そのさんじゅうに

〜〜〜あいまい人物紹介〜〜〜
あなた=「風評被害ひとつでダウンさ」

ハートの女王=「このイカレタ世界へようこそ」
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『おいおまえ、俺の素性を言ってみろ』と質問したら
誰もが『レスカティエを支配する勇者喰い様です』などと答えかねないクソ展開に
眩暈がして、年配の兵隊長のあくびが出るほどありがたい長話に耳を傾け続けて
貧血起こす若手兵士みたいにフラッと倒れてしまいそうな、そんな悲しいおやつの時間。
誤解と捏造がもうどうにも止まらない状況がこのまま延々と続けば
単なる下級兵士だった俺の歴史が偽りになりそう。
「どこで道を間違えたんだろうな…」
たぶんインキュバス化の秘薬をガブ飲みして逃走したあの一件からだと思うが
あの場合はああでもしないと切り抜けられなかったわけで、今みたいに開き直って
「人間やめるのも一夫多妻もおk」という境地に至ってなかったので
どうしてもやむを得なかった。
「百年くらい生きればそんなの気にならなくなるですよ」
「そりゃあ人間がそれだけ長く生きたら達観もするだろうさ。
けどな、嘘が真実扱いされて、自分の本当の人生が『なかったこと』にされるのは
何百年も生きたとしても苦々しく心の奥に残るもんだと思うぜ?」
「ずっとセックスしてれば気にならなくなるですよ」
「死ぬまで現実逃避してろっていうのか」
「逃避ではないです。あるがままの今を受け入れ、愛する者との幸福に満ちた交わりに
真摯に没頭して、底の見えない快楽の深遠へと沈み込んでいくのです」
「それを世間では一般的に現実逃避って言うんですがねぇ?」
「ここでは言わないんですぅ〜〜。わかりますぅ〜〜?」
どうしよう。殴りたい。
「それはともかく、元の世界の様子が怖いな。
俺が高飛びしたと勘違いされてそうだ」
今頃マリナ辺りは鼻息を荒くしてレスカティエ中をしらみつぶしに探しているのではないか。
「見てみるですか?」

ぽんっ

女王が何もない壁を指差すと、そこにピンクの煙と共に大きな鏡が現れた。
「音もちゃんと聞こえるですよ」
鏡の端っこにある丸い部分に女王が手を伸ばす。指でつまんで
ゆっくり時計回りに動かしていくと徐々に音が大きく聞こえてきた。


……ザザッ、ザザザザ………………ッ
『…転移魔法を使った形跡もないよ〜〜。てゆーか、この王城では
そういうの使って出たり入ったりできないように術をかけてあるから、やろうとしても
並大抵の術者ではとうてい無理なんだよね〜〜』
『じめんをほったのかな』『あはは、もぐらさんだねー』
『調べてみたけど、掘り返した痕跡はないね。城内はどこもかしこも石畳だし……わぅう…』
『それでもいなくなったのなら何か方法があったに決まっています。
絶対に見つけ出して首根っこを掴んで連れ戻し、サーシャさんのマジ長いお説教を聞かせて
具合が悪くなるほど後悔させてあげなければ』
『……マリナさん、間接的に私のことまで非難してませんか……?』
ザザザッ…………


「お前どうしてくれるの。あのクソ長い説教聞くのまじで嫌なんだぞ」
「うんうん、わかりますよ。
私も一番上の姉のアホ長いお説教が本当にきつかったものです」
腕を組んで何度も頷くハートの女王。後先考えないお気楽な言動から察するに
親や姉から説教された回数は三桁いってそうである。
「説教って途中から内容がループするんだよな。言い回しが多少代わる程度でさ」
「ヘマや悪さをしでかした者に言い聞かせるのが
目的というよりも、言ってる本人がスッキリ満足したいのが本質ですから仕方ないです」
「まあ、じっと耳を傾けて神妙な顔してれば大抵それで済むんだが」
「なら今回もそれで大丈夫ですね。
安心して彼女達に怒られるといいのです」
大丈夫も何もお前を差し出すんだがなという言葉を
青色に発光している不気味なシャンパンと共に俺は喉の奥に飲み込んだ。
俺がいなくなったのが向こうで判明した以上そうするしか丸く治める方法はない。
そしてお前をかばう義理も義務も利益もない。こそ泥リリムが誘拐犯リリムになっただけだ。
「うーん、やはりスイーツはとっても最高ですー!」
今はただ幸せそうに好物をムシャムシャがっついているがいいさ
桃色ロリさん。いずれピンクフロイドになる。

『わたくしのかわいい触手たちにも気取られずに
消えるなんて、奇怪極まりないですわね。どのような手を使ったものなのでしょうか……』
『……壁や窓をぶっ壊した跡もないしなぁ……。
くそっ、今度からは常に誰かがアイツと繋がっていたほうがいいかもしれねぇな』

「やはり男女が結合してるのが魔物のあるべき姿ですからね。
乾く暇がないどころか昼も夜も濡れ濡れでいいのです」
鏡の向こうでぼやく教官の意見にハートの女王が親指を立てて笑顔で評価した。
「年がら年中
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