「……!敵艦隊を捕捉しました!」
レコンカ国から数十キロ離れた海域。
前衛に中世の帆船、後方には近代の戦艦を配置した高木の艦隊がついに魔王軍艦隊を捉えた。
敵側の規模は、前衛の帆船を大きくしたような船がずらりと並んでいるだけに見える。
「フン!たかがこんな丸木舟なんぞに負ける我が軍ではない!集中砲火!始め!」
山斗のコックピットから高木が無線で命令を飛ばす。
「海の藻屑に変えてやる!格の差を思い知れ!」
前衛の帆船、後方の戦艦から一斉に砲撃が放たれた。
前回、前々回に攻めてきた魔王軍の艦隊ならあっという間にハチの巣にされて沈んでいるだろう。(なお、乗員はなんだかんだで全員生きて帰る。)
しかし、帆船たちは悠々とそれを悠々と回避していく。
中には水中に潜ったり、空中に浮かんでやり過ごしているものもおり、前に攻めてきた艦隊の船には無い機能だ。
それを見た高木は、後ろに控えていた空母部隊に冷静に支持を飛ばす。
元帥の経験を通して、前の世界より思考がマトモになっていることが分かる。
もっとも、愚物であることには変わりないが。
「砲撃を回避した程度でいい気になるな!空母から爆撃機を発進させろ!」
低いエンジン音を立てて、空母からゼロ戦のような戦闘機が発進した。
この戦闘機は、魔物娘が来る前の人間界の戦争時に活躍した「列風(れつかぜ)」という機種で、主に軍艦や基地への攻撃で戦果を上げていた。
ここから発進される物には人は乗っておらず、空母内に居る魔術師によって操縦されている。
列風の大軍は空中に浮いている艦船の方へと突き進み、艦上へ爆撃をお見舞いした。
一つ、二つと甲板で火柱が上がる。
「フハハハ!所詮魔王軍など烏合の衆に過ぎ……!?」
突如、空中に浮いた艦船を攻撃していた列風が次々と海へ落ちて行く。
ある物は真っ二つに、ある物は強烈な水圧を当てられ…あっという間に全滅してしまった。
「やっりーい!」
「へへーんだ!こんな鉄の塊なんか、蚊トンボにすら及ばねぇな!」
空中に浮かぶ艦船、「ソードシャーク」の艦上では海兵のスキュラやネイレスが歓喜の声を上げている。
「おーい!お前らー!」
空の上から、長刀を持ったマーメイド達が甲板の兵達に向かって声を張り上げる。
彼女らの下半身は普通のマーメイドとは違い、トビウオの物となっており、翼のようになっているヒレの下に作った気流で浮いている。
「残りはもう始末しておいたぜー!艦長に伝えてくれー!」
「おうっ!」
甲板に居た兵達は伝言を受け取ると、物資の運搬作業をしつつ、指揮を執っている艦長のインキュバスにそれを報告した。
報告を受けた艦長は頷くと、ソードシャークを海上に着陸させるように指示をして、再び運搬作業を始める。
「ええい!まだだ!前衛と駆逐艦を突撃させるんだ!」
駆逐艦と前衛の帆船の編隊が魔王軍に向かって全身する。
その様子は、獲物を見つけて襲い掛かろうとする肉食魚のようだ。
「目標!前方の魔王軍!撃ち方よーいっ!」
帆船から爆薬の詰まった弾、駆逐艦からは徹甲弾が撃ち出される。
魔王軍の艦船は何度も砲撃を食らっているが、全くダメージを受けている様子はない。
「なんのォ!ウチの可愛いなんぼやねんはこれしきで負けへんでぇ!」
船首にジパング産のサンゴの飾りをあしらった艦船、「なんぼやねん」が、刑部狸の艦長の指揮で大砲から火を噴かせた。
後から他の艦船達も反撃の大砲を浴びせ、砲弾が当たった数隻の帆船が沈没していく。
海に投げ出された乗組員達は、海兵の魔物娘によって一人残らず掻っ攫われてしまった。
「小癪な奴等だ!砲撃を止めるな!後方の空母からも再び列風を発進させろ!」
砲撃のペースが早まり、ソードシャークを襲った時より多くの列風の軍団が魔王海軍に襲い掛かる。
「撃てェッ!う……!?ウワァーーーッ!」
突如、砲撃を実行していた帆船の一隻が沈んだ。
隣の船も、そのまた隣の船も同じようにして沈んでいっている。
「い、一体何事……!?」
帆船を沈めていた犯人の正体と、沈め方はすぐに判明した。
「オラァーーーッ!」
「ぐぉぉぉぉぉ!」
「うがーーーっ!」
下半身にマグロの特徴を持った筋肉質で大柄なマーメイドが船底に体当たりを、鋭い牙のような装飾を施した腕輪を付けているオニカマスの特徴を持ったマーメイドがサーベルを振るい、小柄だがとても鋭い歯を持っているダルマザメの特徴を持ったマーシャークが噛みつき、これらのマーメイドの群れが船底に攻撃を仕掛け、穴を開けて敵艦を次々と撃沈していたのである。
「まだだ!たかが前衛の船など囮に過ぎん!近代兵器の
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