうとしたら僕らの我慢は水の泡になるだろう。
テーブルの端と端・・・いつも隣で、むしろ最近は抱き合いながら食べさせあっていた僕らにとってはこの距離での食事は逆の意味で新鮮だった。
気を取り直して今晩のメニューは鮭とキノコのクリームパスタ、鮭とキノコのマリネ、鮭とキノコと野菜のスープとその全てのキノコがネバリタケである魔界産キノコのフルコースだった。
まずは1口スープを啜る、とても美味い・・・ネバリタケ由来の粘りの強い汁感は普段口にする機会のない面白い食感。
鮭とキノコのマリネもネバリが強くマリネ液が鮭とキノコに纏わりつくようで漬け込む時間が短くてもしっかりと味が染みているように感じられる。
メインたる鮭とキノコのクリームパスタは旨味たっぷりのクリームソースと鮭がフォークで巻き付けたパスタにまるで吸い付くような粘りを持って絡みつき、1口あたりの満足度を際限なく高めていた。
「美味しいね」
「はい」
冷えきった夫婦仲の夕食でももう一言くらい多く会話するだろう。もちろん僕らが喧嘩した訳でも冷えきっている訳でもない。
むしろその逆、お互いが燃え盛る情欲に支配されて目の前の伴侶を早く押し倒せと轟き叫んでいるのだ。
静かな食卓に互いの食べ進める音だけが響く。目の端でチラリとコーデリアを盗み見るようにした瞬間、その視線が当然のように重なった。空恐ろしい程の熱情が込められた・・・それでいて冷ややかな目線だった。
僕はその視線から顔を背けることが出来なかった、逸らした瞬間に襲われると本能が確信していたからだ。
もう一刻の猶予がないことを分からされながら、夕飯を食べ終わる頃にはもう彼女の目のハイライトはすっかり消えうせていた。
キッチンから食器を洗う音がする中で僕は寝室のダブルベッドにシーツを3枚に重ね、バスタオルとボトルの水を
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