そのに

〜〜〜〜〜〜
『まるで黒い大輪の花が天空に舞っているようだ』
これが、魔力塊を使って飛行している俺を地上から見た
レスカティエの住人達の印象らしい。

なんか嬉しいものがある。


『天においては、見目麗しいメスの蝶を捕らえ、貪り嬲る闇の花であり、
ひとたび地に降りれば、恐怖と絶望の花園を咲き乱れさせる』
で、こっちが教団サイドの意見。

あながち間違ってはいないのが悲しい。
〜〜〜〜〜〜


風を切って飛ぶのは実に気持ちがいいものだ。
セックスや飲酒には及びはしないが、爽快感という点においては追随を許さない。

「本当に一人で行く気だったの?
護衛もなしとか、自分の力を過信しすぎよ。まったくもう」
ボンテージ姿のチョウチョが頬を膨らませ説教してきた。爽快感台無し。

「話し合いなんだし、下手に大勢連れて刺激したらいかんと思ってな。
それに俺一人で飛んだほうが護衛を連れてくより、はるかに速い」
俺の魔力塊の飛行スピードについてこれるのは、レスカティエ広しといえど
デルエラくらいしかいないからな。
「護衛はともかく交渉がねえ…」
「おにいちゃんは誰でもイラつかせる天才だけど、話をまとめるのは
苦手だもんね〜〜〜あはは」
尻尾の長いチョウチョと幼いチョウチョうるさい。
「だからこうして細かい決め事の書かれた文書を何枚も持ってきてるんじゃないか。
あとは適当に相手の話に合わせておけば問題ないはずだろ」
「嫌な予感しかしませんね」
最後におっとりしたチョウチョにまで言われた。

「まあ、苦手なのは否定しない。
正直来てくれて助かったとも思っている。すまんな」
俺は少し折れてみた。
「い、いいわよ。そんな。夫を助けるのは妻の務めでしょ?」
「ウィルマリナさんの言うとおりですよ。
そんな水臭いこと言わないで、ね?」
「そうか、やっぱり持つべきものは愛する嫁達だな、うん」
もうちょい折れてみる。
「お、おにいちゃんったらもう………」
「コラ、やめろって……我慢できなくなっちゃうだろ、バカっ」
面白いくらいデレるなこいつら。

「まだ着かないの〜〜?」
「レスカティエは広いからなぁ。そんな簡単には国境まで着かないさ。
…ところで、わかってると思うが、その触手をまともな衣服に変えておけよ」
「これじゃダメ?」
可愛く首をかしげ、ミミルがこっちを見つめてきた。
「交渉でマイナスにはなってもプラスにはならないだろうな」
「む〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
むーじゃねえよ。
「そういえば……」
俺はミミルをじっと見た。
よく考えたら、コイツが一番の問題じゃねえか。
頭が切れるから交渉にはうってつけだが毒舌振るわれたら全部パーだぞ。
誰かにお守りを頼むか?
「お願いしますね」
サーシャ姉に先手を打たれた。


ゴネる露出ロリをなだめすかして丸め込み、なんとか
ヘソだしミニスカ(ノーパン)で合意したり
俺がこっそり隠し持って飲んでた酒をマリナに見つかり没収されたりと
色々と揉めたりはしたが、特に遅れもなく、目的地である
レスカティエの国境沿いが見えてきた。
「時間にはまだ余裕あったな」
ポケットから懐中時計を取り出し、現在の時間をチェックする。
「どれ…」
俺は魔法で視力を拡大し、教団軍の様子を探ることにした。
「向こうは交渉を外でやるつもりらしいな。
地面に絨毯を敷いて、その上にテーブルと椅子が用意されてる。
…教団側の椅子にどっしり座っているのが、たぶん将軍だろ」
雲ひとつない晴れ晴れとした空の下で、これから冷めたやり取りを
嫌々しなきゃならんとか、やはりこの世はしょっぱい。
「罠の可能性あるんじゃない?」
「普段ならそうかもしれんが、今回はありえない」
なにせ、捕虜になってる兵の中には、教団内で
それなりの地位にいる司祭の一人息子がいる。
父の威光を笠に勝手なことばかりして、その結果、なんと
周りを巻き添えに囚われの身になるという快挙を成し遂げた高度なアホだ。
デルエラはそいつに勲章を贈るべきだと思う。
「元々この人質交換も、そのエリート一人を助けるために
そいつの親父であるお偉い司祭さまがゴリ押しして決まったそうだからな」
まともな兵士たちが能無しボンボンのオマケというのも不憫なことだ。
「おいしいリンゴいっぱいより
腐ったリンゴひとつのほうが大事なんだね。なんだか蛆虫みたい〜〜」
それ交渉の場で言うなよ。絶対言うなよ。

「…む?」
椅子に腰かける将軍や、その後ろに立っている騎士達、
さらにその後方に控えている大勢の下級兵士達をまじまじと観察してみる。
なんか、見たことある顔が…………
「…………うわ」
「しかめっ面してどうしたんだい?」
「熊さんいるんですけど」

エキドナになる前の嫁さんにビシビシしごかれる前に、短い期間ながらも
剣の扱いなどを教えて
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