「龍神様に触りに行きたいんだ!」
ジパングのとある長屋。薬屋をやっている老人に、若い少年が言った。
「・・・昼っぱらに駆け込んできて、一体全体、どういうこった?はなから全部話してみぃ?」
「お、俺、奴らを見返してやりてぇんだ!」
話を聞くと、この少年、もうしばらくすると元服なのだが、先に元服したやつらからやれ臆病者だから元服は無理だの、悔しかったら男気があるところを見せろだのいじめるのだ。
そいつらを見返すため、触れてはならないとされる龍神様の逆鱗を触り、度胸試しをしてやりたいのだと言うのだ。
そしてこの老人、龍の涙やらを使った珍薬を使うため、龍神様とお知り合いではないかと噂されているのだ。
「いや、あの珍薬は言うとるだけで、龍神様の涙など使うとりゃせんよ」
「そんなわけない!爺様の薬を飲んだ人はみんな良くなるじゃないか!その薬に、いつも見たことないほど綺麗な水を使ってるの見てるぞ!なぁ、爺様、頼むよ!」
この少年、昔から遊びがてらこの老人の手伝いをしていたため、その合間に見ていたのだろう。
土間で土下座する少年を見て、老人は顎をさすっていたが・・・
「ふぅむ・・・お主なら、『千代』も喜ぶかのぅ・・・」
「・・・へ?」
「いやこっちの話・・・分かった。龍神様に会いに行ける手筈を整えよう」
「ホント!?」
「あぁ・・・ただし!このことは秘密じゃ。龍神様に会いに行くのは、儂とお主の秘密。そのいじめっ子どもにも黙っておけ。七日後、早朝にうちに来い。わかったな?」
「わかった!爺様、ありがとう!」
少年は喜んで長屋を出て行った。
「・・・やれやれ・・・儂も一仕事せねばなぁ・・・」
その晩、老人は長屋から姿を消した。
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一週間後、霧もかかる早朝、少年は白い息を吐きながら老人の家の前で待っていた。
「爺様、まだかなぁ・・・」
その時、ゆっくりと霧の向こうから老人が歩いてきた。
その姿を見ると、どうやら山を登る用の服だった。
「すまんのぅ、遅れた」
「ううん・・・山でも登ってきたの?」
「バカ言うな。千代に・・・あいや、龍神様に会いに行って、お前が会っていいように話し合ってきたんじゃ」
「えぇっ!?お、俺、山登りの用意なんて・・・」
「草鞋さえありゃえぇわい。儂が持っとる。さ、いくぞ」
少年は、老人について行った。
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町から離れ、歩きに歩いて、お天道様が高くなり始めたころ。
老人と少年は山を登っていた。
「ふぅ・・・ふぅ・・・」
「なんじゃお前、もうバテとるんかい?」
「ま、まだ、大丈夫だよ・・・」
「踏ん張れよ。もう少しじゃからな」
しかし少年の足は震え始めていた。町の中からあまり出たことない彼には、もう朝から歩き詰めでふらふらだった。
「まったく、若いんだからもう少し頑張れ」
「う、うんん・・・」
山路を登るにつれ、老人と少年の差は遠くなっていった。
「ま、待って・・・」
その時。
『ガラガラっ!』
「え?あ、うあぁぁぁぁっ!?」
足元が崩れた少年は、真っ逆さまに山腹を転がり落ちていった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
「・・・ん、ん?」
少年が目を覚ますと、布団に横になっており、身体に包帯が巻かれていた。
「あ、あれ?ここは・・・」
「あ、お目覚めになりました?」
はっと少年が気づくと、自分の脇で優しげな声とともに顔を見せてくれたのは・・・
綺麗な色白の肌。
薄紫の長い髪。
そして、雄々しくも美しく見える双角。
そう。少年が夢にまで見た、『龍』であった。
「あ、あぅ・・・ど、どうも・・・」
「うふふ、固くならなくていいんですよ?ちょっと待ってくださいね?今なにか口に入れるものを用意しますから」
龍の美女は、長い尾を引きずりながら、そばにあった囲炉裏にかけてある鍋の蓋をとり、中身をお玉で掬って口に運んだ。
「ん〜・・・もうちょっとあっためた方がいいかしら・・・?」
お玉を回しながら囲炉裏の火加減を見る、龍。
対する後ろで上半身だけを起こした少年の頭は混乱し、心臓は張り裂けそうなほど脈打っていた。目の前に待ちかねた龍がいるという興奮だけでない。その美しい美貌と後ろからチラチラ見える大きな双乳に、思春期の少年の心と視線をガッチリと捕らえられていた。
「ふんふん、ふ〜ん♪」
その時、ふと揺れた龍のお尻に見えたモノに、少年が気づいてしまった。
小さかったが、確かに見えた。
逆さに生えた、鱗。
少年の求めた、鱗。
龍の逆鱗であった。
少年のそれまでの興奮が熱く激しいものから、一
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