石造りの天井からポタリポタリと水滴が落ち、濁った空気の流れる地下迷宮。
なぜか俺はそこにいた。
「はー………………まさか、魔物になってからも
ダンジョン探検するやなんて、夢にも思わへんかったわぁ……」
「うえ〜〜、じめじめしてて気持ち悪いね〜〜」
「……なんで俺まで付き合わなきゃならんのだろうな」
「あははは、もう一蓮托生だよ〜〜〜〜〜」
「その口をパッチワークしてやろうか?」
「まあまあ、ええやないの。マリナたちには気づかれてないんやし、
さっさと目的の物を見つけて戻れば、何の問題もあらへんよ」
――さて、どうして俺とミミルと今宵が三人パーティで
こんなところにいるのかということだが。話は数時間前にさかのぼる。
〜〜〜〜〜〜
「おいそこの二人、なにコソコソしてんだ?」
「あっ」
「あやや、見つかってしもた」
誤解が解けなかったため、いまだに頻繁に歯軋りをしながら殺気を撒き散らす
魔界勇者ウィルマリナさんをなだめていた俺と嫁達であったが、
『とりあえず今日のところは、各自、個室で休みましょう』
というサーシャ姉の妥協案に従い解散した。
…したのだが、なぜか今宵とミミルの二人が
自分達にあてがわれた部屋へと行かず、屋敷の裏口へと向かっていくので
俺はつい声をかけたのだ。
「…どないする?」
「そ〜だね〜〜………この際、おにいちゃんも引き込もうか?」
「おまえら、何の相談をしてるんだ?
なんとなく嫌な予感がするんだが」
と言うと、ミミルは一枚の羊皮紙を俺に突きつけてきた。
「なんだこりゃ」
「ウチらが察するに、どうやらこの都市の地下遺跡の地図…らしいんや」
俺たちの足元にそんな過去の遺物が眠ってるというのか。
「あのね〜〜〜可愛いミミルちゃんが暇つぶしに
ここの魔術学院の蔵書を読みふけってたら〜〜〜偶然見つけたんだ〜〜〜」
「可愛いとかいちいち言わなくてもいいだろ」
「そっかぁ。言わなくても見ればわかるもんね〜〜〜〜」
「ウザっ」
「俺はもう慣れたよ。……で、なんだ?
もしかしてそれに財宝の類でも記されているのか?」
「察しがええなぁ。さすが旦那様や。
この子の話じゃ、なんでも、今はもう使い手がおらんくなって久しい
古代の魔術に関わる書物があるとかなんとか…」
「ん〜〜〜〜、どんな魔術かまでは不明なんだけどね〜〜」
ほう。性欲しか頭になくなってるものかと思ったが、そうでもないのか。
さすがは魔術と符術のエキスパートたちだ。
「やらしいことに応用できたらラッキーかなって。えへへへへ〜〜〜」
「というより、できなかったら無駄骨やね。
ヤギの餌にするか燃やして暖をとるくらいしか使い道ないわ」
ああ、やっぱ性欲第一なんだな。感心して損した。
〜〜〜〜〜〜
というわけだ。ヤブヘビすぎる。
「そ〜いえばさ〜、結局、そのリリムさんってさ、なんでおにいちゃんに
チョッカイかけてきたの〜〜?」
「ああ、まだおまえらに言ってなかったな」
この件についてはサーシャ姉と教官にしか話していない。マリナをなだめるのに
手一杯で、全員に教えている暇が無かったからだ。
なので俺は二人にあのエロ喫茶での経緯を簡潔に説明することにした。
宿泊している屋敷に戻る道中で妄想嫉妬勇者にも一応は説明したのだが、
全く耳に入っていないようだったのでノーカンである。あの性格どうにかならんかな。
「……という感じの会話をしたんだ」
「うわぁ………………えらい厄介な頼み事やないですか」
「責任が増えるよ。やったねおにいちゃん!」
おいやめろ。
「当面の予定としては、基本は傍観。デルエラが本格的に動いたら
ヘリィか穏健派にでもリークするということでいく構えだ」
「ほな、レスカティエが攻められたら?」
「それは撃退せざるをえんな。あくまでも、魔物のほうから
積極的に攻めにいかない姿勢をとりたいんであって、別に非戦方針ではないし」
「中途半端な応対だね〜」
「俺の立ち位置がそもそも微妙なんだから仕方ないだろ。
板ばさみの状態で確固とした応対なんかできるか」
「強いんやから力にものを言わせればええんちゃうの?」
豪快というか乱暴な意見だな。
「旨みが全くないのにそこまでやりたくねーよ。だからといって
適当に流すには重大すぎる話だし…………困ったもんだ」
「よっ、苦労人〜〜」
「ははは、しばくぞガキ」
なんか疲れてきた。気分転換にカバンの中の酒ビンをラッパ飲みしよう。
「また飲んでるし……。そうやってすぐ酒に逃げるのはあきまへんよ?」
ドミノ倒しのごとく苦悩がやってくるのに飲まずにいれるか。
「んじゃ、ウチらも休憩がてら、旦那様のミルクでも飲みますか」
「わ〜〜〜〜、だいさんせい〜〜〜〜〜〜〜〜」
えっ。
ええっ。
「ぺろっ、れろれろ、ちゅっ。んあぁ、おいしい、ちんぽおいひいぃ
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