雪おんな/急げ魔列車

雪おんな

うた:チェリーっす


真冬のお山にまっしろな
雪がこんもり ふきよせて
おとめのかたちになりました

凍るよな青い目が あなたにニコリ
はらはら初雪ふった日に
雪から生まれた
ランラ ランラ 雪おんな


おそとは吹雪でまっしろね
なにかお話しましょうか
どうしてお外にゆきたいの

いつまでもここにいて わたしのそばに
しんしんしみ雪ふりつもり
雪から生まれた
ランラ ランラ 雪おんな


月夜がてらした窓のそと
雪もすっかりやみました
あの人どこかな もういない

満天の星空が キラキラキラリ
泣いてるみたいな気がします
雪から生まれた
ランラ ランラ 雪おんな


人里はなれた山のなか
ひとりのおんながおりました
ひとりのおんながおりました

遠くからひびいてる だれかの靴が
かんかんかた雪ふみしめて
雪から生まれた
ランラ ランラ 雪おんな


* * * * * * * * *


急げ魔列車

歌:淫魔鉄道株式会社広報部


ああ魔列車よ 走れ急げ
みんなの待ってるあの駅へ

汽笛が誘うよ
人気の消えた街の中
君は社会に負けたわけじゃない

足を引きずり
体ひとつで乗り込んで
頬には一筋 涙がかがやく

雪ん子は もう花盛り
花は白く 咲いているのに


ああ魔列車よ 走れ急げ
魔界がもうすぐ近づく
ああ魔列車よ 走れ急げ
みんなの待ってるあの駅へ

花嫁衣裳 縫いながら
君のことを 待っているのに


ああ魔列車よ 走れ急げ
魔界がもうすぐ近づく
ああ魔列車よ 走れ急げ
わたしの待ってるこの駅へ


* * * * * * * * *


曲解説

『雪おんな』
Q.なぜ男の人は出て行ってしまったの?
A.吹雪がやんだからです。
Q.なぜ吹雪やんでしまったの?
A.雪女がとめたからです。


『急げ魔列車』
魔列車:
 旧時代にとある国が開発した人造魔物“業魔”を戦場へ運ぶために使われた専用鉄道。別名『死者を運ぶ列車』 現在では魔界行きの列車がこう呼ばれている。
 時おり死人のような顔をした人々がふらりと乗車し、二度と戻ってくることはないと言う・・・


──────────────────


疲れ果てた体で帰りの列車に乗り込む。
すでに夜遅く、乗客の姿はまばらだ。
―ゴトン―
急行列車は音をたて、街から郊外へと走っていく。

もうすぐ降車駅に着く。
そう思って顔をあげると、いつからそこにいたのか、向かいの席に少女が座っていた。

こんな時間になぜ、こんな少女が一人でいるのだろう。
見慣れない服を着た、変わった少女だった。
“扉が閉まります”
少女に気をとられているうちに駅に着いていたらしい。
あわてて立ち上がろうとしたがドアは閉まり、列車はまた動き出してしまった。

――かまうものか。
ため息とともに浮かせた尻を座席に沈める。
どうせ明日は休日。寝るだけの一日だ。

少女はじっとこちらを見つめている。
視線を避けるように窓の外に目を向ける。
窓の風景からは人家がどんどん減り、田畑や林が増えていく。
遠くには山々の連なりが黒くそびえていた。

―これからどこへ行くの?―

とつぜん、少女が口を開いた。
静かな声だった。

―遠い山へ―

思わずそんな言葉が口を出た。
遠い山々の暗い影がそう答えさせたのかもしれない。

―遠い山を越えて、どこへ行くの?―

少女は静かな声で重ねてたずねる。

―誰かの待つ家へ―

そう言って思い浮かべたのは、住み慣れた暗い静かなアパートではなく、遠く離れた故郷の家だった。

―そう―

少女はそう言うと、また黙ってこちらを見つめる。
その青い瞳からは、彼女が何を考えているのか、何を感じているのかを伺うことはできなかった。

それからいくつも駅を過ぎた。
乗客たちは次々と降りていったが、彼女だけは変わらず向かいの席に座ったままだった。

―君はどこから来て、どこへ行くんだ?―
不思議に思って聞いてみた。
彼女は少し首をかしげ、窓の外へちらりと視線を投げた。

―むかし、壺の中に女の子がいて、女の子はもう何年も家に帰っていませんでした―

彼女は質問に答えることなく、不思議な物語を始めた。
列車に揺られながら彼女の静かな声を聞いていると、意識は深い夜の底へ沈んでいくようだった。

―壺から出た女の子は、家に帰る途中、オオカミに会いました・・・―


気が付くと列車は朝日の中を走っていた。
どうやらうたた寝をしていたらしい。
誰もいない客車の中、向かいの席に置かれた壺だけが日の光を受けて輝いている。

“次は***〜、***〜”

車内放送が降車駅の名を告げる。
私は急ぎ立ち上がり、壺を手に取ると足早に扉へと歩いていった。
22/03/06 00:20更新 / なげっぱなしヘルマン
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