〜序章 演説 前編〜
魔王の魔力にですら完全に侵されず、「王者」の名を冠して地上に君臨するドラゴン。
幼い姿に似合わず、永い時を生きることで得た多種多様な知恵と魔力で相手を圧倒するバフォメット。
海域一帯を根城とし、触手を振るうだけでどんなに巨大な船ですら沈めてしまうクラーケン。
王者に相応しい気品と実力でアンデッドの頂点に君臨するワイト。
強力な魔物の一体であるファラオですら毒牙に掛け、国まで乗っ取ってしまうアポピス。
図鑑世界に限らず、強大な力を持つ連中はどこの世界に居るもんだ。
それが人間だろーが、動物だろーが、魔物だろーが、他とは違う雰囲気を醸し出していることから、恐れ敬われ、その存在を認められている。
そいつ等に対抗するべく、人々や他の魔物達は日々力を付けていて、その甲斐もあり、時代が進むにつれて何とか彼らと対等に渡り合えるようになっていた。
各地のギルドじゃ続々と、「強者達」を撃退することをターゲットとした依頼は増え続けていやがる。
かつての「弱者達」が「強者達」に匹敵する力を身に着けていることの証と言って良いな。
だが……まだまだ甘い。
フツーによく知られている「強者達」なんざぁ、この広大な世界ではちっぽけな存在だ!
奴等は確かに強い!限りなく、「限界」に近い程…
しかぁーし!「限界」そのものは突破していない!
この「限界」を突破してブチ抜いてこそ、広大な世界に名を轟かせる「真の強者」と言えるんだ!
人よ、魔物よ!強くなれ!
無限の可能性を秘めたお前達に、不可能なんてもんはねぇ!
ごちゃごちゃ考えて勝手に不安になるんじゃねぇ!
くだらねぇ屁理屈をこねて自分自身を否定するんじゃねぇ!
今のてめぇ自身の力を全力でぶつけてこい!
てめぇを縛りつけている鎖を引き千切り、てめぇを閉じ込めている殻を粉々に砕け!
その暁には、一生大切にできるかけがえのないモンを得ることができるだろう!
さぁ行け!希望に満ちた勇士達よ!
てめぇらと同じくらいに、可能性と魅力が溢れる魔物の謎を解き明かしてやろうぜ!
「真の強者」にも負けねぇガッツを持って、調査へ出発だ!
〜魔物調査機構 最高責任者 ファフ・フラムベルジュの新規加入調査員に対する演説〜
〜第一章 骨峰(コツホウ)〜
イメージBGM モンスターハンターワールド
陸珊瑚の台地戦闘BGM
陸珊瑚に舞う脅威の翼
https://www.youtube.com/watch?v=0zILCrfz364
牙の様な骨がうず高く積み上げられて構成されている奇界、「グンファ牙城」。
ここは10層からなる階層で構成されており、上に行けば行くほど強い魔物や危険な野生動物が住んでいる。
最近、新たな階層、最上層の「骨峰」と最下層の「奈落」の存在が、そこに棲む魔物の口から明らかになった。
そこには、魔物や野生動物は一切生息しておらず、「主」と呼ばれる強大な存在の魔物がただ一体存在しているだけである。
この二つの環境は、先述の通り脅威となる魔物や野生動物が侵入してくることがない為、他の階層よりも安全に調査が進められているが、未だに「主」の姿を発見した者はいない。
ここで話を変えるが、最初のこの話の舞台となるのは骨峰だ。
グンファ牙城に住む魔物達からは「天の口」と呼ばれている。
ここはその最上階…というよりは屋上に位置し、湿っぽい牙城の内部とは違ってカラリと乾いた気候である。
高地にあることもあり、年中涼しい環境で過ごしやすい。
もう一つ、この骨峰の特徴的なものとして、大地の縁に生えた六本の巨大な牙の様な骨の柱だ。
雄大にそそり立つそれは、そのまま伸びていって天を貫いてしまいそうな迫力がある。
そして、この台地をよく見てみると、縁に生えている巨大な六本だけではなく、様々な所に大小様々な骨柱が点在している。
これらの骨柱は自然に形成されたものではない。
「生やされた」のだ。
軽快な足音を立て、この光景を作り上げた者…骨峰の「主」が、六本の骨柱の内の一本から飛び降りた。
五,六階建てのビルに相当する高さから、難なく着地して見せたそれのシルエットは、ケンタウロス族そのものだ。
しかし、体色は全体的に黄味がかった白で、額にはユニコーンよりも長く鋭い一本角が生え、眼には不気味に燃える紫色のオーラが宿り、人間の部分の腕と馬の胴体全体は骨の様な甲殻で覆われている。
「……。」
骨峰の主は、点々と生えている細い骨の柱の内の一つを軽く折り取り、ゴリゴリと音を立てて食べた。
そして、数十本ほど食べ終えると、満足そうな表情で足を畳み、そこで惰眠を貪ろうとする。
「ギャイン!ギャイン!ギャイン!」
そこへ、
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