・レベル0
――見慣れた夜景は赤く染まっていた。
街のいたるところで吹き上がってる炎によって。
親魔物派としての姿勢を頑として崩さなかったこの街へ、業を煮やした
教団の過激派が、焼き討ちをしかけてきたのだ。
魔物に対して別にどうとも思ってなかった、雑貨屋の下働きにすぎない
天涯孤独の14歳少年だった俺も、当然、その災禍を免れることはできずに
激しい炎にまかれて炭になるしか道は残されていないように思えた。
「………おい、大丈夫か!?」
まがまがしい鎧に身を包んだ、救いの道が現れなければ。
・レベル1
それから一週間がたった。街はまだ、復興の兆しすら見せていない。
「……ふん、よかろう。だが、私のしごきは厳しいぞ。
ただの少年にすぎないお前では、三日とたたずに根を上げるのが
オチだと思うがな」
灰にまみれていた俺を助けてくれた救いの道――首が外れる以外は
人間とさほど変わらない見た目の、デュラハンという魔物――は
「自分を鍛えてほしい」という俺の頼みを聞き入れてくれた。
今後もこんな目にあうかもしれないのに、何も対策を練らないのは
馬鹿げている。少なくとも己の身を守れるくらいの力は必要だ。
彼女――アレクシアは、デュラハンの中でも
将軍職を務めているほどのエリートだという話だった。
確かに、ただのガキにすぎない俺にさえ、その静かな迫力と
内に秘めた強さがビシビシ感じられる。凄いな。
…凄いのはわかったから、少しは手加減してくれないものか。
「どうした、もうダウンか?
情けないやつめ。まだ序の口だぞ?」
そんな酷い言葉をかけられながら俺は意識を失った。
・レベル4
「へえ、お前がアレクシアの弟子か。なんかひ弱そうなガキだなぁ。
なんでアイツもこんなのを鍛えてるんだか…」
汗だくで素振りをやってた俺のところにいきなり現れたリザードマンが
いきなり暴言を吐いていきなり木刀を向けてきた。
「あたしはクレーネ。
あんたは………そうか、ディオスっていうのか。よし覚えた」
この唐突な女性はどうやらアレクシアの同期で、同じく将軍らしい。
「将軍になったのはあいつのほうが先だったけどな」
やっぱりこの人も凄まじかった。
「おい、起きろって。この程度でへばってるようじゃ
あいつの修行メニューはとうてい消化できないぞ」
明らかにあんたのしごきのほうがきついと思いながら俺は失神した。
・レベル6
「あのアレクシアが弟子をとったと聞いたが、お主がそうか。
……なんか弱そうじゃのう」
今度はロリに悪態つかれた。
エニュと名乗ったこの幼女はバフォメットという強大な魔物で、
アレクシアやクレーネも、その魔術の腕前には一目置いているそうだ。
こんな見た目でも、一応は将軍らしい。
ところで、なんで喋り方が年寄りくさいんだろう。魔物の思考はわからん。
もっとわからないのは彼女からのしごきというか講義だった。
「……つまり、魔術の行使に必要不可欠な、魔力とは、魔物においては
文字通りのものじゃが、人間やエルフ、天使などにとっては精と……」
知恵熱で俺の視界は真っ暗になっていった。
・レベル12
三人の多種多様なしごきも、それほど辛くはなくなってきた。
いや、むしろちょっと物足りなさも感じる。
こっそり自主トレしておこう。
・レベル18
街は、焼け落ちる前と同じ……いや、以前にも増して
活気に溢れていた。その中には俺が働いていた店はなかったが。
「よくここまで頑張って私たちのしごきに耐えてきたな。
正直、お前をみくびっていたぞ」
「多少は肉がついてきちゃいるが、まだ見た目はひ弱そうだけどな。
けど、実力はあたしたちが保障するぜ」
「うむ、魔術の腕前も一人前のレベルじゃ」
実感ないなあ。
だが、これで三人のお墨付きも得たし、自分くらいは守れそうだ。
………………あれ?
守るって、そういえば、俺は自分を守ってどうするんだ?
俺の人生には何もないのに……はて?
・レベル19
再び街を襲ってきた過激派の連中をアレクシア達と共に撃退した。
高位の魔物なら返り討ちにしてインキュバスや魔物に変えるのだろうが
俺にはそこまでの力はなく、結果、片っ端から
なで斬りにしていくしかなかった。
で、初めて人を殺したのだが、思っていたほどショックはなく、
逆に、生きるか死ぬかの博打に勝ったという高揚感に俺は浸っていた。
……戦いって面白いな。
・レベル25
俺は故郷の街を離れ、魔王軍の一員として、ある反魔物国家の軍と
激戦を繰り広げている。
今では俺もそれなりに名が知れ渡り、反魔物派や教団の連中からも
『あざ笑うディオス』の二つ名でそれなりに恐れられるようになっていた。
何でも、俺に中部隊を任せてもいいのではないかという声
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