酔狂なる女王の隷族

フェラチーオ砂漠。
海の様に広大な砂地には島の様に大小様々な沢山のオアシスが点在しており、特に大きな規模のものはほとんどファラオによって国が建てられて統治されている。
特にフェラチーオ砂漠の西に位置する「カーメンツター王国」を治めるファラオ、レオク・トパラはとにかく破天荒なことで有名だ。
彼女はとにかく人を驚かせることが好きで、幼少の頃には武術の師匠と両親の家臣たちに「練習の成果を見せてやる」と言い、屈強な近衛兵十人を相手に勝利を治めて彼らを驚かせ、青年の頃には自分の国の周りにある小規模なオアシスを灌漑して巨大な川を作らせ、水不足にあえいでいた農民達を救済して身内の度肝を抜き、そして一週間前、昨年に「ちょっくら旅に出てくる」と言って城を抜け出し、諸外国を旅し、旅した国の王族達を友人として自分の国に招き入れ、珍しい特産品を持ち帰った上で帰還して国民を仰天させた。
そんな、ハチャメチャ女王が治めるカーメンツター王国では今・・・・

「あ〜!可愛い〜!」
「ごろにゃん♪」
「ほーら!とってこーい!」
「わんっ♪」

レオクが旅をした際に親交を持った西洋の親魔物国からもたらされた魔物をペットとする文化が大ブームとなっていた。
国民達はペット(及び妻)としてコボルドやクー・シー、ケット・シーを飼うようになり、中にはヘルハウンドを飼育する強者もいた。

〜カーメンツター王国のピラミッド〜

「お呼びでしょうか、レオク陛下。」

レオクの忠実な臣下、アスビスのチャッカ大臣がレオクに呼ばれて王座の前へ出た。

「よくぞ来てくれたな、チャッカ。」
「はい、陛下のお呼びとあれば何時でも何処へと参るまでです。どうぞ、ご用件を。」
「チャッカよ、お前に話したいことがある。」

チャッカは緊張し、生唾を呑み込む。
あの豪快でサバサバしているレオクがこれまでにない真面目な表情と冷静な口調で語りかけてきているのだ。重大なことに違いない。
チャッカは如何なる用件を言われても動じない覚悟を固め、主の命に耳を傾ける。

「近頃、民たちの間で魔物を飼うことが流行っているであろう。ついこの間、城下町に足を運んだ時に民達がコボルドなんかを散歩させたり一緒に遊んでいるのを見ていたら余も魔物を飼ってみたくなったのだ。」
「・・・・・。」

重大な話かもしれないかと思い身構えていたら、いざ聞いてみればいつもの無茶すぎる要求で拍子抜けしてしまった。

「レオク様、我がピラミッドには既に犬、猫、オウム、タカ、ワシ、フクロウ、ウサギ、陸亀、牛、馬、豚、イノシシ、オオカミ、マントヒヒ、カンガルー、ウォンバット、ヒクイドリ、ヒョウ、クズリ、シマウマ、ライオン、トラ、マンドリル、チンパンジー、オランウータン、ゴリラ、セイウチ、アザラシ、アシカ、ラッコ、イルカ、シャチ、マッコウクジラ、大トカゲ、ワニ、アナコンダ、ヒグマ、ホッキョクグマ、ジャイアントパンダ、レッサーパンダ、カバ、サイ、ゾウ、始祖鳥、ドードー、マンモス、サーベルタイガー、オーロックス、トリケラトプス、ステゴサウルス、アンキロサウルス、ヴェロキラプトル、スピノサウルス、ティラノサウルスがペットとしているではありませんか!これ以上増やされてはたまりませんよ!」

ただでさえ多すぎるペットがさらに増える事に対して顔を赤くして抗議の声を上げる。

「大丈夫だ!世話はするし、飼育に必要な経費は余のポケットマネーから出す!心配いらん!」
「確かに陛下の仰る通り全ての動物達の世話は陛下自身でちゃんとやられておりますし、経費だって自前で出す所は良いのですがこれ以上増やすのは止めて頂いて欲しいです!」
「別に良いではないか、あやつ等の新しい仲間を増やそうとしているのだ。少しは嬉しがらんか。」
「良くないですよ!ついこの間ペットに迎えたティラノサウルスのスーちゃんにイタズラで追いかけ回されたせいで近衛兵たちが疲れ果てて休んでしまったんですよ!」
「アレに関してはスーちゃんが悪さしているのに気づかなかった余に非があるから反省しておるし、ちゃんとスーちゃんにもアレはいけないことだと言い聞かせておいたぞ。そうじゃろ?」

ズシン、ズシン、ズシン

王の部屋の奥から、重厚な足音を立ててティラノサウルスのスーちゃんが現れた。

「グルルルォン・・・」

スーちゃんは体勢を低くし、頭を下げてレオクの前に鼻面を差し出す。

「よしよし、良い子だ。」

差し出された鼻面をレオクは優しく撫でてやる。

「ゥルルルル・・・・」
「・・・・・。」
「ほれ、チャッカ。スーちゃんも反省しておるから、彼女に免じて余が次に魔物をペットとして迎え入れるのを許可してくれぬか?」
「それとこれとは話が別です!ダメなものはダメですから!」
「・・・。ふむ。説得はどうやら無理なようだ
[3]次へ
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33