魔物娘の生きる図鑑世界は、このSSを書いているような人間が生きている人間界とは大きく違う。
特に、環境面ではその違いが多く見受けられる。
人間が住む世界とほぼ変わらない場所もあれば、魔物の魔力によって変質した魔界もある。
その中で、最近奇界というものが見つかった。
そこは普通の土地でも魔界でもない不思議な土地で、最初は魔界の一種と思われていたが、大量の魔物が生息しているにも関わらず土地が魔力の影響を受けないことと、魔界でしか育たない植物と魔界では育たない植物が同時に生育していることから新しい環境と認められた。
そこに生息する魔物娘をはじめとする生物は、その環境に適応した独特な進化を遂げている。
最近では、図鑑世界、人間界を問わず多くの研究機関が派遣されており、調査が活発に勧められている。
奇界は名の通り、とても奇妙で特殊「過ぎる」環境であるが故に人間の常識はもちろん、魔物の常識ですら通用しない。
その為、奇界の調査にはどんな事態が起きても冷静に臨機応変な対応ができる人材が求められるのだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ボンクレ緑地。熱帯に分布している奇界だ。
木々が鬱蒼と茂り、あちらこちらで鳥をはじめとする動物の鳴き声がしている。
ここまでだと普通のジャングルの光景なのだが、ここは普通のジャングルのものとは訳が違う。
まず一つ、とにかく巨大な木が存在している事。
人間界にはメタセコイアという高さ100mにも達する巨大な木があるが、ここに生えている巨木はそれの高さや太さをも上回っている。
その木の下に沢山生えている数十メートルもある木ですら、それらの半分程の高さしかない。
二つ、巨木一本一本に独特な生態系が築かれていること。
巨木をよく見ると、幹から生えているサルノコシカケのような形をした巨大なキノコの上で、体長4mはあろうかという二匹のオスのカブトムシが争っている。
この二匹はお互いに相手の体を尖った角の先で小突きあっていたが、次第に片方が劣勢になっていく。
スキを突き、優勢な方のオスが相手の胴体の下に角を潜り込ませ、そのまま投げ飛ばす。
「喰らえ!必殺!熊殺しスペシャル!(※イメージ)」
「あ〜れ〜(※イメージ)」
クリーム色の重厚な甲殻に包まれた体がクルクルと回転をかけて、下の森へ落ちて行った。
「おとといきやがれっ!(※イメージ)」
激闘を制した方のカブトムシは、邪魔者が居なくなったことを確認するとキノコに傷を付け、そこからにじみ出た汁を吸う。
「この時の一杯は格別だぜ〜!(※イメージ)」
勝利を
#22169;みしめ(彼には歯が無いが)、悠々とキノコ汁を吸っていたカブトムシだったが彼の天下は長く続かなかった。
「おい、誰に断ってショバ取ってんだ、テメェ!(※イメージ)」
「すんませんっ!まさか貴方の場所だとは知らなかったんで…うわぁぁぁーッ!(※イメージ)」
木の隙間から這い出してきた体長8m程の緑色のクワガタに大顎で挟まれ、先程自分が戦った相手と同じ末路を辿った。
「やれやれ…最近の若造は礼儀っちゅーもんを知らんのかいな…(※イメージ)」
クワガタはカブトムシが傷つけた部分からキノコ汁を吸う。
なんて図々しいんだ。コイツ。
「腹は膨れたから、メスと交尾しに行くかのう(※イメージ)」
新鮮な御馳走を堪能したクワガタは、交尾相手のメスを探しに羽を広げて飛び立とうとした。
すると、後ろから太い木の槍が彼の背に向かって飛んできた。
槍は硬い甲殻の隙間に深々と刺さり、そこからどくどくと金色の体液が溢れる。
「オドレッ!許さんぞ…!コ…ラ… ガクッ(※イメージ)」
大樹の親分、標準名エメラルドダイオウクワガタ、学名エメラルダス・エレガントゥス、享年7歳は背後から受けた太いヤリにより、その生涯に幕を閉じた。
彼を仕留めたのは一体誰なのだろうか?
この木には他にも彼と敵対している無数の親分が居るのだが、彼らが差し向けたヒットマンが犯人であることはない。
「…!」
どうやらこれから、親分のタマを取った犯人が動き出しているようだ。
木の皮に貼りついていた苔が風も無いのにひとりでにベリベリと剥がれて行く。
しかも、剥がれたコケたちをよく見ると目、胸の乳房、水かきのある手足があるのが分かる。
そう、彼女らは魔物娘なのだ。
種族は両生類のミューカストトードというカエルの魔物…の亜種で、最近発見されたのだが正式な名前はまだ決まっていない。
分かっている生態は、コケに擬態して生活し、乾燥に耐性があるということぐらいだ。
とりあえず、話の展開的に呼び名が無いと分かりづらいので、
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録