野生。それは人間社会と違い過酷だが、自由でもある。
食べ物は店や自販機で買うのではなく、自分で取って食べなければならない。
怪我や病気を患っても治療したり看病してくれる者は誰もおらず、自力で治すしかない。致命傷を負おうものなら人間社会よりも早く死に繋がり、助かる確率は遥かに低い。
人間社会では殺しをするのは違法だが、野生では殺しは合法、否、当たり前なのだ。他の命を奪って自分の命を養う。それが野生で生きる方法なのだ。
人間社会は規則や法律でがんじん絡めに縛り付けてくるが、その代わり命を守ってくれる保証はしてくれる。
自然界では、人間社会のように法律や規則で縛り付けてくるようなことはない。ただし、命を守ってくれるような保証はどこにもない。
そんな厳しくも自由な世界で逞しく生きる魔物娘を紹介しよう。
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チンポスキー。魔界の高緯度地域で冷帯気候に属し、夏は暖かいが、冬は厳しい寒さを迎える。
今の季節は冬のようだ。
「どうっ、せいっ!ハァッ!」
雪原の中心で一人の少年が上半身を裸にして、一心に舞を舞うように激しい動きをしている。
ブウンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!
少年は拳や脚に力を込めて、といってもがむしゃらに力任せに振り回してあるわけではなく、絶妙に力を込め相手の急所を攻撃するかのように空中に何度も打ち付けている。
「肉体の鍛練はここまでにして、瞑想にうつるとしよう」
彼の名はカンレン。
霧の大陸で名を馳せている少年憲法家だ。小さな体は見た目よりも鍛えられており、腕相撲でオーガを圧倒し、回し蹴りで自分の身長の数倍はある大岩を砕き、手から出される気功でジパングの相撲取りを吹き飛ばしたりもしている。
そんなカンレンの強さに多くの女性や魔物娘が惚れこみ、結婚を申し出てきたが彼はそれを全て拒否した。
彼は元々女に興味はなくそういうことなどどうでもいいのと、負かされた格闘家に恨みを買っており何度も襲撃を受けた経験があるため、妻の身が危険に晒されてしまう可能性があるため敢えて結婚はしないでいた。
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小さな滝。滝の上の両端にある岩には雪が積もっている。
そこから水が流れ落ち、下に水溜まりを作っている。
その水溜まりの中でちょうど水が落ちてくる真下でカンレンは座禅を組み、瞑想していた。
「・・・・・。」
目を閉じ、意識を集中させて精神力を高める。
この滝は小さいといえど、常人なら指先で少し触れただけでも手を押さえて飛び上がってしまうくらい冷たい水が上から大量に激しく落ちてくる。
そんな所で瞑想をしていられる彼の精神力と肉体は相当なものだろう。
「・・・・・。」
パシャッ、パシャッ、パシャッ
何者かが水溜まりを歩いてカンレンのほうに近づいてくる。
「わぁ、男の子だぁっ!しかも裸でいるなんて何て無防備なんだぁ!」
カンレンに近づいてきたのはグリズリーだ。熊の特性を持った魔物娘である。基本的には温厚で、凶暴になるとしてもハニービーのミツを摂取した時くらいといういたって大人しい魔物である。
だが、そんな彼女もカンレンから発せられるオスの強い匂いでかなり興奮しており、今にも襲いかかりそうだ。
「修行の邪魔だ。失せろ。」
「まぁまぁ、修行なんて後でいくらでもできるでしょっ♪だから私とセック・・・」
「失 せ ろ」
カンレンは全身から気迫を出し、口から少年のものとは思えないほど重厚な低い声を出した。
「・・・・・・。」
グリズリーは顔を青くして後ずさり、トボトボと去って行った。
あまりの威圧感に悲鳴を上げて逃げ出す気力すら削がれてしまったのである。
「・・・・・。」
修行中に思わぬ邪魔が入り、(本人としては)取り乱してしまったがカンレンは再び心を無にする。
バシャンッ、バシャンッ、バシャンッ
またしても何者かがカンレンに近づいてくる。しかも今度はさっきのグリズリーより大きい。
「・・・・・。」
しかしカンレンは瞑想に集中しているため気づいていない。
ガバァッ!
侵入者はカンレンがこちらに気づいていないのを確認すると飛びかかった!
ザバシャァンッ!
「ッ!」
カンレンは襲いかかってきた侵入者の気配を感じとると、とっさに身を翻して間一髪のところで回避した。
「ありゃあ、しくじっちまったか!」
さっきのグリズリーのものとは違う女の声がした。
「何者だっ!」
カンレンはさっきまで瞑想で閉じていた目をカッと見開いて相手を睨む。
「中々生きのいいオスじゃねぇか。」
カンレンの視界の前に現れたのは人虎。トラの特徴を持つ魔物娘だ。
ただ、その人虎は図鑑で見る人虎とは違い体格がさらに逞しく発達しており、身長はカンレンの二倍はあり、腹筋が割れているだけでは
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