魔物娘バトルカード「封印されし〇〇〇〇〇」

「カードを一枚伏せ、ターンエンド!」

対戦相手がターンの終了を告げる。
あの伏せカード・・・おそらくトラップカードだろうが、“冥土送り”※1か?・・・いや“冥土返し”※2かもしれない。
※1:手札内のユニットカードを身代わりにして攻撃を防ぐ。身代わりにしたユニットはステータスに関係なく墓地に送られるが、ステータスの3分の1を守ったユニットに付与
※2:自陣のユニットが撃破されたとき、墓場の下級アンデッド系モンスター一体を場に召喚する

どちらにしても、ここまで相手の矢継ぎ早のユニット召喚をしのいで来たんだ。これ以上相手を強化させたくはないが・・・。

「どうした? 攻撃してこないのかい?」

相手のあざけるような声。
相手のフィールドに出ているのは“彷徨える首なし騎士《デュラハン》”一体のみ。
先ほど撃破した“メイド・ゾンビ”のスキルで強化されており、俺の壺デッキの低火力では厄介な相手。相手はそれを見越して挑発しているのだ。

「フフフ、やはり君の壺デッキじゃ、僕のアンデッドデッキには敵わないようだね」
「・・・」

「アンデッドデッキはスタンダードなバランスタイプ! コストの安い下級ユニットから高火力の上級ユニットまで揃っているし、人気シリーズだから新しいカードもぞくぞくと追加される! マイナー不人気な壺デッキなんかで、敵うはずないじゃあないか。ハハハハハ」

くそっ、言わせておけば、調子に乗りやがって。
・・・ほえ面かかせてやる。見てろよ!

「・・・手札から“蟲毒の壺”を墓場に送り、“暗闇の壺・ファムツポット”召喚!」
『我、夢より出でし者。力を貸そうぞ』

手札の一枚を魔力還元し、残りの魔力ほとんどを使ってユニットを召喚する。
フィールドに土偶のような装甲を身にまとい、大きな壺を担いだ妙齢の女性が現れる。

「な、なにい!? 上級ユニットだと!? ウソだろ!」

そう、俺はすでに壺系ユニット唯一にして最強の上級ユニットを引いていたのだ。
しかもこいつは範囲攻撃持ち。
これなら相手がさっきまでのように下級ユニットを連打してきても、ユニットごと相手のHPを削りきれる!

「そして、“彷徨える首なし騎士《デュラハン》”に攻撃だ!」
まずは低火力と侮り攻撃表示にした敵ユニットを撃破する!
これが俺と壺デッキの、反撃の狼煙だ!

『壺式波動砲!』
“暗闇の壺・ファムツポット”が肩に壺を構え、その壺から凄まじい量の水流がほとばしる!

「ク、クソオーっ!?
・・・なーんちゃって。リバースカードオープン!“墓土から伸びる腕”! ファムツポットの攻撃は中断だァ!」
「ぬう!?」

しまった! 伏せカードはさっきまで多用していた犠牲強化系ではなく、攻撃阻害系だったのか!
だが、いくら強化されているとはいっても、中級ユニットの“彷徨える首なし騎士”の攻撃では“ファムツポット”はびくともしないはず。

「ターンエンドだ」

「クックックッ、じゃあここからは僕のターンだね。
補助カード“バトルティアラ”と“魔剣クツコロッサス”を“彷徨える首なし騎士《デュラハン》”に使用!
上級ユニット“姫騎士デュラハン”を召・喚!」

相手フィールドの首なし騎士が光に包まれ、黒ずんだ鎧が純白へと変わっていく。

「なっ!? “姫騎士デュラハン”だと!?」

召喚するためには素材となるデュラハン系ユニットに加え、2枚の専用装備カードを必要とする進化系上級ユニット! しかもどのカードも排出数の少ないレアカードで、そのデザインとも相まってショップではセットで一万以上の値がつくのがざらだと言われる。

まさか、こいつがあのレアカードを持っていたなんて!

「フフハハハ、こいつを手に入れるため、小学生の頃からのお年玉貯金を崩したのさ」

なんだと!? 俺のお年玉貯金は親に預けていたらいつの間にかなくなっていたのに!

「“姫騎士デュラハン”の能力は元ユニットの二倍! “彷徨える首なし騎士”にかかっていたバフも二倍だ! この攻撃耐えられるかなぁ? “暗闇の壺・ファムツポット”に攻撃ぃ!」

『活路は私が切り開く。皆のもの続け! 必勝!涅槃斬り!』
姫騎士デュラハンの華麗な三連撃で、ファムツポットのHPはゼロになる。

『我、再び夢の内へと還る。いずれの夢の国にて、つかの間、まみえることもあろう・・・』
撃破されたファムツポットは泡となって消え、カードが墓場へと送られる。

「そんな、ファムツポットが、負けるなんて・・・」

俺の切り札ともいえるカードだったのに・・・、こんな、金で集めたデッキに負けるとは・・・!

「フフフ、君もこれに懲りたら壺デッキなんてやめて、高貴で耽美なアンデッドデッキに替えるべきさ。今ならこの僕のダブリカード、“生まれたてのゾビ子”もあげよう」
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