飛行ホーキ時代 〜『皆月玉尾の暴想ノート』より〜

♪(軽快な音楽)
魔ニメーション映画監督、皆月玉尾さんの欲望と妄想が混ざって生まれた、
ほのエロいファンタジー空間、『皆月玉尾の暴想ノート』へようこそ。
人間と魔物が織りなし、次元のはざまへと消えていった、
狂気の愛情を描く旅に皆さんをご案内いたします。

時は第二次魔界大戦前夜。
一度の大戦を経たのちも、大半の国は魔物の変化について無知のままでした。
大陸西方では魔女狩りの嵐が吹き荒れ、多くの人々が異端審問の露と消えるなか、
真紅のホーキ“赤のオルゴール号”を駆る新人魔女・マルガレーテは、
今日も気ままに空を飛びまわっておりました。


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私はマルガレーテ・一等魔女。
数ヶ月前バフォメットと契約してサバトに入った新人魔女だ。
今日は週に一度の非番の日だったのだが・・・。

「ちょっと“一等魔女”の新人さん、これから北東エリアのパトロールに行ってくれない?」
「・・・今日は私、非番なんですが」

同じ部署の先輩魔女につかまっていた。

「パトロール隊員はどうしたんですか?」
「今日は私よ。でも私、なんだか調子が悪いの。だから代わりにあなたが行ってきてよ。いいでしょ?」
「・・・わかりました」

先輩魔女は私の答えににんまりと笑うと、軽快な足取りで去っていった。


私の所属するサバトでは普通、入信した魔女は最初“三等魔女”という階級に就き、そこから勤めた年月や成果によって“二等魔女”“一等魔女”と位が上がる。
最終的には“上級魔女”となって、各部門の責任者になるのだそうだ。

私が入信と同時に一等魔女となったのは異例のことだったらしく、それによるやっかみも多い。
さすがに先ほどの先輩のようなあからさまな人は少ないが、それでも他の魔女達との間に壁を感じるのは確かだ。
・・・派閥や人付き合いを避けて“魔女”と呼ばれるようになったのに、本物の魔物になったとたん組織に組み込まれるとは、なんとも皮肉なものだ。


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「一等魔女マルガレーテです。北東エリアのパトロールに行ってきます」
自前のホーキを片手に、発着場の魔女に声をかける。
「あらマリー、ってパトロール?」
顔馴染みの同僚は、怪訝な顔で振り返った。

「北東エリアのパトロールは、今日はポーラじゃなかったっけ? ・・・もしかしてまた交代したの?」
私と同じぐらい幼い外見ながら、どこか大人びた雰囲気の魔女は眉をしかめた。
「だめよ、あんまり甘やかしちゃ。ただでさえあの子、最近お兄ちゃんができて浮かれてるんだから」

「すみません、でもここのところ研究室につめっぱなしだったから体を動かしたくて・・・」
「そんな事言ったって、あなた休みの日はいっつもホーキで飛び回ってるじゃないの」

一応は先輩の顔を立てるため慣れない言い訳を試みるが、するどい切り返しに返す言葉が見つからない。

やがて彼女はあきらめたように笑い、
「・・・まあ、しょうがないか。とにかく気をつけていってらっしゃい。そろそろマンマ・オーク団が動くんじゃないかって、さっき北西パトロールのリンが言ってたわ」

マンマ・オーク団か・・・

***
『マンマ・オーク団』
(“ママはメスブタ団”の意)
二ヶ月前から私たちのサバト領内に出没するようになったオークの集団だ。
村々の家に集団で押し入り食料や家畜、作物などを強奪していくため、この辺り一帯の治安を管轄するサバトが追いかけていたのだ。
しかし不思議と男性の性的被害の報告はなく、やつらはすでに夫を持っている集団なのだろうと思われていた。
そのせいもあってかサバト内でのマンマ・オーク団捕縛の優先順位はけして高くはなく、最近では西の反魔国の動向に注意が向いていた。

・・・先週までは。

先週、川で水浴びをしていた子供たちが見知らぬ魔物数人に声をかけられ、連れ去られそうになるという事件があった。
幸い近くにいたサハギンのおかげで事なきをえたが、目撃証言をまとめたところ、その魔物はほぼ間違いなくマンマ・オーク団であろうという結論に達した。

そう、やつらは重度のショタコンなのだ。

やつらには教えてやらなければならないだろう。
この世に合法ロリは数多いが、合法ショタなど存在しないことを。

そして思い知らせてやらなければならない。
無気力で怠惰で、破廉恥な胸をしたブタである罪の重さを。
***

「そういえば、前の襲撃からもう5日ですか・・・。確かにやつらのふところ具合を考えると、今日・明日あたり動きがありそうですね」
「そ。だから気をつけてね。お兄ちゃんができる前に、そのきれいな肌に傷をつけたくないでしょ」

そう言って彼女はしげしげと私を眺め、
「・・・それにしても相変わらずすごい格好ね。まるで前時代の魔女みたいよ
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