初めまして、どうぞよろしく

 1階建てではあるが広々とした我が家・・・父さんは長期出張中で母さんはそれに着いて行っているから現在僕は健全な高校生男女皆が夢見る悠々自適な一人暮らし・・・をしてしたところにちょっとしたアクシデントが訪れた・・・。

「あぁもしもし・・・お疲れ様です、配電盤の部品はどうでした・・・?やっぱり無かったですか・・・ええ、明日までに調達するから明日の朝10時で修理・・・はい・・・わかりました・・・お願いします」

 現時刻は夕日の沈みかけた午後6時ちょっと過ぎ、一時間ほど前にいきなり実家の配電盤が故障して絶賛家は停電状態。なんとか田舎町の電気屋さんに様子を見に来てもらったところ修理するためには部品が足りなくて、それを調達して修理できるのが明日の朝という判決の電話を頂いた。

 つまりは少なくとも明日までこの家は真っ暗闇という事になる。直ちに代用の明かりを用意しなければならないのだが・・・母さん懐中電灯とかロウソクとかどこにしまったんだよと絶賛暗くなりつつある家の中を焦るようにガサゴソ漁っているがなかなか見つからない。

 母さんに電話して現状を報告し、ロウソクの居所を聞いてみるも・・・あんたの方が今は詳しいでしょ!と取り付く島もない始末。

「・・・見つからないし、仕方ないから先にカップ麺でも食べておかないと晩御飯抜きだ・・・ロウソクは後にしよう」

 キッチンでヤカンに水を入れてコンロにセット、薄暗くなる一方の部屋でスマホを明かり代わりにお湯が沸くのを待ちわびる。いつも以上に見えづらいお湯を入れる目安線に顔をしかめながらほんのちょっと少なめにお湯を注ぎこんで蓋をして割りばしを上に乗せる。

 キッチンの戸棚とかに置いてないかなとか悪あがきをしてからカップ麺を暗くなりきらないうちにササっと食べ終えた。もうすっかり辺りは夜の闇の中、鈴虫がリンリン鳴っている秋の夜・・・これが夏の熱い熱帯夜とかじゃなくてよかったと前向きに考えることにして当面の明かりであるスマホのバッテリーは・・・残り22%を示していた。明日の朝まではちょっと心もとなさすぎる数字に肩を落とす。

 このままあてもなく探してスマホのバッテリーを浪費するのは悪手だ・・・リビングの畳に寝転びながら去年の大掃除で行方の分からなくなった災害用袋たちをどこにしまったかなあと思い出そうと努力する。が、これも悪手だったかもしれない・・・食べてすぐに横になったから眠くなってきた。

 明日は休みだし、このまま朝まで眠るという手もあるぞと悪魔の囁きに対して全会一致で採用となり、僕は睡魔に無抵抗なまま身を委ねた。

 しかし中途半端に布団も敷いていないリビングの畳の上で寝たのがいけなかった。目が覚めてスマホを見ると時刻は深夜3時24分・・・もうひと眠りしようにも悲しいことに目が冴えてしまった。でも眠ったおかげで頭がすっきりしたからか、災害用袋の行き先を思い出すことができた・・・離れにある倉庫の中だ。

 スマホを明かりに玄関先においてある倉庫のカギを持って離れにある倉庫へと向かう。ギシギシサビてきしむ扉をゆっくりと開けてお目当ての災害用袋を・・・ロウソクを探す。

「んーーー・・・ロウソクちゃん・・・ないなあ・・・ここじゃなかったかなあ」
「ロウソクをお探しですか?」
「そうなんですよ、ロウソクが欲しくってぇぇぇぇぇえぇええ!!!!」

心臓と一緒に魂まで飛び出さんばかりに驚いた。いつの間にか僕の隣には燭台のようなきらびやかな足腰にロウソクのような白い身体つきをして、肩には荘厳なマントを羽織っており、頭にはゆらりと風にそよぐ火を灯した僕よりも背の高いお姉さん・・・?が立っていた。

「こんばんは、私はキャンドルガイストのコーデリア・・・もしも私でよろしければ明かりになって差し上げましょうか?」
「キャンドルガイスト・・・ああ、この辺でも最近見かけるようになった魔物娘さんか・・・ぜひお願いしたいところでもありますけど・・・いいんですか?」
「私こそ頼みたいところなのです、どうかこの一晩だけでも私を使ってはいただけませんか?決して後悔はさせませんので」

 僕の手を取ってぐいっと顔を近づけながら頼み込まれてしまう。無表情ながら、あまりにも整った美人なお姉さんにこうまで言われては首を縦に振るしかなかった。

 とりあえず一緒に家の中に入ってリビングへと座ると当然のようにコーデリアさんは隣へ座って僕の右腕にぎゅっと抱き着いてきた・・・あまり直視しないように気を付けていた豊満でしずく型のようにたゆんっとしているおっぱいが押し付けられてドキマギしてしまう。

「あ・・・あの・・・コーデリアさん・・・いきなり腕に抱き着いてくるのは・・・」
「お嫌でしたか?」
「い・・・イヤそんなことは無いけれど・・・」

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