臆病な者は命を残し、勇敢な者は名を残す――という言葉がある。
勇気の素晴らしさと危険さを簡潔に表した名言だ。
だからといって勇敢な者が例外なく人々の記憶や書物の中に残るのかというと
一部を除いてほとんどの者は忘却のかなたに消え去っている。
知名度の多寡はさておき、歴史に刻まれるような
インパクトをこの世に与えた英雄や勇者は、ごく一握りだけなのだ。
マリナも本来ならその一握りに選ばれてしかるべき勇者だったのだが
サキュバスとして第二の生を謳歌していることが周知となって、落選した。
もはや教団からの認識は悲劇の勇者ではなく卑猥な勇者だ。
当の本人は毛ほども気にしていないが、生きている偶像を見るように
マリナを見ていた熱烈なファンに与えた衝撃はでかすぎたらしく、
『あれは勇者ウィルマリナの残骸にすぎない』
などと健気に思い込もうとしても、やはり実際に目の当たりにすると、淫らに
おとしめられた聖なる乙女というのは教団の倫理に凝り固まった者たちには
おぞましくも魅力的で仕方がないのか、ほとんどの者が
積極的なアクションを放棄してその場で脱力してしまうみたいである。
長々と語ったが、要するに、あんな風になるということだ。
「やめて、やめて下さい、こんな……あぁ!」
「あら、嫌がる割には乳首がこんなになってますよ。うふふ……」
カプッ
「ひぃ!?」
「敏感ですね。嬲りがいがあるというものです」
「だめ、やめ、やめて、勇者さまぁ…。なんで、どうしてですかっ……」
「まだまだですよ。じっくりと快楽の味を教え込んで
男の人のたくましいチンポを、心の底から渇望させてあげます」
「そ、そのような、下品な言葉を、ウィルマリナ様の声で、い、言わないで…」
「ふふっ、いずれは貴女も連呼するようになりますよ。
『もっと後ろから激しく突いて』『おっぱいにもぶっかけて』
『朝も夜もオチンポを食べさせて』『精液をたっぷりちょうだい』ってね。
うふふ、あははは、あははははははっ……」
楽しげですな。
そして隣の部屋ではデルエラが立ったまま自分の股間をいじくって
艶っぽい吐息をもらし、素っ裸で拘束されて座り込む全裸の敗残兵の
そそり立つ肉棒にポタポタと蜜をこぼしては射精させている。
身動きが取れない者に水滴が一定のリズムで落ちるようにしておくという
拷問があると聞いたのを思い起こさせる光景だった。
「…んふ、魔王の娘のオナニーなんて、滅多に見れるものじゃないわよ…。
しかもこんな……特等席で、見物できるのだから、んくっ、光栄に思いなさい」
「…や、やめぇ…やめへふれぇ…………」
朦朧としながらもまだ拒絶の言葉を吐ける気力が残っているようだが
救いのないこの状況では苦しみが続くだけでしかない。
俺は扉の隙間から顔を離し、覗き見をさっさと切り上げて
マリナ達の元へと戻ることにした。
「……覗きなんて、あんまりいい趣味じゃないと思うけど?」
前方の曲がり角から、俺に痴態を覗かれていたリリムが軽い口調で咎めてきた。
「なん…だと……」
ついさっきまでデルエラがあの部屋にいたはずなのにいた、という
歴戦の騎士でも困惑するであろう奇怪な事態が発生している。
「…ああ、あっちは俺が作ったコピーか」
しかし頭の回転がすごぶる速い俺はすぐさま正答を導き出したのだった。
「あの子達にはフェイクで十分よ」
「確かに本物ほどじゃないとしても十分な致死量はありそうだな」
「どういう意味かしら」
デルエラのこめかみに青筋が浮かんだ。
「はぁー……演舞じゃあらへん、ほんまの真剣白刃取りや。
実戦で使こうてるの初めて見たわ……」
ギギギギギギギ……
「見てないで止めてくれ」
「今宵ちゃん、おとなしくそこで見ていなさい。このまま押し切るから」
「こないだ俺を上下に分割しといて今度は左右か?
てっきり前回で懲りたものだと思っていたがな」
「貴方も耳障りな失言を吐くのを懲りてないようだし、おあいこよ、おあいこ」
「喉元過ぎれば――ちゅうことやな」
ギギギギギギギ……
「だから止めろと」
「止めたいのなら、せめて私の剣が床についてからにしなさい」
「それだと後のカーニバルだろうが。だいたいだな、いつも思うが
お前の攻撃は非道すぎる。リリムなんだから、痛みや外傷はともかく、
命に関わる怪我を負わせないような魔力を武器や魔法に帯びさせられるはずだぞ」
「魔力がもったいないわね」
「その無駄にでかいケツを置いてるだけの魔力がか?」
「瑞々しさがありながら同時に熟れてもいるケツといいなさい」
ギギギギギギギ……
「ケツって物言いは訂正しないんやな………………あ、マリナや。
血相変えてこっちにダッシュしてきよるわ」
「ちょっと何やってるんですかああああぁぁぁ!!?」
やっと水入りとなった。
「あ
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