「あぁぁぁぁ・・・・」
賑わう昼の街並みを背に、ロングコートを着たガラの悪い銀髪の青年が顔面蒼白でトボトボと歩いていた。
「あぁ・・・くだらないことでカッコつけようとするんじゃなかった・・・」
「ママ〜、あのおじさん何してるの〜?」
「フラフラしてるから酔っ払いさんなのかな?」
「こら!見ちゃいけません!」
「あれは博打で大金をすっちまった顔だな・・・・」
その姿はあまりにもみっともなさすぎるため、かえって目立ってしまっている。
そんな彼の名は、投げナイフマスターのウルフ、というのは流石に本名でなく自分で作って勝手に名乗っている通り名で、本当の名前は鈴木正男(すずき まさお)。
彼は、高校三年生になっても中学生の感覚が抜けきれず、不良ぶってカッコつけようとしていつも失敗していた。
ついこの間、わざと相手にぶつかって慰謝料をかっぱらう際の脅し文句として「救急車呼べや!」と言ったところ、相手に本当に救急車を呼ばれて病院に運ばれてしまい大騒ぎとなり結局、恐喝しようとした事が発覚してしまったため両親と姉から大目玉を食らい「一ヶ月間バイト以外での外出禁止」を言い渡されてしまったのだ。
そして、現在。
久しぶりの外出で気分が高揚して魔が差してしまったのか、性懲りもなく不良ぶった真似をしてまた痛い目を見る。
ダーツゲームの豪華景品欲しさに大口を叩いて割り込み、所持金、それも苦労してバイトで稼ぎ姉に返す分の金もつぎ込んだ挙げ句惨敗した。
「・・・・・・・・。」
ああ、怒られるだけじゃ済まなさそうだな・・・・・・。
心の中でそう呟き、姉のおしおきの恐怖を思い出して身震いさせると、止まっていた足を再び動かして彼は家に向かう。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ただいまぁ・・・・」
マサオが帰ってきた時、外は日は沈んで真っ暗になってしまっていた。
青年が鍵を使いドアを開けると、黒髪でボーイッシュカットの20代くらいの若い女性が腕を組んで仁王立ちしていた。
「このバカ!こんな時間までどこに行ってたんだ!」
彼女の名は鈴木蓮華(すずきれんか)。
正男の姉だ。
勉強もスポーツも芸術も話術も何もかも駄目な正男とは違い、彼女は勉強だろうがスポーツだろうが何でもできる才色兼備のスーパーウーマンである。
「ご、ごめん姉ちゃん、じ、実は・・・・借りたお金の事だけど、全部ダーツゲームでスっちゃって返せなくなったんだ!ごめん!来月には絶対返すから・・・・」
伝えたいことをおどおどした態度で何とか口から絞り出して言う正男。
「あぁんだとぉ?何やってんだこのボケがぁ!」
「ひいっ!」
鬼より怖い存在の姉に怒鳴られてしまい、正男は思わず目をつぶり両手で頭を押さえてしまう。
「それにだ!姉ちゃんは今日、お前にどうしても伝えなきゃならん事が二つある!付いてこい!」
「う、うん・・・・・」
正男はビクビクしながら姉の部屋に連れられて行った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ね、姉ちゃん。は、話って何かなぁ?」
「あぁ、まず一つ目。単刀直入に言うが驚くなよ。」
真剣な姉の顔を見て緊張した正男の喉からゴクリと音が鳴る。
「お前のことが好きだ。」
「えっ。」
「もう一度言おう!お前のことが好きだ!」
「ええっ!?」
正男は姉のまさかの申し出と声の音量に驚いて正座の体制でひっくり返った。
「それも、家族として好きなんじゃない!異性として好きになっちまったんだ!」
「えええええええっ!?」
マヌケな姿勢の正男にさらにマヌケ面が追加された事で、マヌケ具合が格段に上がった。
「ガキの頃からカッコつけようとしてドジやらかしてばっかりなお前を見てると・・・・なんか・・・・守ってやりたくなっちまってな・・・・。」
蓮華が頬を赤くして目を左下に反らす。
「今のままのお前だと、この先道を踏み外してロクでもない奴等になっちまう気がするんだ・・・そう思うと胸が張り裂けてしまいそうだ!だから・・・」
「・・・・・・。」
「あたしが愛を以て、お前を人として正しい道を歩いていけるように生まれ変わらせてやるよ。」
蓮華はそういうと服を脱ぎ始めた。
「ちょ、姉ちゃん!?何する気だよ!?」
エロ本の表紙を見ただけでドキドキして中身が読めなくなる程ウブな正男に目の前で生の女体を見ることなど刺激が強すぎる。
「二つ目・・・だ・・・んっ・・・」
「・・・・・。」
正男は戸惑いを隠せなかった。
いつものように粗暴で男勝りな姿とは全く違う、女としての色気をムンムンと放つ下着姿の姉に。
「なぁ・・・ま、正男。魔物娘って知ってるか・・・?」
「えっ、えぇっと確か俺が産まれた頃位に日本にやって来た種族だよなっ?」
「ああ、その通りだ。バカなお前でもこれだけはちゃんと分かってて姉ちゃん
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