〜〜これまでのあらすじ
「今、我々の目の前でデルエラ様と交戦しているあの若者は誰なのかね」
「ご存知、ないのですか!?
彼こそ下級兵士からチャンスを掴み、覇王の座を駆け上がっている
超時空インキュバス、勇者喰いさんです!」
「止めなくていいのか?」
「関わらないほうがいいです!」〜〜
世界は混沌としている。
かつて、ジパング等ごく一部の地域をのぞいて、決して相容れない存在であった
人間と魔物。深刻な問題や流血の惨事を生みながらも
今ではその二種が融和するのが個人レベルから国家レベルでまで可能となった。
しかし、融和といっても、一方がもう一方をほぼ完全に取り込んでしまうケ−スも少なくない。
それが魔界化という現象だ。
俺が居を構えるこのレスカティエも、その一つとして
世界的に有名である。つまり反魔物派からはこれ以上なく
忌み嫌われているわけで、その憎悪を打ち消すのは天地がひっくり返ろうが無理だとしても
どうにかしてよそに逸らせないものだろうか……。
ここは魔界の第四皇女にでも一手に引き受けてもらいたいのだけれど、それは
あの女の暴走を見てみぬフリをすることに繋がるので困る。人と魔が緊張緩和しつつも
デルエラへ恨みが集まるしかけを構築できればよいのだが。
揺るぎないトップがいれば二番手につけていても安心できるからな。
……そこで一つ思いついたのが、強力な手駒を作って
『ここが襲われそうだな』という雰囲気がプンプンしている場所へそれとなく送り込むというものだ。
理想としては被害が出ることなくデルエラが大暴れして
終わってほしい。だから被害を抑えるための堤防役が必要になる。そのための手駒だ。
となると、手駒には、術者の意のままに動く
自我のない魔法生物系が適任だろう。当然だがそれを動かすのは現地の反魔物派ではなく
俺の息のかかった者だ。奴らに譲渡などできるわけがない。
操縦役にウィットかミリュスを派遣して
適当にデルエラと一戦交えさせ、キリのいいところで撤退させればそれでよい。
下手にやりすぎてリリムの本気を出させたらまずいし
ゴーレムを壊されても修理が大変だ。
秘密裏の計画なので材料費を大っぴらに請求できない以上、できるだけ節約せねば。
なお、どうしても衝突がおきそうになければ
こっそり火をつけるのもやむなし。自作自演すぎるとは思うがこれも平和のためなのだ。
〜〜〜〜〜〜
――そして、俺があれこれ動くとまた嫁達に高飛びを疑われそうなので
代わりにミミルに秘密兵器の製作を丸投げもとい一任してから二週間がすぎた。
「…ここか」
レスカティエのサバト支部が所有している建物の一つ。そこに俺はミミルに案内された。
内部ではゴーレム達が作業を行い、サキュバスや魔女達が細かい指示を出している。
いずれもヘリィの息のかかった穏健派だ。ミミル一人では手に余ると判断して
ヘリィに打ち明けたところ、こちらに彼女らを派遣してくれたのである。
『口の堅さは文句なしよ』とのことなので情報漏れもあるまい。
「まだ細かい調整が済んでないけど〜〜、とりあえず完成したよ〜〜」
と言って小さな指を鳴らすと、巨大ななにかを覆っていた
布が外され、その全貌が明らかになった。
そこにいたのは――本来の想定よりサイズがはるかに違う人造の巨人だった。
「…………ミミル」
「なぁに〜〜?」
「コレなんだか、ちょっと、大きすぎないか?」
どう考えても予算オーバーである。いったいどこから追加費用を捻出したんだこの娘は。
「それには理由がありまして」
緑髪にアクセントのように白いアホ毛がついたサキュバスが
眼鏡のずれを指で直しながら俺とミミルの会話に割って入ってきた。
「当初の材料費では完成させたところでデルエラ様と一分も戦えないものしか
出来上がらないという結論になり、それで我が主が資金をお出しになられたのです」メガネクイッ
「すっごい太っ腹だよね〜〜〜〜」ショクシュクイッ
真顔で股間の触手をずらすな。
「魔王様のご息女であるあのデルエラ様を押さえ込む存在を
造るとなれば、金に糸目をつけてはいられません」
「それはわかるが、ちと、惜しみなさすぎはしないか?」
「未来への投資も兼ねていますので」
つまり、それだけヘリィも関心を抱いているということか。
今回のプランがうまくいけば第二号第三号の製作も視野に入れている可能性は大だ。
「名づけて『イビルクロス』〜〜。
いい名前でしょ?大いなる力を秘めた魔の十字って意味を込めているんだよ〜〜。
…………ボディの刻印は教団の聖十字なんだけどね」
それが気に入らないらしくミミルは嫌そうにしているが、これを教団の秘密兵器か
反魔物派の刺客だと目撃者に思わせるには必要なポイントだ。細かい努力が実を結ぶ。
「まあ名前や見た目はそれでも何
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録