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「はっ!せい!どう!」
「甘いぞ清明(せいめい)!その程度の力では及ばぬぞ!」
とある和風の屋敷の庭にて。
黒い狩衣を身に着け、烏帽子を被った男と彼の息子である中性的な容姿の少年が向き合い、激闘を繰り広げていた。
男の周囲には、紙でできた式神が無数に浮遊しており、一体一体が少年に襲い掛かってくる。
ビシャリビシャリと音を立て、紙人形の体当たりが炸裂した少年は悲鳴を上げて膝をついてしまうものの、すかさず自身も札を使って雷撃を呼び寄せた。
ズドンと凄まじい音が響き、男の周りに漂う紙人形の4分の1を焼き払う。
しかし、男は顔色一つ変えずに残りの紙人形を一塊の群れへと固め、少年へと突撃させた。
念力による疲労と、紙人形にチクチク体当たりされた痛みで満足に攻撃をよけることができず、少年は地面に転がされてしまった。
「うっ…ううう…」
少年は、己の無力さに絶望して涙を流しそうになる。
だがしかし、寸前でこらえた。敬愛する父の想いに応えるべく、そして、「式神」に認められる程の心を身に着ける為に。
「頭のいいお前の事だから分かっているとは思うが、父さんお前が嫌いで厳しくしているんじゃない。むしろお前の事が大好きだからそうしているんだ。」
目の周りを一こすりし、立ち上がろうとした息子に男…「一刻堂鬼太郎(いっこくどうきたろう)」は手を差し伸べる。
少年…「一刻堂清明(いっこくどうせいめい)」はためらうものの、ゆっくりと父の手を掴み、立ち上がった。
「悪い妖は手加減しないで襲ってくるんだ。父さんはな、大好きなお前に死んでほしくない。だからこそこうやって厳しくしてるんだ。」
「それでも僕、修行は嫌いにならないよ!だって、僕もお父さんの事大好きだし、いつかお父さんもお母さんも守ってあげられるほど強くなりたいもん!」
「はっはっは!それは助かるな!」
しっかり者だとは分かっていたが、ここまでだとは思ってもいなかった鬼太郎は感心してしまい、思わず笑い声をあげてしまった。
それほど、息子の成長が嬉しかったのである。
「それにね、早く式神様と友達になりたいんだ!式神様って強い人が好きなんでしょ?」
「そうだな。式神様は正義の味方だ。だから、困っている人を助けたり、悪い奴らをやっつけたりと、一緒に良い事ができる友達を欲しがっているのさ。」
「うん!ぼくの式神様になる妖さんは、さらにすっごく強い人が好きなんだよね?だったら急いで強くならなきゃ!お父さん!もう一回僕と戦って!一生のお願い!」
普段ワガママなど一切言わない清明だが、この時ばかりはと全力で父にねだってくる。
彼ぐらいの年で、そういった事ワガママを言うのは珍しいだろう。
「清明。たしかに父さんと戦えば、お前はもっと強くなるだろう。だけど、無理をしてケガをしちゃうかもしれない。いくら式神様だってお前にケガはして欲しくないんだよ。」
「わかった…式神様のためだね…今日は修行止めるよ…」
落ち込む息子を見かね、鬼太郎は彼の頭をなでてやる。
「だけど、その代わり今日のご飯は母さんに好きな物たくさん作ってもらえるように頼んでおくぞ!」
「ほんと!?ありがとう!」
先程まで、殺し合いの如く激しく争っていた事がまるで嘘のように、親子は仲睦まじく縁側に上がり、仲良く夕焼けの空を見上げていた。
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それから時が流れて数年後。
清明は16歳となり、立派な青年に成長していた。
女子と見間違うほど華奢で可憐な見た目こそほぼ変わっていないが、目に宿る光は強く鋭く、体もやや引き締まっており、彼が陰陽師としての力を付けた事がわかる。
「……。」
そんな清明は今、月明かりの元、己よりも大きく強大な妖と対峙していた。
妖から発せられる強者のプレッシャーが彼の心身をビリビリと刺してくるが、清明は呼吸を整え、平常心を保って向き合っている。
「貴様が、我を式として使う者か?」
妖は、放漫な体つきの美女であった。
その肌は無機質な白色で、瞳は中で稲妻が走っているかの如く青白く輝いている。
頭からは光を放つ二対の角が生え、四肢は黒と白のモノクロトーンな甲殻に覆われており、背中から生える翼と仙骨から生える尾も同様に甲殻に守られていた。
その容貌はまさしく西洋の強大な妖、「ドラゴン」そのものだ。
「左様。僕は一刻堂家の清明という者です。単刀直入に言いますが、貴方様を僕の式神として迎え入れたいのです。雷雲司る龍王「カミヅチヒメ」様。どうか、お力を貸して頂けないでしょうか。」
気を引き締めた清明は、これから己の式
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