第7話 好戦的な男と好色的な魔物

暫くただもがき絡まりあうだけだった魔物達だったが、タイミングを見計らったかのように輝幸等
が撤退してから1人また1人と抜けていき、何とか全員立てるようになった。
その間竜哉が攻撃どころか移動もせず、その場で待ち続けたのは、いくら自衛のためと言え
抵抗できない女性に攻撃するなど、父親から叩き込まれた心構えが許さなかったのだろう。

「ぷあぁーっ!やっと抜けたぁ〜。ってあれ、誰もいない?」

まっ先にこちらへと猛進してきたハーピーが、のん気にそんなことを言いながら辺りを見渡していると、後ろからワーキャットにモコモコの毛で覆われた拳で殴られた。

「こぉんのオバカ!アンタがグズグズしてるせいで折角見つけた男達に逃げられちゃったじゃないの!」

当然とも言うべきか一発では気が治まらない様で、ワーキャットは仲間からの視線も無視して
ハーピーに罵声を浴びせながら殴り続けようとするが、それをリーダー格らしきオーガが止める。

「まぁまぁ、そんくらいにしといてやれ。それよりほら、1人だけだけどまだ残ってくれてるぜ?
わざわざアタシ等を律儀に待ってるようだから、さっさと仕留めて皆でお楽しみと行こうじゃないのよ」

「そりゃあいいぜぇ!!そんじゃあ軽く遊んでやるか!」

それを聞いた仲間のミノタウロスが雄叫びをあげ両手首についた鎖をジャラリと鳴らし、得物の大斧を構えると、ほかの魔物達も各々武器や体勢を構え順々に襲い掛かってくる。
だが竜哉は一切慌てる様子も無く、ミノタウロスの斧をツヴァイハンダーで受け止めると、刃の上を滑らせ地面に食い込ませ、動きを止めたミノタウロスの頭に鎧で覆われた拳を叩き付ける。

「んぎっ!ってえぇ〜。案外やるじゃんアンタ。こりゃ前哨試合も楽しくなりそうだな」

「嘘っ!力と頑丈さが自慢のジャネットが反撃され…ヒャボッ!?」

殴られたミノタウロスは一瞬ふらつくが、あまりダメージは受けてない様で斧を持ち上げ再度
突進してくる。だが仲間にしてみれば彼女が反撃を受けたのは意外だったようで、突進してきたハーピーは驚いていたところを頭から地面に墜落した。
流れるように急接近した竜哉に踵落としを受けたのだ。

「いい腕をしてるじゃないか、だがコイツは耐えられるかな!?」

「そーりゃこの1撃はさすがにアニャ〜〜〜〜… 」

今度はオーガが横から、上に布を巻きつけた一見簡素なガントレットを装備した拳を振り下ろしてきたが、竜哉はこれも受け止めすぐ跳ね返す。直後に突進してきたワーキャットに対しては、ツヴァイハンダーをバットの如くスイングし、遠くに打ち飛ばしてしまった。

「鍔迫り合いを避けたのは賢い選択だったが、その上反撃までしてみせるとは、それだけでも
賞賛に値するな。だがそれを理由に手加減はしないぞっ!」

直後に木の上から飛び掛ってきたのは、リザードマン。落下の勢いを加え竜哉へ向けて
バスターソードを振り下ろすと、着地地点からは土煙が上がる。

「おいビビエラ!あんま勢い付けんな!煙くて何も見えねぇだろ!」

「全くその通りね。もうちょっと周囲のことも考えて行動してほしいわ」

ミノタウロスのジャネットとワーウルフからリザードマンのビビエラに不満があがる中、竜哉は
土煙の中で脱出よりも待機を選んだ。視界が悪い中下手に動けば障害物や敵に鉢合わせする
可能性も高く、得策ではないと考えた。土煙の中で襲撃に備えていると、襲ってきたのは長い柄のハンマーを持ったオーク。

「ここからこぉ〜っそりと…うわぁっ!?」

当人としては後ろから不意打ちのつもりだったのだろうが、気配を察知した竜哉からは反射的に発した横薙ぎを返されてしまう。運よく驚いてこけた際に回避できたものの、
反撃を受けてしまったことに変わりは無い。そのまま這うように逃げ出したオークの手を
ワーウルフが握り、グイっと持ち上げ立たせてやる。

「あの土煙で数の不利を覆そうと狙ってるのかどうかは分からないけど、少なくともこちらに
同士討ちの危険がある以上、大きく動くのは危険ね」

「要はこの土煙が邪魔なんでしょ?一気に吹き飛ばしちゃうから皆伏せてて!」

今までいいとこなしだったハーピーが大きく腕を振り上げ、勢いよく下ろし土煙を扇ぐと、強力な突風が発生し、宣言通り土煙を容易く消し飛ばしてしまった。
ちょうど正面から風を浴びてしまった竜哉は風の強さと飛んでくる土砂に一瞬怯み、すかさず
ツヴァイハンダーを盾にして腕で顔を覆うが、思ったよりも風の威力が強く、あろうことか
ツヴァイハンダーとともに吹き飛ばされ樹に叩き付けられる。

「 ぐはぁ・・・っ! 」

小さくうめき声を上げるもツヴァイハンダーを使いてこの原理で体を持ち上げ、背後の樹に寄りかかり、改めて対峙する魔物たちに目を向ける。

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