そのじゅう

これまでのあらすじ
〜〜「ファファファ…ついに手に入れたぞ!
魔界を支配する偉大な力、リリムの力を!」
とか世迷いごとをぬかしてたら股間のロングソードが
驚くなかれグレートソードになっていたのでそれで初の肉弾戦に挑んでみると
『ノコ引き』や『スクリュードライバー』とか閃いたので
繰り出すと効果は抜群だ!ったりして快勝したら
おや、あなたのようすが……
……おめでとう!あなたはハンプティダンプティへとしんかした!
そして酒場にこっそり行ったら大目玉くらった〜〜

嫁達からの熾烈な罰を受け、ダメージは大したことなかったが
外見がすっかりボロボロになった俺は、ドワーフ製の丈夫な鉄檻の中に閉じ込められ
世界各地の親魔物国家や魔界からの来訪者たちの注目の的になっていた。
きっと俺のことを武道大会の景品だとでも思ってるのだろう。
ときどき『私のタイプではないな』『うは、アタシも大会に出ようかなぁ』
『じゅるり…やだ、いけない。ついよだれが』とかなんとか聞こえてくる。
おまえらの頭の中にはエロしかないのか………ないんだろうなぁ。
「なんで見世物にならなきゃいかんのだ」
俺は立ち上がると鉄格子をつかんで力無くつぶやいた。
傍から見るとかなり情けないんだろうな、今の俺。
「なっさけない顔だねぇアンタ。
…こんなのが景品とか、この国もずいぶんとシケてるもんだ…」
オーガにしてはやけに真っ赤な肌をした魔物が頭をかきながら
俺のほうに馬鹿にしたような顔を向けてきた。たしか、アカオニとかいう
種族だったっけ。今宵からそんな話を聞いたような。
「景品じゃねえよ!」
この辺で訂正しないとなし崩しに景品にされかねないので、
めんどくさいが否定してやった。
それと情けないとか言うんじゃねーよ…俺だって痛いほどわかってんだよ。
「…あれ?
それって…………もしかして」
その魔物――アカオニの持つ奇妙な形の物体に、俺の目は
釘付けになった。ジパングにいたとき何度も見た、ヒョウタンという名称の
水筒で、用途は主に酒を入れるものだったはずだ。ということは…
「ん?こいつを飲みたいのかい?」
アカオニがそれを軽く振ると液体の揺れる音がした。
「なら、ここまで来たらくれてやるよ」
赤い魔物はゲラゲラと笑い、周りの魔物たちも
ボリュームや口の開け方に差異はあれど、ほとんどが同じように笑っていた。
「ふーーーっ」
俺は鉄格子に向けて、闇のように真っ黒い息を吐いた。
すると当然だが、今まで俺をさえぎっていた鉄の番人達は
その闇を浴びるや否や、塵すら残さずに崩壊していった。

『!?』

言葉にならないざわめきが周囲に満ちていく。
俺は、顎が外れんばかりに大口を開けているアカオニの側まで行くと
ヒョウタンを受け取り、役立たずとなった檻へと戻った。
そして、かつて鉄格子だった破片を俺はいくつか口に入れると
豪快な音を立てて噛み砕き、さらに唾と魔力を混ぜつつ口内でこね、
それを何倍にも引き伸ばしながら口から出しては、鉄格子の消失した部分を
地道に補修し、最後の仕上げに熱風の息を吹きかけて頑丈に焼き固めた。
よし、元通り。
俺は出来栄えに満足してジパングの酒を胃袋に流し込んだ。
「仕事の後の一杯って、そんなに格別なんだ」
「そりゃもう」
「私はお酒って全く飲まないから、その辺よくわからないんだよね。
ねえ、そんなに美味しいの、お酒って?」
「まあ、味は当然として、それと同時に
酔いを楽しむ、もん、だ、よ…………………よ、よ、よ……」

「…そんなに好きなら、アルコールと結婚したらいいんじゃない?
ずいぶんと入れ込んでるみたいだし、幸せになれるわよ、きっと。
式には招待してほしいな。先妻としてスピーチしたいし」
俺は檻からは開放されたが今は石畳の上で正座し、
マリナに延々と説教と愚痴と皮肉を聞かされていた。
「そ、その辺で…」
おずおずとサーシャ姉が助け舟を出し
「サーシャさんは黙っててください。というか先輩がそうやって
甘やかすからこんな性格になったんじゃないですか?」
見事撃沈された。
「はいはい、時間がないからお説教はそのくらいにしなさいね。
続きは今晩にでも彼の上でやるといいわ」
まさかのデルエラ号がきた。なんか海賊船に救助された気分。
「そ〜だよ、もう来賓さんとかいっぱいきてるんだから〜」
正装のつもりか知らんが、サハギンが着ているような水着を
ミミルは着用していた。まあ、普段に比べれば何だってマシだ。
そもそもフランツィスカ様からしてあれだし。
「んじゃ行くか」
俺は、立ち上がりながら煙のような魔力塊で身体をまとい、それに
ボロボロの衣服を純白のタキシードに変えさせると
今度はその気体式魔力塊を漆黒のマントにして羽織り、適当に髪をなでつけた。
「行くって、行っても貴方のするこ
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