キセタンキ沼地。
旧魔王時代より遥か昔の、この世界では絶滅したドラゴンやリザードマンといった爬虫類属達の生物学上の親戚の「恐竜」が生きていた時代よりもさらに 前の時代から変わらぬ風景を保っており、背の高いリンボクやフウインボク、トクサやスギナが生い茂る湿度の高いこの土地は生物の楽園である。
さらに、この沼地には特別な有機物を含んだ泥や石があり、生活エネルギーを作り出す燃料になり、この沼の近くにある都市「ユースノン」ではそれらを輸出する産業が盛んで、大きな利益を生んでいる。
ただし、大きな利益を生むからといって一度に大量に輸出するようなことはせず、市の法律で輸出量を制限されている。
それには3つ理由がある。
1つ目は、限りある資源を枯渇させないため。
2つ目は開発により沼の環境を壊さないため。
そして3つ目は・・・・・・
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俺の名前は八木葉 来(やきは らい)。
元の世界の日本じゃ社畜をやっていた者だ。
いつものようにクソ上司に押し付けられた仕事を片付けて家に帰る途中、全身黒ずくめの男に「この世界で生きていることを嫌だと思ったことはないか?」なんて聞かれたんで答えてやったよ。
「もちろんだ!」ってな。
どうせ何やっても空回りしたり上から圧力をかけて押さえつけられたりして上手く行かねぇんだから当然よ!
そしたら、そいつは「この世界で上手く行かないのであれば、別の世界に赴いて花を開かせないか?貴様には才覚を感じるのでな。」って言いやがる。
俺はここんとこ物事が上手く行かねぇもんでムシャクシャしてたから、黒ずくめ奴の提案に乗った。
奴は俺の答えを聞いてニヤリと笑い指を鳴らした。
すると、俺の体は光に包まれて、この異世界に来た。
この世界は元いた日本よりも技術は劣っているように見えるが、魔法とかいうモンのおかげでそれなりの水準は保っている。
俺はこの世界で、奴から授かった「転移ゲート」の能力で日本から様々な文明の利器を持ち込み、会社を設立した。
未開の地を開拓したり、石炭や石油といったエネルギー資源を売り出す会社だ。
もちろん名前は「ヤキハコーポレーション」だ!
これから文明と資本の力で世界を支配する俺にぴったりの社名だ。
そんな我がヤキハコーポレーションは着々と活動の場を広げ、今では拠点の図鑑世界に99の支店を構えるようになったのだ!
いや〜!いいぜぇ!クソな上司や嫌味な同僚もいねぇこの世界で社長になって好き放題できて最高の気分だ!
いつかこの世界の全てを支配したら今度は俺の居た前の世界を支配してやろう!学生時代に俺を虐めていた不良やネチネチうるさい上司なんかを奴隷にしてやるのもいいな!
そして今回は記念すべき100店舗目の拠点を構えにユースノンっつー所へ来た。強いエネルギーを含んだ泥と石ってのが興味深いし、儲けれそうだかんな!
そして、今、市の市長さんと取り引きしている訳だが・・・
高校生くらいの少年のような容姿の市長と対談している中年の男「八木葉 来」。
冴えないサラリーマンだった彼は、全身黒ずくめの謎の男によって図鑑世界に転移し、男から授かった能力である転移ゲートで日本から様々な物を持ち出してヤキハコーポレーションという開拓会社を設立し、現代日本の技術を応用した製品を売り出したり、未開の土地を開拓したり、資源発掘所を開発するなどの活動をしており、この世界に住む人間や魔物娘の生活を豊かにしていく一方、利益を重視した過酷な労働条件を社員に課し、自分に刃向かうものは制圧する横暴な面もある。
一週間前に開発を進めていた森の近くに住むアマゾネスの村が起こした抗議をブルドーザーやショベルカーといった重機で鎮圧したばかりである。
「ハァ!?沼地の開発が不可能!?」
「はい。あそこはこの市の管轄する土地で、過度な採掘や開発による資源の枯渇や環境破壊を防ぐ為に外部には開発を許可しておりません。」
市長の奴、開発は市の所有地する土地しか認めないとかほざきやがる!
ふざけんじゃねぇ!
ドンッ!
八木葉が怒りの表情を浮かべ、怒鳴り声を上げて両手で机を乱暴に叩いた。
だが市長は怯えるような素振りは見せない。
「それに、沼地には「守護神」がいまして、沼地を開発で荒そうものならたちまち彼女の怒りを買うことになるでしょう。」
「ケッ!馬鹿馬鹿しい!何が守護神だ!ガキの怪談話なんぞ信じるか!もういい!開発は勝手にこっちで押し進めておくからな!」
八木葉は乱暴に椅子から立ち、市長室の扉を乱暴に閉めて出ていった。
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「社長!本当に実行なさるのですか!?」
八木葉の秘書の灰色のスーツの若い男性、桜井(さくらい)が無
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