「あかん…どないしよ…」
「やばいよ〜…どうしよ〜…」
とある部屋で、刑部狸の『京』とゴブリンの『鈴』が向かい合わせに座りながら帳簿とそろばんを見つめ、絶望に満ちた空気を漂わせていた。
「どうしよ〜、お姉ちゃん…」
泣きそうな顔で向かいの京に、鈴が問いかける。
「そんなん言われても、まともな手段じゃ、ウチかてもうお手上げやわ…」
この二人、種族こそ違えど、同じエキドナの母を持つ実の姉妹である。
ゴブリンと刑部狸、商売熱心な種族に生まれた故か、二人は姉妹達の中でも特に仲がよく、反魔物領から親魔物領に変わったこの地方に共同で雑貨商を出店し、共に生活していた。
経営は順調に進み、地域に着実に商売範囲を広めていたのだが…
「このままじゃ、お店が潰れちゃうよ〜…」
「いちいち言われんでも、うちかて判っとるわ…」
どうやら経営に何らかの行き詰まりが生じているようである。
「やっぱりジパング進出に無理があったのかな〜…」
「いや、計画自体は、それ程無茶な計画やなかった筈や。
ジパングで大陸ブームが起きとる今なら大陸製品は高う売れる…。売れる時には、多少無理しても売るのが商売や。
万一に備えて輸送のルートを三つに分散させたっちゅうに…」
「…まさか輸送隊が全滅するとは思わなかったよね〜…」
「中央の山越ルートの雪崩はまぁ、しゃあない。
自然災害やし、奇跡的に死者が出なかっただけ幸いや」
「現地の救助隊のグラキエスさんとイエティさんが、それぞれ結婚相手見つけられたのもおめでたいよね〜」
「問題は残り二つ、砂漠ルートと海上ルートや…。
クラーケンとサンドウォームのどアホーーー!
何もウチらの輸送隊を襲わんでもええやないかー!!」
「…うち以外の商会でも輸送隊に被害が続出してるみたいだよ〜。
なんでも海ではポセイドン主催、砂漠ではファラオ主催による婚活応援キャンペーンってのをやって、みんなはりきってるんだって〜」
「…何ちゅう商人泣かせの、はた迷惑なキャンペーンや…
被害客が多いおかげで保険金の査定調査も、支払いも遅れてもうてるし…」
「仕入れにお金を借りたT・Iグループはお姉ちゃんが下積みを積んだ古巣なんでしょう〜?
なんとか待ってもらえないの〜?」
「あそこにそんな情けを期待したらあかん。
少しでも遅れると、一体どんな無理難題ふっかけられるか…」
かつて受けたトラウマを思い出したのか、京は恐怖に震えだした
「あ、あぁ、あぁあ…、
い、嫌や…、
もうジャンケンもチンチロも、パチンコも嫌やー!!」
「お、お姉ちゃん落ち着いて〜!」
鈴はトラウマで暴れ始めた姉をなんとか落ち着かせた
「そんなに怖いところなら、お金借りなきゃ良かったのに〜…」
「しゃーないやろ、早く大金を貸してくれる所が、あそこしか無かったんや…
まぁ、遅れてるといっても保険金は降りるから、拉致されて連れ去られるところまでは行かない筈や。
問題は…」
「仮にもゴブリンと刑部狸の私たちが一時的とはいえ、お店を潰しちゃうってことだよね…」
「そんなことになったら、もう恥ずかしくて他の種族仲間に顔向けできへんし、何より…」
「カイさんにも恥ずかしくて顔向けできなくなっちゃうよ〜!」
「それだけは嫌やー!」
カイとは姉妹が揃って惚れているこの町の仕入れ業を行っている商人であり、彼目当てにこの地域で商売を始めたといっても過言ではない。
そもそも今回のジパング進出も、カイに商人として良い顔をしたいが為に行ったのであった。
「しゃーない…こうなったら、最後の手段や…」
「えっ、お姉ちゃん、何か手があるの〜?
でもさっきお手上げだって〜…」
「マトモな手段は確かにない。
だから邪道な手段で一発稼いだるんや。」
「邪道な手段〜?
何、ギャンブルでもするの〜?」
「その通りや!」
妹と問いかけに姉はその胸張って答えるが、妹は呆れたように嘆息する
「駄目だよ〜、お姉ちゃん〜。
借金苦でギャンブルなんて一番危ない手段じゃない〜」
妹の非難に、しかし姉は不適に微笑み返す
「アホ、誰が自分らが賭けるゆうたんや。
ウチらで賭場を指揮るんや。
幸い、3ヶ月には親魔物領化10周年を記念する祭りが行われるさかい、観光客は仰山来る筈や。
かなりの儲けが期待できるで!
返済期日にもギリセーフや!」
自信満々で自説を力説する姉に対して、妹は未だに納得できない様子だ
「う〜ん、でもあの堅物吸血鬼の領主様が許可してくれるかな〜?」
この地方を治める領主の吸血鬼は堅物で有名であり、婚活魔物娘の強い味方、娼館の設置にさえ難色を示し、危うく軽い内乱事件に発展するほどであった。
「確かにあの堅物を口説き落とすのは難しいかも知れへんが、やり方はいくらでもある
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