森の中を進んでいくうちに、輝幸は妙な感覚に気づいた。
「(誰か追けてきてるな。それも一人二人じゃなく、少なくても4,5人はいる・・・)」
向こうにいた頃は呼び出した後や、帰宅途中に後ろから闇討ちを仕掛けられることも多く、背後への気配には人一倍敏感になった輝幸。相手も相手で上手く気配を隠せておらず、時折カサカサと木の葉の擦れる音や、枝の折れる音が聞こえてくる。
「(大方物剥ぎの類、野盗かなんかだろうな。隙を伺ってる様だから、このまま気を張ってればそう易々とは手も出してこないだろ。)」
互いに相手の様子を探りあいながら進むこと数分、どちらも一切折れる様子は無く、緊迫した空気が続いた。
あまり気の長い方ではない輝幸にとってその緊迫は苦痛以外のなんでもなく、限界が訪れかけていたのだが、それは相手の方も同じだったらしい。とうとう一人が遂に我慢できなくなったようで、背後から飛び掛ってきた。
「たあああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
雄叫びを上げ機敏に距離を縮めるが、当然輝幸がそれに気づかないことなどなく、スーツケースごと腕を勢いよく振り被るとそのまま遠心力を利用して、飛び掛った相手にスーツケースでスイングを叩き込む!
「でぇりゃあああああああああぁぁぁぁっ!!」
「おぼみなぁっ!?」
殴り飛ばされた相手は進行方向を正面から横へと変え、そのまましばらく飛ばされた後、木にぶつかり轟音とともに土煙を上げて止まった。
そしてその場には、恐らく今さっき持ち主が飛んでいった際に置き去りにされたであろう、大きな棍棒が1つ。
「(・・・妙にデカイ棍棒だな。大体少学校の低学年児童の背丈くらいはありそうだが、感触や飛んだ距離を考査すると持ってた奴はそこまで大きな奴には思えなかったし・・・まさか見掛け倒しのハリボテなんてオチかぁ?)」
一人か二人は飛んでいった仲間のほうに向かったが、まだ残っている敵に警戒しながらも、残された棍棒への興味は尽きず、ついつい考え込んでしまう輝幸。だがゆっくりと姿を現した相手を見ると、怪訝な顔をしながら一気に気を緩めてしまった。
「あぁ!?ガキばっかじゃねぇかよ!変に気ぃ張って損した気分だ・・・」
そう、彼の前に現れたのは見た所まだ10代前半、下手をすればそこまでも達していないような容姿をした少女ばかりが4人。髪形や僅かながら体格に差はあれども、その服装は袖も襟も無い腹巻のようなもので胸を覆い、履いているのも薄緑で少々透けている、それを身につける意味を疑うようなショートパンツと、妙に露出の高いデザインで統一されていたのだが、それ以上に輝幸の目を引いたのは、全員が先程飛ばずに残されたものと同じような棍棒を持っていたこと。どうやらあれは、彼女たちの標準装備らしい。
と、「ガキ」と言われて腹を立てたのか、一人がまくし立ててきた。
「貴様ぁ・・・あたし等ゴブリンを馬鹿にしているのかっ!見た目で判断するんじゃなぁい!」
だがそれを聞いた輝幸は更に馬鹿にするような表情を浮かべ、呆れた様に大きくため息を吐いてからさも相手にするのが億劫そうに答える。
「ゴブリンだ?寝言は家の布団か、さっきの奴みたく伸されてから言いな。とにかく俺は、こんなうっとおしい森の中でいつまでもガキと遊ぶ気なんてさらさらねぇんだよ。とっとと帰れ!」
そのまま野良犬でも追い払うかのように手を払い、もう飽きたと言わんばかりに背を向けて歩き出す。これには自称ゴブリンらもプライドを傷つけられたようで、恐らくリーダー格らしい先程の少女は苦虫を噛み潰したような表情を見せた。
「とことんあたし等を馬鹿にしやがってぇ・・・。バランガ盗賊団の底力見せてやる!」
号令代わりに発された怒声を合図に、リーダーの後ろに1人、左右に1人ずつの陣形から4人同時に地を蹴って飛び掛ってくるが、輝幸の対応は瞬時に済んでいた。
その場でUターンを決めるとスーツケースをその場に残し、身長によるリーチの差と脚力を活かし一気に跳躍。置きっぱなしの棍棒を即座に掴むと、その持ち主に先程スーツケースで決めたようにスイングして左右の二人を一蹴。更に勢い収まらない棍棒を蹴り上げてアッパーカットの様にリーダーを撃破し、それが重力に曳かれ落ちる勢いで後ろにいた者も倒された。
「ぷれだぁっ!?」
「めなぞぉっ!」
「でばす!」
「ぶるってぃか!」
命まで奪われてはいないが、断末魔の奇声を上げる4人。それを見事に流れるような動きで倒して見せた輝幸は、棍棒をその下敷きにされた少女からどかすと、適当なところに投げ捨て自身のスーツケースを手にして去ろうとの元に向かい、する。
「(試しに使ってみたが、かなりズッシリとした質感だったな。俺も遠心力使って何とか振る事はできたが、普通あんなガキには振
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