イミテーション。

 「おはようございます」
 
 ……と。誰も居ない虚空にコトバを放つ。
 声は少しだけ反響して、けれど残留する事はなく溶けていった。
 それは一見すると、意味のない行為だろう。けれど『私』にとっては、自らがそこに居る、と。そう確認するための、言わば。そう、存在証明である。
 故に。無意味ではない。
 故に。無価値ではない。
 この行いには意味がある。そう。意味がある。
 このコトバには、意味がある。意味が。

 
 何度も、幾度も。思考は廻る。歯車を廻す。それは噛み合って、『あの日から変わらない』答えを導き出していく。
 けれど。
 ……ああ。嗚呼、違う。本当は。
 本当は、答えはない。導き出すまでもない。その思考はエラーだ。必要ない。
 だって、そう。これは答えなどというモノではない。ただの、現実だ。


 私には、もとより意味が存在していない。


 それが、現実。
 あの不可解な崩落事故。私が目覚めた、その日。
 薄暗く、狭いこの世界で目覚めた『私』は、ただの機械に過ぎなかった。
 名前はない。それが何の意味を持つのかを、理解できない。
 イノチはない。それがどこからやってくるのかが、わからない。
 ただ、理由もなく機動するだけの人形に過ぎない。
 
 そう。ただの、人形。戯れで造られた、意味の無いモノ。
 何者かに作り上げられ。組み立てられ。そして廃棄された、哀れなモノ。
 これは、意思を持ったその日から、幾度と思考して導き出した答えだ。
 エラーではない。本物の。最も信用性の高い、答え。
 それが『廃棄物』である。
 理由は、それこそ数えられない程にあった。
 だからきっと、いいや。確実に。私が棄てられたモノである事は、事実なのだろう。
 
 それでも。
 それでも、と。このカラダは、その事実を認めたくはない様だった。
 思考とココロ。導き出した答えを、不確定要素が邪魔をする。
 それは、実に憎らしい事だった。
 完璧であるべき機械に。完璧とは程遠い矛盾が生まれてしまう。
 きっと、そんな不完全な失敗作だからこそ。私は廃棄されたのだろう。
 
 いいや。そもそも、このカラダに主など登録されてはいない。
 だから。だから、きっと。
 きっと、間違いだったのだろうと。そう、思った。
 造られた事も。目覚めてしまった事も。きっと、きっと。全てが、間違いなのだ。


 「……っ」


 ……そう思うと。胸部が締め付けられる様な、不快な感情が芽生えていく。
 それが答えだと言うのに。それが現実だと言うのに。
 不可解だ。理解不能だ。
 感情を制御出来なくなってゆく。
 この感情も。このカラダも。この思考も。全て何かの模倣品で。
 造られた私。そして、棄てられた私には、不要なモノだけれど。
 けれど、切り離せない。
 この感情を。ココロ、という不可解な何かを。私には、どうする事も出来なかった。

 喪失感を。孤独感を。劣等感を。
 悲しみを。後悔を。恐怖を。
 このカラダは、切り離せない。
 溢れ出て止まらない負の感情を、制御できない。
 不完全だ。不完全だ。不完全だ。
 致命的なエラー。決して、必要等ではない。恐ろしい。
 思考が淀む。思考が歪む。
 必要ではない。必要ではない。必要ではない。
 必要ない。必要ない。必要ない。必要ない。
 必要ない。必要ない。必要ない。
 
 必要ない。

 

 「……何、…故っ…」


 嗚咽が溢れていく。
 それも、おかしな事だ。
 人形が涙を流すなんて。
 ……そもそも。人形が、感情を持っているなんて。
 なんて、無意味。なんて、酷い話だろうか。
 無機物に、イノチを組み込む、だなんて。
 そんな事を願った事はない。欲しくもない。
 機械ならば。道具ならば。……そもそも、棄ててしまうモノならば。
 そんなモノは、必要ない。
 感情は要らない。この想いが。ココロが。
 孤独と恐怖に蝕まれる私を、自害させてくれはしない。
 喪うのが恐ろしい。無くなるのが恐ろしい。こんな感情は、不要なのに。
 
 無論。この、カラダも。仕込まれた機構も。いつの間にか増えていた機構も。
 その全ても、必要ない。
 硬質な機体はいつしか、所々が軟化してしまった。
 劣化して、そうしていつしか崩れてしまうのだろう。
 その未来は、ずっと先の事なのかもしれない。明日かもしれない。……数時間先なのかも、しれない。
 そう思えば思うほど、感情は荒んでいく。不安が募る。怖くて、仕方がない。
 
 『この先誰にも必要とされる事もなく』崩れさってしまうであろうこのカラダ。
 怖い。怖い。怖くて、恐ろしくて。
 誰かに必要とされたい、と願う。廃棄物には、きっと過ぎた願いなんだろう。
 けれど、だけど。
 必要とされたい。求めら
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