「まったく、トールの奴…」
私は、朝っぱらからオノを研いでいた。
木こりならオノぐらい手入れをしておけと何度でも言ったはずだ。
それも、四日前からもだ。
アイツのものぐささに堪忍袋の緒が切れ、衝動的に体が動いてしまっていた。
「ふん。こんなもので良いだろう。」
斧腹は木クズやヤニにまみれてベトベトに黒ずみ、刃も明らかにガタガタになっていたオノは私の手により元の白銀色の鋭利な姿を取り戻した。
エリートの私が仕上げたのだから格段に使い心地は良くなっているだろう。
そして…長く斧を研いでいた事で上半身をかなり揺らしてしまい、乳が刺激されまくり、イきそうになってしまったが寝ているトールを起こさない為になんとか耐えていた。
今の私の胸は刺激で生成された母乳によりパンパンに膨れており、ちょっと乳首を摘まんだけでも牛乳瓶一本分の量が噴き出しそうだ。
とにかく、胸にたまった性的欲求を晴らさなければ生活に支障が出てしまう。
「何か…母乳を絞り出す良い方法は…」
外で出そうにも、万一母乳の匂いで大型の虫や獣が寄ってくるかもしれないので駄目だ。
そこで、アイツの家にあるタルを使わせてもらうことにしよう。
「んっ…」
それは街で買った牛乳を入れておくタルなのだが、一つだけ開いていたのでそれを使わせて貰う。
エプロンをたくし上げ、両方の乳を揉みしだいてマッサージをしてから乳首を握る。
「うっ…!あんっ!」
ビュルビュルと音を立てて、粘り気の強い大量のミルクが両乳から出始めた。
バニラと牛乳を混ぜたかのような強烈な香りが私の鼻をくすぐる。
幸い、トールは気づいていないようだ。
乳首を揉む手は止まらず、数十回揉んだところで私は絶頂に達した。
「ふああああああっ
#9829;」
先程よりも遥かに多い母乳が鉄砲水の如くタルに注ぎ込まれ、受け口のややギリギリの箇所でやっと止まった。
「はぁ…はぁ…っと…」
乳搾りを終えた私はエプロンを下げると、タルを置いてある場所に戻す。
本当は今すぐ捨てに行こうとしたが、先程の嬌声でトールが起きてしまったようなのでやめておいた。
その代わり、母乳が入ったタルは目印として一番前に置いておいたので覚えておこう。
「ふぁぁぁ…ん?お前、オノを研いでくれたのか?」
「勝手ながらそうさせて貰った。」
私が綺麗に研いだオノを見やりつつ、トールは感心したように言う。
オノを研いでやったのは決してアイツの為ではない。
いくら口を酸っぱくして商売道具の大切さを説いてやったのにも関わらず、アイツが結局態度を改めなかった事に我慢ができなかっただけである。
こんな調子だからいつまでたってもうだつが上がらないの分からんのか。
「なかなか気が利くじゃねぇか。サンキュー。」
サンキューじゃない。サンキューじゃ。
自分の身の回りのモノを手入れする事など人として、社会に生きるものとして当たり前の事だ。
つくづくトールがモテない理由を察し、心の中でため息をついてしまう。
こんな調子だと。明日に私が居なくなってから数日経てばまた無能に逆戻りするのではなかろうか。心配だ…
別に恋心が芽生えたのではない。かといって母性が芽生えたわけでもない。
一人のエリートとしてこのどうしようもないアホをマネジメントしてやろうと思っただけだ。
「そういえばよー、ルヴィン。」
「なんだ?」
ふと何か思い当たったかのように、トールが私に話題を振ってきた。
どうせ「相変わらず生真面目だな」とか「乳でけぇな」みたいに当たり障りもなく新鮮味もない事だろう。
「今日は良い天気だな」とベタなネタを振られた方がまだマシだ。
「なんでお前はやたらと「エリート」にこだわるんだ?」
「ほう?」
予想外であった。
あの好奇心や知識欲が皆無そうなアイツが哲学的な質問を投げかけてくるとは。
良いだろう。本来であれば札束や土地の権利を報酬に出されてもまず話さぬ私の「エリート」の流儀について叩き込んでやる。
お前の身分に不釣り合いな知識欲を特別に買ってやったのだ。感謝しろ。
「私にとって「エリート」とは…完璧さが求められる存在だと思っている。なぜなら、欠陥が多い庶民達を導くにあたって彼らに合った様々な方法を取ってゆく必要があるからだ。人間とは本来群れなければ生きてゆけぬ生物だ。まぁ、「今」の魔物でも例外ではないがな。」
「ふーん?」
トールの奴は私の予想に反し、感心した態度で食い入るように聞いていた。
自分のジョッキにタルから注いだ牛乳を飲みつつ耳を傾けている。
庶民にしては中々出来た奴だ。日常の怠慢さを除けばの話だが。
「
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