「んっ・・・」
サフィアが再び目を覚ましたのは上質なベッドの中であった。首から下を心地よい感覚が包んでいる。
奪われた魔力も全回復しており、胸の宝玉も青く輝き、破られたヒーロースーツも元通りに修繕されている。
さらに、ベッドの脇に何者かが立っている気配を感じ、気配のした方向を寝ぼけ眼を擦りながら向くと。
「どうやら起きたようだな。」
「・・・!」
なんと、サフィアのベッドの脇に立っていたのはネクロネビュラであった。
「何故貴様がここにいる!?」
「落ち着け、サフィアよ。まずはいきなりだが私の方から言わせて貰うことがある。」
ネクロネビュラは驚くサフィアを落ち着いた口調で諭すと、一歩後ろへと下がり、膝と手を付き、頭を地面に打ち込むように下ろし、土下座した。
「ほっ、本当に申し訳ありませぇぇぇぇぇんっ!」
「えっ?」
「あのような大変卑劣極まりない行為をしてしまいっ!本当にっ!申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁっ!」
サフィアは子供のように大声で泣き、ひれ伏し詫びるネクロネビュラを見てきょとんとしてしまう。自分と戦っていた時や、自分を凌辱していた時の高圧的で堂々とした態度から一変し、小動物のように身を震わせ縮こまるギャップに戸惑いを隠せなかったのだ。
「うわぁぁぁぁんっ!ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!」
「貴様の方こそ落ち着け、ネクロネビュラ。焦らずに自分のペースで言ってみろ。」
「は、はい、実は・・・僕・・・」
カポッ
ネクロネビュラは涙声でヘルメットを取る。
中からは美少女と見間違う程の可愛らしい顔が現れた。女性だが美青年に近い顔立ちのサフィアとは対照的だ。
「お前は・・・龍二ではないか!?」
「うん・・・そうだよ・・・蒼ちゃん・・・」
ネクロネビュラ改め、彼の名は龍二。本名滝崎龍二(たきさき りゅうじ)。
サフィアこと竜星蒼の幼馴染である。
小さい頃から家が近く、家同士の付き合いもそれなりにあった。
小学生の時、青い髪の毛が原因で悪ガキにイジメられていた時に庇ってくれ、一緒に手を繋いで帰ってくれた。
中学生の時、俳優となっても身体と金しか見ない連中とは違い自分の良い所も悪い所もしっかり見つめて受け入れ、無二の親友のように接してくれた。
高校生の時、進路で不安になって悩んでいた自分を励まし、安心させてくれ、彼自身も自らの進路に向けてひた向きに努力する。
蒼はそんな彼を心から尊敬していた。
彼女は大人になり龍二と離れ離れになっも決して彼への思いは冷めてはおらず、彼のように人を助けられる強さを持った人物になりたいと思いながら仕事の帰路についていた所を、青白いローブを羽織った謎の女性に呼び止められ、異空間へと連れられ、強靭な戦闘能力を持つドラゴンへと魔物化させられ、人々の平穏を脅かす悪を打ち倒す蒼星戦士サフィアとしての使命を与えられた。
(角や尻尾が出ていると俳優活動に支障をきたすという蒼の要望に答えて、謎の女性が魔物の姿と魔物化する以前の姿と切り替えられるようにブレスレットを変身用アイテムとして渡された。)
「蒼ちゃん・・・実は・・・僕・・・蒼ちゃんのこと・・・好きだったんだ・・・」
「ッ!?」
龍二の突然の告白にサフィア改め蒼が顔を赤くする。
「そ、そうか・・・」
「かっこ良くて頭もいいし、強いし、、人に好かれているし・・・そんな風に良い所がたくさんあっていっつも輝いていた蒼ちゃんを見ていたら、何も目立ったところのないような僕は釣り合わないと思って・・・そのせいで、ついこの間久しぶりに会って話をしていた時に蒼ちゃんのことが好きだっていうことを切り出せなかったんだ・・・」
「・・・・。」
「それで、落ち込みながら家に帰っている途中で・・・」
〜龍二の回想〜
「はぁ・・・」
才能溢れる蒼と平凡な自分を天秤にかけ、プロポーズを断念してしまったことに対する後悔と肯定が入り混じった心を胸にトボトボと夜道を歩く龍二。
「結局伝えられなかったなぁ・・・まぁ、どうせ僕みたいな奴なんかが蒼ちゃんを幸せにできるわけがないんだ・・・」
そんな彼に後ろから声が掛けられた。
「おい、そこのお前!な〜んかシケたツラしてやがんな〜?」
「だっ、誰!?」
ガラの悪い声に驚いて振り向くと、そこには自分より少し背の高い白衣を着た男がいた。
顔はヒヒのようで、逆三角のサングラスを掛け、髪をモヒカンにしている。
「お前、なんかしくじっちまったような面してんなぁ?何かあったのか〜?」
「は、はい・・・ずっと前から好きだった幼馴染と久しぶりに再開したのですが、彼女は有名なモデルになっていて、しがないアルバイトの今の自分にはあまりにも釣り合わないので、プロポーズすることはおこがましいので結局止めたんです・・・」
「ほほぉう・・・
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