城とは、敵を防ぐために土や石で築いた堅牢な建物を差し、主に権力者や軍人の住居、軍の防衛拠点、物資の貯蓄などに利用されている。
その堅牢さから、重厚で巨大な物体や主要拠点の例えに使われることも多く、中でも主要拠点は「牙城」と呼ばれる。
初めて奇界が発見された数年後に、その「牙城」を文字の方の意味で体現した奇界が発見された。
その奇界の名は「グンファ牙城」。
風化して巨大な牙の様になった骨によって形成されている奇界で、名前通り牙で築かれた城の様に様に見える事から名前が付いていて、この土地が魔界化しない原因はこの骨が、脱臭炭のような働きをして魔力を分解しているという学説が唱えられている。
本当の城のように、階層が存在しており、外部から確認すると地上10階と見られる。
主に調査されているのは下層である1~5階で、これ以上の階層には、下層よりも危険な魔物や動物が居るためあまり調査されることが無く、あったとしても数か月に一度くらいのものだ。
一見生命とは無縁な死の世界に見えるが、そのようなことは無い。
むしろ命の溢れる豊かな土地だ。
ここには植物の代わりに独特な進化を遂げた菌類が生えており、植物としてのニッチを占めている。
全ての奇界に言える事だが、独特なのは動植物や魔物だけではなく、環境もそうだ。
特にこのグンファ牙城は奇界の中でも奇妙な環境を有している。
それは、水の代わりに黒いタールの泉が所々湧いていることだ。
グンファ牙城のタールは、なんと飲むことができる。
気になるお味の方だが、ある調査員曰く少々トロみのある麦茶のような感じらしい。
さて、最初の舞台となるのは第2階。
ここは比較的弱い魔物や大人しい草食動物が多く、新人の調査員、見習い冒険者が素材やアイテム集めでよく来ている。
「先輩、ここの生物達はとても変わっていますね。どれも見たことが無いものばかりです。」
「なにせ膨大な知識を誇る魔物ですら全ての種を確認出来ていないというからな……。」
草の様に茂る菌糸を踏む乾いた音を立て、二人の調査員が調査をしている。
一人は若い青年で、もう一人は彼の先輩であるダークエルフだ。
「調査対象はこれでしたね。」
「そうだ。それを始めとするキノコを1種類ずつ持ち帰ることが任務だ。」
青年が骨の柱の一つに生えていた黄色いキノコを採取し、試験管を太くしたような採取ビンに入れた。
「……!」
何かの気配を感じ、青年は後ろを振り返る。
そこには黒いスライムが2匹、ダークエルフにすり寄っていた。
「身構えなくても大丈夫だ。こいつらは人を見ると積極的に近寄って来るが、襲う訳じゃない。ここにやってくるお客さんが好きなだけだ。」
ダークエルフの言う通り、スライム達は攻撃することもなく、無邪気に彼女の太ももにじゃれついているだけだ。
おい、そこ代われ。描写してるこっちまでスリスリしたくなっちまっただろうが。
このスライム達は新たに発見された魔物娘だ。
彼女らの様に最近発見された新種で、特異な特徴を持っている種族は「未確認個体」と呼ばれ、研究が進められている。
スライム達は「未確認個体74号」と呼ばれ、タールのように粘度の高い体が特徴的だ。
性格は非常に人懐っこく、気に入った人物が居るとタールの様にベッタリくっ付いて離れない甘えん坊である。
「うにゅ♪」
「え?」
74号の片方が青年の方に近寄り、抱きついてきた。
彼女の背丈は、青年の半分程しかない為、丁度股間の所に頭が当たってしまう。
「彼女らなりの挨拶だ。こんにちはと言っているようなものだ。」
「えっ、ちょ…これは…」
「きゅー♪」
「うにー♪」
物陰からも、74号の他の個体達がワラワラと現れ、青年に体を押し付ける。
青年の下半身に沢山の74号がくっ付いていることでまるで彼がロングスカートを履いたようになってしまっていた。
「はっはっは、相当気に入られたようだな。」
「う、うーん……なんか恥ずかしい……」
恥じらう青年を、ダークエルフはニヤニヤとしながら見つめていた。
太ももにすりついていた個体が彼女のホットパンツを下ろすイタズラをしていた事すら知らずに。
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第4階。良質なタールが湧き出す泉や栄養価の豊富な餌が存在している。
その為、下の階層からも上の階層からも多くの野生動物や魔物が集まることが多い。
「……。」
タールの泉の中で、耳の無い白いカバのような生物が大きな欠伸をしている。
この生物の名はマッドタタス。
グンファ牙城に生息する大型哺乳類で、カバの様に見えるがカバとは別の生物だ。
かといって、姿が似ているムーミン
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