そのさんじゅうよん

魔をもって魔を制する。

天におわす神々にも、あまたの聖なる存在にも、正義の味方にも頼れないどころか
蛇蝎のごとく嫌悪されてるのでそれしか他に選べる道がない。
どのような道かというと内輪揉めの危険性を孕んでいる足引っ張りだ。
かなりの金銭と資源と人員を浪費してあんなモノをこしらえた
今となっては中止などできるわけもなく、後に退けないのである。
「してもいいけどね、中止」
「そうなの?」
ヘリィの返事はあっけらかんとしたものだった。
「お姉様にぶつける前なら魔王軍の巨大魔法兵器というコンセプトで使用できるし。
ぶつけた後なら絶対に言い訳できないからムリよ」
「ぶつけてからしらばっくれるほど図々しくはないか」
「適当に理屈こねてうやむやにできないこともないけど……百年単位で恨まれそうね」
「そんな長期的に敵意を向けられるのも困るな。何かと支障をきたしかねない」
地味に悪影響がありそうで嫌なんだよなデルエラにガンつけされるのは。
射精時にほとばしるあのたまらない快感が減衰するとか
後背位で腰を打ちつける時のスピードが遅くなるとかありそうで困る。
そうなると愛の女神にでも解呪してもらうしかないので今のうちに崇めておくか。助けてエロス様。
「お姉様の敵意くらい何てことないでしょ。教団も恐れる『勇者喰い』なんだから」
苦い顔をした俺に魔王の娘がきつい軽口を叩いてくる。
「いにしえの大いなる魔物ともあろう者がリリム一人の憎悪を
受けとめられなくてどうするの。涼しい顔で平然と受け流すくらいしなさいな」
「やめてくれヘリィ。その冗談は俺に効く」
気安くいじっただけのつもりだろうがなかなかげんなりしてしまう。人間扱いされるのは
もう諦めかけているが、せめてインキュバス扱いくらいはしてほしい。
世界のみんな、俺に人権をわけてくれ。
「そういえばハートの女王はどうなったんだ」
気が重くなってきたので話題を変えることにする。
「私もその件にはあまり触れたくないんだけど、姉妹たちに聞いた話だと
何日か椅子に座るのが困難だったほどお尻が腫れてたそうよ」
どんだけ叩いたんだあの長女。
「リリムってのはみんなその場の勢いと直感で生きてる種族なのか?」
前々から思っていた疑問をぶつける。
「そう言われるとムッとするけど……まあ、魔物娘だからね……反論しづらいわ。
とはいえ、念のために言っておくけど、私ほどではないにせよ
沈着冷静なリリムも姉妹にはいることはいるわよ」
あんなずさんな計画に嬉々として乗っておいてよく言えるものである。
「穏健な部類なのは認めるが…」
「私は姉妹達の中でも、もっとも思慮深いからねー」
傍らに控えていたミネが、ほんの一瞬、表情を歪ませて主の発言を否定した。
おそろしく速い失笑。俺でなきゃ見逃しちゃうね。
「どういう路線でいくにせよ、満足いく結果がでてほしいわね。
無駄な血をできるだけ流させないためにも」
絶対に流させない、ではなく、できるだけ流させないというところが現実的で好ましい。
完璧な理想を追い求めても派手にすっ転ぶだけだ。かつてのこの国のように。
「犠牲は避けられないか」
デルエラのように圧倒的パワーで強引な手を使えば無血も可能だが
それをやれば反魔物派や教団はますます意固地になってなりふり構わなくなる。
どうしたものやら…………。


〜〜〜〜〜〜


外とは比べ物にならない濃度の魔力が内部でわだかまる王城。
かつては王族の住居だったが、今は誰もが知っての通り我が家である。住む家もなく
教会兼孤児院で暮らしていた俺の自宅がレスカティエで一番有名な建物になるとか
運命は悪ふざけしすぎだ。
「んぅうっ、あっ、あんっ、んあああぁ……」
廊下の石床に豊かな胸を押しつけ、緩慢に頭を振りながら呻く、一人のサキュバス。
俺は、寝バックの体勢でそのサキュバス――マリナの尻に腰を打ちつけ、
入れれば入れるほど癖になる魔性の穴の感触を楽しむことにのみ集中していた。
……やるにしても少しは場所を考えろ馬鹿、と言われそうだが
『魔物たちがベッドにしないのは天井くらい』という笑い話があるように
魔界と化したこの地では特に珍しい事ではない。なおアラクネ系は天井も使う。
珍しいのは、マリナではなく、俺がこれを望んだということだ。
混乱と淫猥で塗りたくられたあの不思議の国から戻って以来、俺はどうも性的におかしい。
セックスへの抑えがきかないというより
ハードルが下がってきている。ささいなきっかけで嫁達を抱きたくなるのだ。
会話しながら胸や尻をこねくるのも日常茶飯事。
最近では、孤児院の様子を見に行ったとき、子供達に何か教えてたのか
前かがみになって話していたサーシャ姉のお尻を、ついつい甘噛みしてしまった。
その後、興奮したサーシャ姉に懺悔室に引っ張り込まれる
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