刹久朱県。
日本にある世界で類を見ない魔物娘によって作られた人工島の県である。
綺麗な砂浜と海が有名なここは、ツアー会社やホテルが集まり、多くの有名人や富豪が住む高級住宅街もある。
そのため、日本国内だけではなく、海外や魔界でからの観光客も多い。
「ねぇねぇ、俺と一緒に遊ばな〜い?」
耳にピアスを開け、派手な色のメガネを掛けた太った男が脇にサーフボードを抱えながら人間の若い女性をナンパしていた。身なりからしてかなり裕福だ。
「す、すいません・・・私には彼氏いるんで・・・」
女性は日本人の国技である愛想笑いを浮かべて逃げるように去って行った。
それでも男はめげずに近くの巨乳のネコマタに声を掛けたが、
「うるさいニャ!あっち行けニャ!ボクには大切な旦那様がいるんだニャ!」
男のナンパをこっぴどく断って、不機嫌そうに去っていく。
「チッ!クソが!庶民様はどいつもこいつもイチャイチャしやがってよ!」
男は舌打ちをすると、地団駄を踏んで怒りだした。
「なんだよ!?なんで俺モテねぇんだよ!?俺の親父は超大物俳優なんだぜ?金もあんだせ?それなりにコネもあんだぜ?俺だって良い大学出てるんだぜ?それなのになんで女はなびかねーんだよ!?」
男は周囲のことなどお構いなしに喚き散らした。
「うわ、なにあれ・・・ヒソヒソ」
「あれって確か明石町めんまの・・・ヒソヒソ」
「ああいうのをドラ息子とかバカ二世って言うんだよなぁ・・・ボソボソ」
「全く親の躾がなってないからああなるんだ・・・ボソボソ」
集まってきた群衆が陰口を叩く。
「おい!一般庶民共!見せモンじゃねぇぞゴルァ!」
男は群衆に向かって大声で怒鳴り、脇に抱えていたサーフボードを砂浜に叩きつけると、驚いた群衆は一目散に逃げ出した。
「ケッ!クソが!大勢で遠くからネチネチ言いやがって!全くこれだから一般庶民はよぉ!」
男は地面に転がっているサーフボードを蹴り背を向け、一、二歩ほど歩くと振り向いて地面にタンを吐いた。
「あー、ムカつくぜ!こうなったら誕生日にパパに買って貰ったアレにでも乗って気分転換するか!」
男はそう言うと、海水浴場の端にある桟橋まで行き、その脇に浮かんでいる水上バイクに跨がった。
「久々にいっちょフかしてやるか!」
男は水上バイクのエンジンを全開にして、遊泳区域で泳いでいるカップルや親子連れの間を駆け抜けて行く。
「うわあぁぁぁぁ!」
「きゃあぁぁぁぁ!」
「うわ〜ん!ママ〜!」
「え〜ん!お兄ちゃ〜ん!」
老若男女人魔問わず強烈な水飛沫を被った人々が悲鳴を上げる。
「ぶはははははは!ざまぁ見やがれ一般庶民共!」
ほのぼのとした雰囲気から阿鼻仰喚の大騒ぎになった遊泳区域を見て男は高笑いする。
「そこの水上バイク!待ちなさい!」
「私が誘導しますので皆さんは速やかに避難してください!」
騒ぎを聞きつけ駆けつけたマーメイド、ネイレス、セルキーの監視員たちが飛んで来る。
マーメイドとネイレスは男を追い、セルキーの監視員が海水浴客を安全な場所に避難させる。
「待てと言われて待つほど俺はバカじぇねぇーよ!アホンダラァ!」
ブオオオオオオオオン!
「ぶわーはっはっはっはぁ〜!捕まえられるもんなら捕まえてみやがれ〜!」
水上バイクは監視員たちを挑発するかのように蛇行などの危険運転を繰り返す。水中での泳ぎなら一番といわれるマーメイドやネイレスでも水上バイクには誰一人追い付けていない。
「逃がさないわよ!」
一人のマーメイドが水上バイクを捕らえようとするが、
「オラオラァ!邪魔すんじゃねぇ!」
ドガンッ!
「きゃあ!」
立ち塞がって進路を止めようとしたところを砂浜まではね飛ばされてしまった。
「う、ううぅぅ・・・・」
「いよぉ〜し!人魚のタタキいっちょ上がり〜!なんちゃって!」
男は砂浜ではね飛ばされた衝撃で動けずに苦しそうにしているマーメイドを指差して笑う。
「だっ、誰か!早く救急車を!」
それを見たネイレスが慌てる。
さっきまで砂浜で日光浴をしていた中年のおじさんが電話を掛ける。
「余所見してんじゃねぇぞ〜!」
ブアアアアアアァンッ!
男は怒号を上げ、バイクでネイレスに体当たりした。
ドゴン!
「あうっ!」
ネイレスの体が宙を回り、さっきのマーメイドのように砂浜に叩きつけられる。すぐに、近くにいた男が彼女を担ぎ、近くでマーメイドを搬送しようとしている救急隊員の元まで向かい、彼女も搬送してもらうように頼む。
「せ、先輩っ!」
この三人の中で一番若いであろう童顔のセルキーが声を上げる。
「てめぇで最後だぁ〜!」
「・・・・・ッ!」
水上バイクに乗った男がセルキーの目の前まで迫る。
「に、逃
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