第9話 真実と進路

アリスティアが話し始めたことは、3人にとって衝撃的だった。

「まず、元々アンタ等をこっちに呼んだのはアタシ等のリーダーで、リリムって呼ばれてる魔王陛下の娘さんの1人でね。異世界人の召喚はうちじゃ何度かやってるんだけど、教団の奴等はよくそこに割り込んできて、あわよくばアンタ等みたいに召喚される人間を横取りしようってしてくるんだよ。おかげで折角召喚しても、何人かは変なとこに転送されちまうモンだから、その都度捜索に向かわないとなんなくてさぁ。アンタ等のお仲間の1人なんざ、海に転送されちまって、偶々近くにいたネレイスやらスキュラやらが助けてくれてなきゃ溺死するとこだったらしいぜ。アタシ等もあの街を落とすついでに、丁度近くに飛ばされたってアンタ等の捜索も頼まれてたんだけど、まさかアンタ等に捕まるたぁ思わなかったよ…」

にわかには信じがたい話だが、彼女は魔王の娘、リリムの一人に命じられて、召喚から漏れた自分達を迎えに来たというのだ。かつて3人は司祭の1人に、「なぜ主神は自分達をこの世界へと呼び寄せたのか」と訊ねたところ、「魔王以下全ての魔物が放つ魅了の魔法を始め、魔物たちが持つ様々な魔法に対し、異世界人は強い対抗力があるため、魔物の誘惑に屈しにくいからだ」と説明されていた。聞いておきながら別段信じてはいなかったが、それでも自分達を呼び寄せたのがまさか敵とされていた魔物側だったことに、黎犂と神楽は動揺と驚愕が隠せなかった。

「まさか俺達、魔物に呼ばれてたとはな…にしても何でわざわざ…」

「どうしよ…向こうに行ったら、早速どこかの街潰してこいとか言われるのかな…」

困惑し、ついつい小声で話してしまう2人に対し、竜哉は余り動じていない。

「確かにその話が真実なら、俺達の名を知っているのも頷ける。だが俺達は今回召喚した中のごく1部で、召喚は過去に何度もやっていると言ったな。俺達と一緒に呼ばれた奴や、それ以前に呼んだ他の連中はどうしてる」

そう、アリスティアの話では、異世界からの召喚自体は以前から行われていて、今回召喚された者は先程の海に飛ばされた者も含め、黎犂、神楽、竜哉以外は皆魔物たちの元に到着しているらしい。では魔物側に到着した者たちは、その後どうしているのだろうか。差異はあれど3人は奴隷の様にこき使われているのではと想像したが、アリスティアから返ってきたのはその斜め上を行っていた。

「ああ、到着した奴等か?なぁに、あっちはあっちで、楽しくヤってるよ。まぁアンタ等のお仲間も、今頃全員人間じゃねえだろうけどな! 」

「「「!?」」」

アリスティアの発言を聞き、3人は驚愕し、神楽に至っては、せっかく消息を掴めかけた級友達はもうかつてのそれではないのかと絶望し、ショックの余り後ろへと倒れかけしまい黎犂に支えられる。

「おい、それはどういうことだ。まさかネズミよろしく、非道な実験で被検体にでも使いやがったか?」

武器こそ構えていないが、竜哉の声には怒気と敵意が込められ、非常に刺々しいものだった。尤もアリスティアは反論するどころか、「何を怒っているんだ?」と面食らった表情を浮かべていることからすると、単に説明の途中で早とちりをした竜哉が横槍を入れてしまっただけかもしれない。

「あぁ、そゆこと…。って、だ〜ぁら誰も危険な目になんて遭ってねぇからさぁ、ちゃんと話は最後まで聞けってぇの!っつーかまず3人とも落ち着け、な?確かに魔物の魔力を身体に取り込めば男はインキュバス、女は魔物になっちまうけど、そりゃあ元からこっちにいた人間でもなることだから何も問題ねぇよ。それに言っとくけど、少なくともうちじゃ魔物にするのは合意の上だからな?そりゃあ違うとこに転送された奴だと、見付けた時には既に魔物やインキュバスになってることもあるし、なりたくねえって奴は説得もするけど、まだ決心ついてない奴を無理矢理するようなこたぁねえから、そこは安心しとけ。まあ魔物になれば人間の倫理だ世間体だってモンは気にしなくていいし、それまでの抑圧からも解放されて、幸福感は増すらしいけどな」

敵意に満ちた竜哉と、ショックで泣き出してしまう神楽、その隣で睨み付ける黎犂を見て、アリスティアは漸く事態を理解したらしい。勝手な勘違いから思考がマイナス方面に暴走した3人を見て、呆れる様にため息をついてから、改めて自分達の元に集められた人間達が、世界を問わずどうなるか説明する。

「そ、そう…皆無事だけど、結局は、魔物になっちゃうんだ…」

「なるほどねぇ、元より悪者扱いしてる魔物が、人間を同属に引き込むともなりゃ、人間至上主義掲げてる教団の連中がそれを許す訳ないわな…。なぁ、割り込む様で悪いが、1つ訊かせてくれ。インキュバスって、魔物とは違うモンなのか?確か俺達の世界じゃサキュバ
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