「・・・でやあああぁぁぁっ!!!」
まず先手を取ったのは田村だった。
ワイバーンの威圧感に呑まれそうになった自らを鼓舞するように掛け声を上げ、剣を片手に握りしめてワイバーンに斬りかかった。
ガキッ!
ワイバーンは軽く右翼を振り上げ、翼の先端の刃で田村の剣を受け止めた。
ギギギギギギギギギギッ!
金と銀の二つの刃が激しくぶつかり合い、金属同士が激しく擦れあうような音が辺りに響き渡る。
ガギィンッ!
押し出されたのはワイバーンの方で、田村に押されて倒される寸前に軽く後ろへ跳びそれを回避したのだった。
「クッ!なんて固いヤツなんだ・・・えぇい、もう一撃食らわせて・・・!?」
続けてワイバーンに斬りかかろうとした田村は手に持っている剣を見て愕然とした。
なんと、剣の上半分が無くなっていたのだ。
しかも、折られているのではなく、切られている形で。
「う、嘘だろ・・・!?」
頑強な重騎士の鎧、分厚いドラゴンの鱗といった硬度が物凄く高い物ですら切り裂いてきた自慢のチート武器「ゴッドセイバー」が逆に切り裂かれてしまったことに田村は驚きを隠せなかった。
「何を驚いている?私はここだぞ!」
驚いている田村の後ろからワイバーンが翼で小規模の竜巻を作り出した。
小規模と言えども彼を十分に呑み込めるほどの大きさのそれは猛スピードで田村に迫り、彼を竜巻の一番上のあたりまで舞い上げると消滅し、落下させた。
ドサァンッ!
「うぐぁっ!」
田村は地面に落ちた衝撃により短い悲鳴を上げた。
仰向けになった田村は立ち上がろうとすると、妙に体が軽い感覚がした。
「あ、あれ?何か体が軽いな・・・、まるで自分が身に付けている物が取り払われた見たいに・・・んなぁぁぁぁぁっ!?」
田村の回りには、紙屑のようにバラバラに切り裂かれたチート防具「ゴッドアーマー」が散乱していた。
ザリ、ザリ、ザリ、ザリ・・・
ワイバーンがゆくっりと田村の元へと歩み寄る。
「うわああぁぁぁっ!」
田村はへたりこむ姿勢で後ずさる。
だが、それでもワイバーンは足を止めない。
ボアンッ!
「ん?」
突然ワイバーンの足元に近い場所で魔力の火球が放たれて爆発した。
ワイバーンが火球が放たれた方向を見るとそこには、杖を構えた幼い見た目の少女が居た。
「田村さんから離れて!」
「メイ・・・!」
「ほう、仲間が居たか。面白い。ついでに相手してやろう!」
ワイバーンがメイに向かって銀の翼を降り下ろし、翼から放たれた風の刃がメイに直撃した。
バシィンッ!
「きゃあっ!」
翼で斬り下ろされたメイは服に大穴を作って前のめりに倒れた。
「う・・・あ・・・」
「さて、トドメといこうか。」
ワイバーンがメイに向かって再び翼を降り下ろそうとするが、何者かがメイの前に立ち塞がったために中断された。
「ま、待ってくれ!」
「え・・・?」
「お前は・・・」
メイの前に立ち塞がったのは田村だった。顔は凛々しく真剣な表情である。
「悪かった!全部俺がお前に喧嘩を吹っ掛けたのが悪かった!だから、この子だけでも見逃してくれ!何でもする!」
「田村さん・・・」
メイは、今までお気楽で自己中心的で傲慢だった田村が、初めて自分以外の者のために身を挺して行動する姿を目の当たりにした。
その背中はチート装備を身に纏って敵を凪ぎ払っている時よりも強く感じられた。
「何でもする・・・か。くくくっ、ふはははははは!案ずるな!お前のような大した事のないヤツにこれ以上は何も求めん!さぁ、行くがいい。もちろん、後ろの娘を一人にはしまいな?ふはははははっ!」
バッ!
キィィィィィィンッ!
ワイバーンは高笑いすると、凄まじい早さで空の彼方へ飛んで行った。
「メイ・・・今までごめんな・・・俺が無茶ぶりしても、いつも一緒について来てくれて・・・」
田村は仰向けになっているメイに駆け寄った。目からは大粒の涙が零れている。
「嫌だと思いながらも仕方なく付いてきてくれたこともあるだろうし・・・本当に・・・」
「別に・・・いいですよ♪確かに嫌だと思っていたことは沢山ありましたけど、その分やってみて良かったって思うことも沢山ありましたよ。」
メイは両手を支えにして地面から上半身を起こした。
「それに、ちゃんと自分のした過ちを認めて謝れるなんて偉いですし、何と言っても・・・私の事を気にかけてくれるなんてすごく嬉しいですよ。」
「メ、メイ・・・ううっ、ああっ、ああああああああぁぁぁぁっ!」
砂漠のオアシスで、一人の男が漢へと成長を遂げた。
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〜とある親魔物領の村〜
ここは、森林にある親魔物領の村。
住民は森の木を使ってログハウスを作り、そこに住んで生活している。
気候は
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