1・夏の終わりの褐色愛好会
ここは私立MA大学。九月も半ばを過ぎ、夕暮れや夜には秋の訪れを感じさせる頃。
3人の男が昼下がりの薄暗い廊下を歩いていた。
「こんちわーッス」
「どうも、お久しぶりです」
「ペジプトからの帰還でござる」
「おお、帰ってきたかペジプト組」
「あれ、お前ら生きてたのか」
扉を開け部屋に入った3人を、引き締まったスポーツマン風の男と、軽薄そうな明るい髪の男が出迎える。
「勝手に殺さんで下さいよ」
「こちらペジプト土産でござる。今後もなにとぞお引き立てをよしなによしなに・・・」
「あれ、スズキさんとカトウさんだけですか? タナカさん居ないなんて珍しいですね」
「ああ、タナカは今ちょっとな・・・」
「ホッホッホ、越後屋おぬしもワルよのう・・・なにこれぇ?」
「あ、それ向こうの店で買ったコーヒーッス」
「お二人もエウロパ土産を出して下さっても良いでござるよ?」
「お土産を催促する上に最低の態度だなお前」
「ハア? なんでお前らのために土産なんか買ってこなきゃいけねーんだよ」
「すまん、俺の土産は諸事情あってな。カトウのはナマモノだったから食べちまった。お前ら予定日過ぎても帰ってこなかったろ。心配したんだぞ」
「旨かったぜ? 本場のブルストとビール・・・あ、サトウはまだ飲めねーんだっけ?ゲハハ」
「ギギギ、オドレクソ森」
「すみません、連絡ぐらい入れるべきでしたね」
「いや大変だったんスよ、遺跡ツアーから戻ったら、添乗員が車ごといなくなっちゃって。荷物やパスポートなんかも車の中だったんでもうどうしようかと」
「お前ら危機管理あますぎじゃね? むしろよく生きてたな」
「貴重品は身につけてないとな。しかしまあ無事に帰ってこれてよかったよ」
「途方にくれてたら遺跡管理事務所の人が助けてくれて、荷物は次の日に返ってきました。添乗員さんは戻ってきませんでしたけど」
「事務所の人に聞いたら近くのケプリ達に車ごとさらわれてたらしいッス」
「添乗員マジうらやま死刑」
「お前よく言うよ・・・。それで乗るはずだった飛行機逃しちゃって、手続きやらなんやかんやで遅れてやっと昨日帰ってきたってわけです」
「添乗員まかせにしてるからそうなるんだよダッセーな」
「ご苦労さん。しかし、アクシデント無しに帰ってくるやつはいないのか?・・・とりあえずそのコーヒー淹れようか。ちょっと給湯室行って来る」
「? あ、スズキさん、僕も行きます」
〜コーヒーブレイク〜
「うえっ何これ」
「独特な味だな」
「草のにおいがするッス。ハーブ?的な」
「・・・ハッ!? お彼岸が見えたでござる」
「オーバーだろ。そういえば向こうの人ってコーヒーに砂糖大量に入れるんですよ」
「バカ早く言えよそれ。ブラックで飲んじまったじゃねえか。つーかギリマンとか買ってこいよ。あれもアプリリカ原産だろ」
「これは輸出仕様じゃない国内消費用って感じだな。むしろいかにも現地行ってきたって感じでいいんじゃないか?」
「そうですぞ。カトウ氏のビールにソーセージなんてこっちでも買えるでござる」
「てめえサトウ、お前をコーヒーにぶち込むぞ」
〜ブレイク終了〜
「はー、スズキさんが手も足もでないなんて、本物の武闘派魔物はすごいんスね〜。・・・つーかカトウさんこそよく生きてましたね。いまどきエルフに弓で撃たれるなんて、ファンタジー映画じゃないんスから」
「うるせーな。しょうがねーだろ、ダークエルフの集落と間違えたんだから。んで、お前らどうだったんだよ」
「“どう”、とはどういうことでござるか?」
「オレ、カトウサンガナニイッテルカワカンネーッス」
「・・・」
「なにトボケてんだ。向こうで女の子はハントできたのかって聞いてんだよ」
「・・・」
「・・・」
「・・・なんの! 戦果もォ! 得られませんでしたア!」
「まーそうだろうな」
「カトウ、そのへんにしといてやれよ」
「褐色娘がたくさんいても、結局拙者たちにチャンスなど訪れるはずもなく・・・」
「いや待て。サトウはチャンスあっただろ。お前がヘタレただけで」
「な、なんのことでござるかフジワラ氏」
「そうだ先輩聞いてくださいよ! こいつ遺跡の事務所にいたスフィンクスの子と結構いい雰囲気になってたんスよ。それなのに・・・」
「ほほう、やらかしたのかサトウ。その話、詳しく聞こうじゃないか」
「サトウ、女性に恥をかかせるのは良くないぞ」
「そ、その話はあまり面白い話ではないでござるから・・・、ってスズキさんまで」
「じーっ」
「じーっ」
「・・・だ、だって、仕方ないじゃないですか! 一人称が『わらわ』とかビビるでしょ! 語尾に『ニャ』とか全く付けないし、そういうキャラ作ってるのかと思って冗談交じりに聞
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