霊たちの依代「祟りハジマタ」

「……どこから突っ込んだらいいのかわからんが、とりあえず説明してもらおうか。
まず、その黒い娘は誰だ」

「えーとね、この子はドッペルゲンガーのメナちゃん。
いつも気弱そうな顔してるけど、笑うとすっごい可愛いのよー?」
「はうう……そんなこと言われたら、ぼく、恥ずかしいですよぉ………」
「ほら、笑ってみなさい」
「は、はひっ!
………………こ、これで、いい、ですか……?」
「いや笑いってそうやって強制的にやらせるもんじゃないから」


「そこでフワフワ浮いてる青いのは?」

「彼女は狐火のホムラ。先月あたりから旦那さんとこっちに移り住んできて
森に住居を構えた稲荷のアヤメさん、知ってるでしょ?
彼女が、ついうっかり作り出してしまったんだって。困っちゃうわよねー。
ちなみに二人を命名したのはわたしよ」
「こんにちは」
「あ、どうもこんにちは……っておい、それって問題だろうが!」
「いまさら手遅れよ」
「ておくれって、なに?」
「生まれてきてくれてありがとう、って意味よ」
「ふーん」
(なんだろう。ここで訂正しておかないと、この子が後々
とんでもない失言をしでかしそうな気がする)


「最後にお前だが………なあフェリネス、ゴーストになってるのは
その見た目でわかってるからさ、なんで自殺なんかしたのか、それを教えてくれないか?」

「うぇ?わたしが?
…………………あれよ、剣の勝負に負けてキノコ鍋を泣きながらヤケ食いしていたら
その中にどうやらオーガキラーや暗闇シメジが混じってたらしくて、それが見事に
当たっただけなんだけど、自殺扱いになってんの?マジで?」
「マジだ。いやマジかよそれ?自殺じゃないの?
つーか、間違えやすいキノコでもなかろうに、なんでまた」
「いやー、キノコの見極めは得意だったんだけどねー。
冷静さを欠いたまま収穫していたのが敗因だったのかな。あははは」
「笑い事じゃねーよ。
……勝負って言ったな、それってもしかして相手はアンダムか?
よくお前はあいつに突っかかっていたよな」
「ぎくっ」
「あいつなら、お前が死んだ後すぐに町を出たぞ。
誰にも何も言わずにこっそり出て行ったから、なんかおかしいと思ってたんだが、
もしかして、自分が痛めつけてプライド砕いたせいで自殺したんだと解釈して
ここにいることが苦痛になったんじゃないのか」
「えええええええええ!!
ど、どうしよう!?」
「いまさら手遅れだ。どこに行ったのかわからんし。
まあ、お前のせいじゃないし、あいつのせいでもないさ。幸運でも祈ってやるんだな」


「――経緯はわかった。で、なんで俺の家に来た」

「なんとなーく推測できないかなー?」
「……できるが、したくないんだけど」
「幼馴染を成仏させたくないの?
あなたってそんなに非道で外道な男だったのね……しくしく」
「死んでもウザイところは変わらないんだな。
あのさ、そもそもゴーストが成仏した類の話はまったく聞いたことがないんだが」
「だからわたしが初の成仏をなしとげるゴーストになるのよ。
いいから黙って協力しなさいってばー」
「エロ関係以外ならしてやる」
「なんだと」
「なんだとじゃねーよ」
「じゃあ………………えっとね、いっぱい可愛がって」
「言い方変えただけだろうが!」


バァン!!


「ひいいいいいっ!?
怖い怖い大きい音怖いいいいいい!!」
「今度はいったい何事だっ!?」

「ようやく見つけましたわ……」

「あれっ、あのお姉さんも、青いや。あたしといっしょ?」
「違うわよホムラ。彼女はたぶん…ゆきおんな。
ジパングに生息するっていう、氷の精霊の一種よ」
「誰か探してるようだが…」
「お久しぶりですわね、クーレットさん。わたしのこと、覚えているかしら?
あなたの好敵手だったこのユキネを」
「人違いです」
「うふふ、相変わらず冗談がお好きなのね。わたしは覚えていますわよ。
まだわたしがゆきわらしだった時、あなたに雪合戦で、見事に完敗した屈辱をね」
「…ああ……そういやガキの頃に
親に無理やりジパングまで連れてかれた記憶があるなあ。
幼い頃から見聞を広めるのはいいことだとか何とか言われてさ」
「いずれにせよ、本人か人違いか、確かめれば住む話ですわ」

ぴとっ

「冷たっ!」
「うふふ、やっぱりあの時の子ね。この温もり…懐かしいですわ。
さあ、あの時の続きをしましょうか。今度は雪合戦ではなく
ベッドの上での合戦になりますけれど。うふふふふふふ」
「何ですって!
なに勝手に乱入してわたしのクーを汚そうとしてんのよ!」
「俺はお前のものじゃねーよ!」
「あうう、ち、痴話喧嘩ですうぅ!修羅場ですうううう!!」
「じゃああたしも混ざる」
「混ざるな!
てめーらちょっと待てえええええええええええ!!」


――待って
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