ここは、ヤガイプレー国立公園。
魔界で最大の面積を誇る国立公園だ。
気候は雨季と乾季があるサバナ気候で、今は乾季である。
辺り一面に黄色の強い黄緑色の草が広がる中にバオバブやアカシアなどの熱と乾燥に強い樹木がまばらに生え、水場や池にはガゼルやシマウマなどの野生動物が水を求めて集まっている。
そこへ、一頭のサイが近づいてきた。鋭く巨大な一本角と、紺色で白い縞模様のある鎧のような皮膚が特徴のそれは、大きさは人間界のゾウと同じくらいかそれより一回り大きく、まるで大岩に足が生えて歩いているようだ。
ブアオォォォッ!
サイが吠えると、水場にいた動物たちが驚いて蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
邪魔者を蹴散らしたサイは、ドスドスと足音を立ててお目当ての水場の方に歩いてゆき、水のほとりまでいくと足を止め頭を下げ、水を飲もうとする。
ブスッ!
サイの尻にどこからともなく矢が飛んできて刺さった!
何事かとサイが後ろを向くと、そこには矢を構えたケンタウロスが2人いた。
そのケンタウロスは、我々が知るものとは違い、馬の下半身が白黒の縞模様で、ふさ毛が尻尾は毛の先にあるシマウマの体をしている。
ブフゥン・・・ブフォアアアッーーーーー!!!!
サイは痛みの元凶である二人を睨むと、不機嫌に鼻を鳴らし、土ぼこりを上げて突進した!
「姉さん!来ます!」
「ああ!」
どうやらこの二人は姉妹のようだ。
ズドドドドドオッ!!!
二人はサイが自分達に向かって突進してくるのを察知し、普通のケンタウロスよりも機敏な動きで二手に別れて回避する。
「フッ!」「ハァッ!」
ケンタウロスの姉妹は両側からサイを挟み撃ちにして矢を放つ。
サイの両脇腹に矢が一本、二本、三本、四本、と刺さっていく。
ブムオアアァァァァッ!!!
自分が挟み撃ちにされている事を悟ったサイはケンタウロスの妹の方に向かって突進する!
「私がこちらへ誘導するので、姉さんは後ろからできる限り矢を撃ってこいつを弱らせてください!」
「わかった!」
パンッ!パンッ!
姉ケンタウロスの持つ弓から二本の矢が放たれ、サイの背と尻に刺さる。
サイはそんなことはおかまいなしに妹ケンタウロスに向かって突進する。
「皆さん!お願いします!」
「おう!俺っちにまかせときな!」
「オラ達の出番か!」
妹ケンタウロスの声を聞いた二人の魔物娘がはりきりだした。
一人は、黒曜石でできた大きめのナイフを持ち、頭に鳥の羽の装飾を付け、胸と腰に藁でできたミノを巻いたオーク。だが、彼女は通常のオークと違い体はぽっちゃりしておらず、引き締まった細マッチョである。
もう一人は、自分と同じくらいもある巨大な棍棒を持ち、首に動物のキバの首飾りを付け、動物、おそらくライオンのような大型ネコ科動物の皮でできたビキニアーマーを付けたミノタウロス。
頭のツノは家畜のウシではなく、バッファロー、和名でいうアフリカスイギュウのもので、体格は普通のミノタウロスより頭一つ分大きい。
「さーて、まずは俺っちが相手だぜ!それぇーい!」
陽気な声を上げてオークがサイ向かってサイをも超えるスピードで突進していき、サイの肩を切り裂く。
ウォォォォォォォンッ!
肩を切り裂かれた痛みでサイが怯んで苦悶の声を上げた。
「こっちだよ〜!ノロマちゃん!」
怒り狂ったサイは背を向けて逃げるオークにさっきよりも速度を上げて突進するが、それでもオークの早さには及ばない。
「よ〜し、ここまでくりゃあ……!」
ズドドドドドドドドッ!!!!
ウォォォォーーーー!!!!
突然オークが走るのをやめる。
これを好機と判断したサイは全力で突進してカタをつけようとした!
「あーらよっと!」
オークがサイの突進をギリギリのところで回避した。
サイは止まりきれずそのまま突進を続け、
ズガドン!!!!
オオオオオオオオオ!?
前に掘られた落とし穴に沈んだ。
「いよっしゃー!いつでも俺っちの落とし穴は完璧だぜぇ〜!」
サイが落とし穴に落ちるのを見たオークがナイフを放り出し手を叩いてはしゃぎ出す。
サイは穴の中でもがき、ようやく上半身と前足を穴の淵に乗り出して脱出しようとするが、
「今だぜぇー!バロア!」
「どうりゃああああああ〜〜〜〜!」
バロアと呼ばれたミノタウロスが両手で棍棒を振り上げて跳び上がり、もがくサイの頭に降り下ろした!
ゴグシャァァァァァッ!!!!
オォ・・・ォォォ・・・ォ・・
頭を棍棒で凄まじい勢いで殴られたサイはしばらく白目をむき、手足を痙攣させていたが、やがて脳天、鼻の穴、口から血を流して絶命した。
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